ソルゴーでファイアーウォール
前回は「わたしの畑の排水対策」と題して、排水対策について具体例を挙げて紹介させていただきました。
今回は防風や害虫対策でソルゴーの導入を考えおられる栽培者もおられると思いますので解説させていただきたいと思います。
ソルゴーの栽培は、露地ナスの圃場周囲に手軽な防風対策を施す合理的な方法です。ソルゴーは高さがあるため、風の勢いを遮り、ナスの被害を防ぐことができます。また、ソルゴーは葉面積が広く、風通しも良いため、病害虫の発生を抑える効果もあります。
さらに、ソルゴーは生育が旺盛で、比較的短期間で成長するため、防風効果や病害虫対策を迅速に実現することができます。手間がかからず効果的な防風対策を行いたい場合は、ソルゴーの栽培を取り入れてみる価値があります。
私が露地でナスを栽培する畑では、獣害対策と防風対策を兼ねてソルゴーを使用しています。防風ネットの材料費が10アールあたり約1万円かかる一方で、ソルゴーの播種は施肥と整地が済んだ圃場であれば短時間で終わり、手間も省けます。
2条播きで十分な効果が得られ、時間と手間を節約できます。また、ソルゴーは比較的短期間で成長し、風の勢いを遮る効果があります。これにより、ナスの生育環境を安定させることができます。ソルゴーの利用は経済的かつ効果的な防風対策としておすすめです。
まずは防風対策の役割
防風対策の重要な役割は、風を遮断することです。生垣や防風ネットなどの遮蔽物は風を完全に遮断するわけではありませんが、その隙間を通過した風の流れが上から吹き降ろす風の流れを抑える効果があります。このため、防風効果は遮蔽物の存在する範囲を数倍長くすることができます。
ソルゴーは、このような防風効果を持つ植物の一つです。畑の周囲にソルゴーを播種することで、ナスの栽培エリアを風から保護することができます。特に防風ネットと併用することで、より強力な防風効果を実現できます。
一方、防風ネットの材料費が10アールあたり約1万円となると、ソルゴーの播種はコスト面でも優位です。施肥や整地が済んだ圃場では、わずかな時間でソルゴーの播種作業を完了させることができます。2条播きで十分な効果が得られるため、効率的に作業を進めることができます。
また、ソルゴーは成長が早く、風の勢いを遮る効果も高いです。これにより、ナスの生育環境を安定させることができます。ソルゴーは耐乾燥性も備えているため、水の供給に制限のある地域でも有効です。
ソルゴーの利用は経済的かつ効果的な防風対策としておすすめです。畑の周囲にソルゴーを配置することで、手軽に風の影響を軽減し、ナスの健全な成長をサポートすることができます。
しかしながら、風の影響は地形や環境要素によって異なるため、一概に確実性を保証することは難しいです。風向きや風速、地形の起伏などは防風効果に影響を与えますので、現地の条件を考慮しながら計画を立てる必要があります。
ソルゴーの障壁の効果も、栽培方法や生育時期によって隙間の間隔が変わってきます。例えば、ナスが若い頃は密集した隙間が必要であり、成長に伴い隙間を広げる必要があるかもしれません。これはナスの生育状況や風の状態を観察しながら調整することが重要です。
総合的な防風対策を行う際には、地形や環境条件に基づいて畑の配置やソルゴーの配置を検討することが求められます。風の流れを把握し、ソルゴーの障壁を効果的に配置するためには、経験と実地の観察が重要です。地域の農業経験や周辺の農家の知見を参考にしながら、最適な防風対策を見つけ出すことが大切です。
また、ナスの果面のキズは風による摩擦や衝撃によって引き起こされることがあります。特にミナミキイロアザミウマなどの害虫よりも果面のキズが大きくなることがありますので、風によるスレを防ぐための対策は重要です。
ソルゴーの防風効果は、風を遮ることによって果面に直接の風当たりを軽減し、キズや傷を予防する効果が期待できます。特に水ナスなど果皮が弱く傷つきやすい品種においては、ソルゴーの防風効果がより顕著に現れるでしょう。
ソルゴーは風を緩和するだけでなく、防風対策としても手軽な方法です。畑の周囲にソルゴーを植えることで、風の速度を抑えることができます。また、ソルゴーは風通しを確保しながらも風速を軽減する特徴がありますので、ナスの果面を保護する上で効果的です。
ただし、風の状況や品種によって最適なソルゴーの配置や高さなどは異なる場合がありますので、現地の状況や経験に基づいて最適な対策を取ることが重要です。定期的な観察や調整を行いながら、風によるキズを最小限に抑えることが目指すべき目標です。
その他の利点として、ソルゴーの障壁が農薬の使用時におけるドリフト(飛散)リスクを低減する点が挙げられます。
農薬の散布時には風によって農薬が飛散し、予期せぬ場所や非目標作物にまで届くことがあります。しかし、ソルゴーの障壁が風を遮る役割を果たすことで、農薬の飛散が制御されます。
障壁によって風速が低下し、風の勢いが弱まることで農薬が散布された範囲内に収まりやすくなります。これにより、周辺の環境や他の作物への農薬の影響を最小限に抑えることができます。
ソルゴーの障壁は、風を緩和しながらも通気性を保つ特性がありますので、作物への通気性や光の供給にも影響を与えません。農薬の散布時には、障壁の存在によって農薬の効果がより的確に作用することが期待できます。
したがって、ソルゴーの障壁はナスの栽培において、風による農薬のドリフトリスクを低減し、農薬の効果を最大限に引き出すことができると言えます。
また、先述した風による被害だけでなく、ミナミキイロアザミウマのような害虫の侵入もソルゴーによって抑制されます。
ミナミキイロアザミウマはビニールハウス内で越冬し、気温の上昇とともに野外に飛び出して周囲の作物に被害を与えます。しかし、ソルゴーによって畑が囲まれている場合、ミナミキイロアザミウマが野外から畑に侵入するリスクが低くなります。
ソルゴーの障壁はミナミキイロアザミウマの飛翔を妨げる一方で、畑の中にあるナスなどの作物を保護する役割を果たします。これにより、害虫の被害を最小限に抑え、作物の健全な成長を促すことができます。
ソルゴーによる侵入抑制は、畑において有益な生物を保護することにもつながります。害虫の侵入を抑えることで、生態系のバランスを保ちながら作物の生育をサポートすることができます。
そのため、ソルゴーはナスの栽培において、ミナミキイロアザミウマなどの害虫の侵入を抑制する効果的な手段として活用されることが期待できます。
ソルゴーの利点として、防風効果や害虫の侵入抑制だけでなく、栽培終了後の再利用も可能な点が挙げられます。
ソルゴーは畑における防風対策や害虫対策に優れているだけでなく、使用後も畑に漉き込むことができます。そのため、環境にやさしい取り組みとなります。
また、ソルゴーの取り組みは畑の管理や作物の生育環境に大きな影響を与えることも覚えておいてください。畑の状態や栽培する作物に合わせて最適なソルゴーの設置方法や利用法を検討し、効果的に活用してください。
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