アグリハックによる畝を作るポリシー
畑仕事の効率化は、単に作物の成長や収穫量を向上させるだけでなく、農家の日々の生活をも格段に豊かにする力があります。特に畝立てや圃場設計といった土作りから始まる基本的なプロセスは、その効果が予想以上に大きいのです。
このような農業のスマート化を「アグリハック」と呼び、今回はその中でも特に労働集約型の作物、例えば果菜類などにおいてその重要性が高まるアグリハックに焦点を当てます。
スマート化というと、デジタルトランスフォーメーション(DX)といった言葉が連想されるかもしれません。それらの手法は効率化や生産性の向上に寄与する一方で、導入初期コストや維持費用、さらには使いこなすためのスキルや知識が必要とされる場合が多いです。そのため、実際の利便性向上がコストに見合うかどうかは、十分な検討が必要です。
この点において、土作りや畝立て、圃場設計などの基本的な農作業の見直しは、コストをあまりかけずに効果を上げる「アグリハック」の良い例かもしれません。先進技術を使わずとも、よく考えられた方法で効率と生産性を高めることは十分可能です。このようなアプローチが、特に労働集約型の農業において、資源を有効に活用し、持続可能な運営につながる可能性があります。
一見些細かもしれないこの工程が、効率と収益性に与える影響は決して小さくありません。
①畝(うね)の方向
畝の方向はその地の気象条件や土壌の状態だけでなく、作物にしっかりと太陽光が当たるかどうかにも大きく影響します。具体的には、南北に長く畝を作ることで、太陽の一日の動きに合わせて、ナスなどの作物の株元までしっかりと太陽光が届くのです。
このような設計を行うことで、各植物が等しく充分な光量を受けられる確率が高まります。一方で、東西に長くうねを作ってしまうと、南側の畝だけが一日中太陽に当たり、他の畝は一定の時間帯で影になってしまう可能性があります。その結果、一部の作物だけが日照時間が短くなる、という状況を生むことがあります。
このように、畝の方向一つで作物の生育状態が大きく変わる可能性がありますので、計画的なうね設計は非常に重要です。もちろん、これは気候や作物の種類によっても最適な設計が異なる場合がありますので、それらの要素も考慮に入れることが重要です。
②畝(うね)の幅
畝の幅と高さも栽培管理に多大な影響を与えます。大きな畝は保水力が高く、根が広がりやすい環境を提供します。これにより、畝間で走り水を行う際にも水分供給が安定するのは大きな利点です。しかし、その一方で大きな畝は管理作業や収穫作業の効率を下げてしまう可能性があります。
逆に、幅を狭くして畝を高く設計することで、作業効率が向上するケースも考えられます。特に手作業での収穫や管理が必要な場合、畝の高さと幅を最適に設定することで、労力と時間の節約が可能です。
私の場合は、黒マルチとかん水チューブを使用して畝の幅を80cmに設定しています。これは効率的な水分供給と作業効率をバランスよく取る良い方法と言えるでしょう。土壌の保水性を高めつつ、作業効率も確保できる設計は、長期的に見ても持続可能な栽培管理につながります。このような細やかな設計変更が、最終的には収量や品質、作業効率にも寄与するのです。
③通路と溝の工夫
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アグリハック研究会
アグリハックを通じたビジネスのメッセージは「農家はメーカー」であるということです 。常にマーケットを意識しながら、コストの削減や栽培プロセ…
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