現場には問題があって当然
「問題が起きました」という言葉は、経営者や管理職にとって確かに恐ろしいものです。企業経営やプロジェクトの進行において、予期せぬトラブルや障害が生じることは避けられない現実です。しかし、問題が起きたということ自体は、単なる悪いことだけではありません。
問題が発生することは、組織やプロジェクトが成長し進化するための機会でもあります。問題が浮き彫りになることで、課題を理解し改善策を見つけることができます。問題を解決することで、より良い仕組みやプロセスを構築し、組織やプロジェクトのパフォーマンスを向上させることができるのです。
事例として、農業生産法人を経営していた際に、現場では毎日のように問題が起っていました。例えば、農作物の収穫時に労働力が不足し、収穫が遅れてしまった場合です。これは想定外の出来事かもしれませんが、この問題を真摯に受け止め、労働力の確保や効率的な収穫方法の見直しを行うことで、将来的な収穫時のリスクを軽減することができます。
問題が起きたとしても、それを恐れずに向き合い、適切な対処を行うことが組織やプロジェクトの成長につながります。問題解決においては、透明性やコミュニケーションの重要性も強調されます。組織内で情報を共有し、メンバー間で意見交換を行うことで、より良い解決策を見つけることができます。
したがって、「問題が起きました」という状況に対しては、冷静に対処し、チーム全体で共に成長し、問題をチャンスと捉えて前進していく姿勢が重要です。問題を避けることは難しいですが、適切なアプローチで問題に対処することが、経営者や管理職の重要な役割であると言えます。
確かに、「問題が起きました」という言葉には、多くの場合、ネガティブなイメージがつきものです。問題が生じることは、予定外の出来事や予測外の状況が発生したことを意味します。そのため、多くの人が問題を先送りにしたり、無かったことにしてしまいたいと考えることは理解できます。
しかし、問題を先送りすることや無かったことにしてしまうことは、長期的に見れば組織やプロジェクトにとってマイナスとなることがあります。問題を放置すると、その問題が大きく膨らんで対処が難しくなったり、他の部分にも影響を及ぼしたりする可能性があります。
ここで、アグリハックの考え方が登場します。アグリハックとは、農業において新たな手法や技術を取り入れてイノベーションを起こすことを指しますが、この発想を経営やプロジェクトにも応用することができます。
アグリハックの考え方は、問題を素早く解決するだけでなく、その問題を逆手にとって新たな可能性を見出すことを意味します。つまり、問題をチャンスととらえてアプローチすることで、より良い結果を生み出すという発想です。
例えば、農業生産法人を経営していた際に発生した問題があったとします。この問題を素早く対処するだけでなく、その問題を解決することで新たなビジネスチャンスや改善点を見つけることができるかもしれません。問題をアグリハックの視点から見ることで、従来の枠組みにとらわれず、より創造的なアプローチが可能になります。
したがって、「問題が起きました」という状況に対しては、アグリハックのような発想を取り入れて、問題解決だけでなく、新たな可能性を見出す視点を持つことが重要です。問題を恐れずに向き合い、アグリハックのようなイノベーション発想を経営やプロジェクトに取り入れることで、より良い結果を生み出すことができるでしょう。。
ある時にうちのマネージャーが素晴らしいアイデアを思いついた時に、そのアイデアを聞いた会議の参加者からは反対意見が出ないどころか、全員一致で「それはとても良いですね、すぐに実行しましょう」とほとんど即決状態だったそうです。
その報告を受けた私は懸念を感じ、こう言いました。
「異論がないということは、知的好奇心の放棄。必ず何かを見落としている。異論がないならでっち上げろ。異論のない話し合いに意味はない」確かこのようなことをいいました。
このエピソードは、組織やチームにとって重要な考え方を示しています。マネージャーやリーダーが提案したアイデアに対して、全員が異論なく即決で賛成することは、一見良いことのように感じられますが、実はリスクをはらんでいる可能性があります。
まず、異論がないという状況は、チームのメンバーが意見を述べることを躊躇している、または意見を言いにくい雰囲気がある可能性があります。これは、知的好奇心や批判的思考が欠如している可能性があります。異なる視点やアイデアが出てこないと、そのアイデアに潜在するリスクや問題点を見落とす可能性が高まります。
リーダーが提案したアイデアに異論を持つことは、成長や改善のために重要です。異論を持つことは、それを根拠や理由をもって説明し、議論を行うことで、より良い解決策やアイデアを見つけるチャンスとなります。リーダーシップには自信と決断力が必要ですが、同時に柔軟性とオープンマインドも求められます。
「異論がないならでっち上げろ。異論のない話し合いに意味はない」という言葉には、問題を想定し、議論を通して洞察を得る重要性が込められています。アイデアや計画を磨く過程で、リスクや問題を見極めることができるからこそ、実行に向けた準備を整えることができます。それによって、実行段階での対応が迅速かつ的確になり、よりスムーズに成果を上げることができるのです。
組織やチームにおいては、異論を歓迎し、アイデアや計画を共有し合う文化を醸成することが重要です。異なる意見や視点を尊重し合い、誠実な議論を通じてより良い成果を生み出すことができるでしょう。リーダーは、メンバーが意見を述べやすい環境をつくり、知的好奇心を促進することで、より創造的で持続可能な組織づくりに貢献できると言えます。
農業は自然との密接な関係にあり、農作業のスケジュールや計画は作物の成長や気候などの自然の変化に合わせて調整する必要があります。特に季節作物や果樹栽培などでは、収穫時期や育成にかかる期間が限られており、一度の判断ミスが大きな影響を及ぼすことがあります。そのため、農家としての成功には正確なスケジュールと計画が不可欠です。
例えば、果樹栽培を行う農家が、収穫時期を誤って早めに収穫してしまった場合を考えてみましょう。果実が未熟な状態で収穫されると、品質が低下し市場価値が下がるばかりか、収穫量が減少して収益が減る可能性もあります。逆に、収穫時期を遅らせてしまうと、果実が過熟になり、品質が悪化してしまう可能性もあります。このように、適切なタイミングで収穫することが重要であり、正確なスケジュールや計画が収益を左右する要因となります。
農作業においては、ガントチャートなどの計画ツールが役立ちます。作物の成長や気候の変化を考慮しながら、適切な時期に農作業を行うことができます。また、予測される変動やリスクに対応するためのバッファを設けることも重要です。例えば、天候による収穫時期のズレや病害虫の発生など、予測できない要因に対応するために余裕を持たせることで、計画の逸脱にも対応しやすくなります。
農業は生産性と収益を最大化するだけでなく、環境への配慮や持続可能性も求められる分野です。したがって、農家として成功するためには、正確なスケジュールと計画だけでなく、環境への理解と適切なリソース管理も重要です。農業は毎年のサイクルで行われるため、経験と実践を重ねて知識と洞察力を蓄積していくことが成果を上げるために欠かせない要素となるでしょう。
以上のように、農業においては自然の変化との相互作用により収益に直結するため、計画の正確性と適応力が重要となります。農業経営者としては、リスクを最小限に抑えながらも柔軟に対応できる戦略を持つことが、成功への鍵となるでしょう。
アグリハックの視点から見ると、問題を見つけることは実はポジティブなことであり、それが次の成長や改善へのチャンスであると捉えられます。問題が見えていないか、問題を隠している可能性があるということは、現状の課題に気づけていないことを意味します。問題を認識し、改善の余地があることに気づくことで、さらなる成長や進化が可能になるのです。
農業の場合、自然の影響を受けるためにさまざまな問題が発生します。例えば、気候変動による異常な天候が作物に影響を及ぼす場合や、新たな病害虫が発生して農作物に被害を与える場合などが考えられます。こうした問題が発生すると、農業経営に多大な影響を及ぼす可能性があります。
アグリハックの考え方では、こうした問題に直面した際に、「問題がある」と認識し、その問題に対して柔軟かつ創造的に対処することが重要とされます。例えば、新たな気候に適応するための栽培方法の改善や、病害虫に対する新しい防除方法の開発などが考えられます。これらの取り組みにより、農業生産の安定化や効率化が図られる可能性があります。
さらに、アグリハックは問題を見つけただけでは終わりません。問題を解決するためには、データ分析や実験、知識の共有など、様々な手段を駆使して取り組む必要があります。問題を隠してしまうことなく、率直に問題を認識し、主体的に解決に取り組む姿勢が重要です。
アグリハックの考え方は、農業に限らずビジネスのあらゆる分野に適用できるものです。企業経営においても、問題を見逃さずに対処し、改善していく姿勢が競争力の向上や成長に繋がります。問題を見つけることを恐れるのではなく、問題をチャンスと捉え、新たな成果に繋げていくことが重要なのです。
まとめると、アグリハックの視点から見ると、問題を見つけることは成長や進化へのチャンスであり、問題がないことはむしろ問題そのものと捉えることができます。問題を隠すのではなく、率直に問題を認識し、創造的な解決策を模索する姿勢が、持続的な成長とイノベーションをもたらすのです。
アグリハックでは「きく」という動作が3つある
この3つ「きく」が、それぞれの「話をきく」時の姿勢を表しています。
私がアグリ・コンサルタントの仕事で、依頼先の農業生産法人を訪ねた時に現場に出向いたマネージャーが現場の責任者を集めて、「何か問題はありませんか?」と1の「聞く」をしたところ、少しばかりの問題は挙がりましたが、「他には特にありません」という答えでした。
ここで終わればなかなかに優秀な現場といえるでしょう。
しかし、「そんなはずはない」と感じたマネージャーが、さらにつっこんで具体的に「機械類の整備、GAPに準ずる倉庫の整理整頓具合はどうですか?」とか「正品率はどれくらいですか?」あるいは「生産計画通りに進んでいますか?」などと2の「聴く」をしていくと、後から後から問題が浮かび上がってくるですね。
この事例は、アグリハックの考え方が具体的な場面でどのように適用されるかを示しています。アグリ・コンサルタントとして現場の農業生産法人を訪れたマネージャーが、ただ問題の有無を聞くだけではなく、積極的に問題を引き出すために聴くことに注力したことが重要なポイントです。
1つ目の「きく」で、少しの問題しか挙がらなかった場合、一見優秀な現場と思われるかもしれませんが、それだけでは現場の実態を把握することは難しいです。しかし、2つ目の「きく」で具体的に聴き込むことで、実際の問題が浮かび上がり、現場の課題や課題の本質が明らかになります。
マネージャーが「機械類の整備、倉庫の整理整頓具合、正品率、生産計画通りの進行」などと質問することで、異なる視点から問題を見つけることができます。農業生産は多くの要素が絡み合い、細かな管理が必要なため、一見問題がないように見えることでも、実際にはさまざまな課題が存在することがあります。
このように、積極的に問題を引き出すことで、改善すべきポイントが見えてきます。問題を洗い出すことで、適切な対策を立て、改善していくことが可能になります。また、現場の責任者たちが積極的に意見を出しやすい環境が整うことで、問題の共有や解決に向けた協力体制が築かれることもあります。
この事例は、「きく」の姿勢を持つことがアグリハックにおいて重要であることを示しています。問題を見逃さず、率直に聴き込み、現場の実態を把握することで、より効果的な改善策を立案し、収益向上や効率化に繋げることができるのです。アグリハックの考え方は、農業だけでなくあらゆるビジネスにおいても有効であり、問題を見逃さずに積極的に取り組む姿勢が成功への鍵となります。
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アグリハック研究会
アグリハックを通じたビジネスのメッセージは「農家はメーカー」であるということです 。常にマーケットを意識しながら、コストの削減や栽培プロセ…
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