【コラム】PERFECT DAYS
ヴィム・ヴェンダース監督の作品を初めて鑑賞したのは、知人からの勧めがきっかけでした。
知人の話に触発され、「PERFECT DAYS」を観ることに。
ヴェンダース監督の「パリ、テキサス」や「ベルリン・天使の詩」といった名作については聞いたことがありましたが、これらを観る機会はありませんでした。
まさか彼が日本映画を手掛け、そして役所広司さんとのセッションを果たすとは、驚きを隠せません。
この映画は、フィクションの存在をドキュメントのように追いかけるという、ヴェンダース監督の独特なスタイルを見事に表現しています。
知人の推薦がなければ、この素晴らしい体験に出会うことはなかったでしょう。
役所さんが演じるのは、東京・渋谷で公衆トイレの清掃員として働く平山です。
彼の日常は、竹ぼうきの音で目覚め、昨日と変わらぬ支度をし、いつも通りに淡々と働くというもの。
ただし、この日常がドキュメントのように描かれるのがヴェンダース監督の手腕です。平山の日々は、表面上は繰り返しのようでありながら、彼がそれを“新しい日”として迎える姿勢が、役所さんの表情から伝わってきます。
平山の寡黙でルーチンを重視する生活は、孤独と自由の間で揺れ動いています。
彼の姿は、悟りを開いた僧侶を思わせますが、彼が見ている世界には木々や光が溢れているのです。
さらに、自然音や劇中音楽も物語の重要な要素です。
日常の音やザ・アニマルズ、ルー・リード、ニーナ・シモンの楽曲は、平山の心情を反映しています。
物語は、平山の日常に訪れる変化によって、彼の内面が垣間見え始めます。
彼の過去はほのかに明かされるものの、その日々を完璧にしようとする彼の姿勢に、観る者は「こんなふうに生きていけたら」と思わされます。
「PERFECT DAY」の歌詞にある「君は自分で蒔いたものを刈り取るだろう」という一節は、平山とヴェンダース監督、役所さんのセッションの結晶を象徴しています。
ビルメンテナス業などに興味を持っている就活生にぜひ、見ていただきたい作品です。
「日々を綴る、光と影の中で生きる旋律」