見出し画像

促成ナスの冬期における増収アグリハック

前回は「ナスの土壌病害はこうして防ぐ」と題して、土壌病害について解説してましたが、これらのことはナス科全般に共通する対策となりますので必見となっております。

今回は、冬期における促成ナスをする場合においてナスの収穫を増やすためのアグリハックとなっております。

昼加温と炭酸ガス(CO₂)施用のダブルハックで増収と品質向上のダブルアップ効果

近年、促成ナスの生産においては、燃油代の高騰や単価の低迷といった要素が収益性の低下をもたらしています。これらの課題に対処するためには、以下のような対策を検討することが重要です。

まず、エネルギー効率の向上を図ることが求められます。例えば、エネルギー消費の大きい温室施設においては、省エネルギー設備の導入や適切な気候制御による効率的なエネルギー利用を検討することが有益です。また、収穫や出荷の効率化にも取り組むことで、作業時間や人件費の削減を図ることができます。

さらに、市場の変化に対応するために、生産の多様化や付加価値の向上を考えることも重要です。例えば、新たな品種の導入や特産品への転換など、市場での競争力を高める取り組みを行うことが求められます。また、流通や販売ルートの見直しや直接販売の拡大など、効果的な販売戦略の構築も収益性向上につながるでしょう。

さらに、労働力の確保や生産管理の最適化など、経営の効率化にも注力する必要があります。労働力不足が課題となる場合には、労働力の確保や教育・研修の充実、作業プロセスの改善など、労働生産性の向上を図る取り組みが重要です。

これらの対策を総合的に検討し、経営努力を積み重ねることで、収益性の低下を克服し、促成ナス栽培の持続可能な経営を実現することが可能です。

現在、私たちの農業生産法人では、収益性向上と品質向上を目指し、促成なすの冬期栽培において「日中の施設内加温」と「炭酸ガス(CO₂)施用」という二つの技術を併用したダブルアップ技術を研究しています。

まず、「日中の施設内加温」は、冬季の低温下での栽培環境を改善するために行われます。暖房設備を利用して施設内の温度を適切に調整することで、ナスの生育を促進し、収量の増加を図ります。これにより、冬期でも安定した生産を行うことが可能となります。

また、「炭酸ガス(CO₂)施用」は、光合成を活性化させるために二酸化炭素を追加的に供給する技術です。施設内にCO₂を散布することで、光合成効率を向上させ、ナスの生育速度と収量を増加させることが期待されます。さらに、炭酸ガスの施用により、果実の品質や味の向上も期待されます。

これらの技術を組み合わせることで、冬期における促成なすの収量を増加させるとともに、品質の向上も図ることができます。さらに、生産効率の向上により、コスト削減や労働力の効率的な活用も実現できるでしょう。

私たちは現在、この技術を実証実験と研究を通じて進めており、その効果や実用化の可能性を慎重に評価しています。促成なすの冬期栽培において、より効率的で持続可能な生産を実現するために、これらの研究成果を活用していく予定です。

昼加温と炭酸ガスの施用方法

私たちは岡山県の農業改良普及センターのデータを基に、6m間口で長さ30mのハウスを3棟使用して、促成なすの冬期栽培における昼加温とCO₂施用の効果を検証しています。

まず、1棟目のハウスは昼加温とCO₂施用を行う区域です。この区域では、日中の施設内加温によって温度を適切に調整し、さらに炭酸ガスの施用によって光合成効率を向上させています。これにより、ナスの生育速度や収量の増加を期待しています。

2棟目のハウスは昼加温のみを行う区域です。この区域では、日中の施設内加温によって温度を調整することで、ナスの生育環境を改善しています。昼加温により、冬期の低温下でも安定した生育が期待できます。

3棟目のハウスは無処理区であり、特別な加温や施用を行わず、通常の自然条件での栽培を行っています。この区域では、他の区域と比較して効果の有無や成果を評価するための基準として用いられます。

私たちは、これらのハウスで行われる検証結果を元に、促成なすの冬期栽培における昼加温とCO₂施用の効果を評価しています。岡山県の農業改良普及センターのデータを基にしつつ、試行錯誤を重ねながら、より効果的な技術を探求しています。

今後も継続的なデータ収集と検証を行いながら、促成なすの冬期栽培の生産性向上に向けた研究を進めていきます。

昼加温+CO₂施用区

昼加温+CO₂施用区では、ハウスの中央部に灯油式の炭酸ガス発生機(CG-254S1)を配置しました。

この区域では、24時間タイマー、サーマルコントローラ、炭酸ガスコントローラを活用して、午前6時から午後3時までの間、ハウス内の温度が換気温度(28℃)以下の場合に炭酸ガス濃度を調整しました。目標とする炭酸ガス濃度は1,300~1,500ppmとしました。

これにより、昼間のハウス内の温度が一定範囲に保たれ、換気温度以下になると自動的に炭酸ガスが発生され、目標の濃度に調整されます。この炭酸ガスの施用により、ナスの光合成効率が向上し、生育速度や収量の増加が期待されます。

昼加温+CO₂施用区では、適切な環境条件を整えることで、ナスの冬期栽培における生育促進と収量向上を目指しています。この区域での試験結果を通じて、昼間の加温とCO₂施用の組み合わせが促成なすの生育に与える効果を検証しています。

試験データを基に、より効果的な昼加温とCO₂施用の方法を確立し、経営努力の一環として収益性の向上を目指しています。これにより、促成なすの生産性の向上と経済的な利益の確保を図ることができます。

昼加温区

昼加温区では、昼加温+CO₂施用区と同等の熱量を確保するために、400Wの電熱温風ヒーターを15台設置しました。これらのヒーターは昼加温+CO₂施用区の装置と同時に稼働し、ハウス内の温度を一定に保つ役割を果たしました。

電熱温風ヒーターは電力を使用して熱を発生させ、風を送り込むことでハウス内の温度を上昇させます。15台のヒーターを均等に配置し、効果的な加温を実現するために努力しました。

昼加温区では、ナスの冬期栽培において適切な温度環境を提供することを目指しました。電熱温風ヒーターの設置により、ハウス内の温度を安定させ、ナスの生育を促進することが期待されます。

試験結果を通じて、昼間の加温がナスの生育に与える効果を確認し、経営努力の一環として収量向上を図ることができます。昼加温区での効果的な加温手法を確立し、経済的な利益を追求することが目指されています。

無処理区

無処理区では、慣行農法に基づいてナスの栽培を行いました。昼加温や炭酸ガスの施用は行われず、従来の方法での栽培が行われました。

この3区の比較を通じて、昼加温と炭酸ガス施用の併用が「促成なす」の収量と品質に与える影響を評価しました。無処理区は、他の区域と比較して、昼加温や炭酸ガスの恩恵を受けることがありません。

結果を分析することで、昼加温と炭酸ガス施用が収量と品質に与える効果を明らかにすることができます。無処理区を比較対象とすることで、新しい技術や手法の有効性を評価し、経営努力の方向性を見極めることができます。

これらの結果を基に、より効率的で収益性の高い促成なすの栽培方法を確立し、経済的な利益を追求することが期待されます。無処理区のデータを参考にしながら、昼加温と炭酸ガス施用の効果を最大限に活かす栽培技術を開発することが重要です。

昼加温と炭酸ガス施用のダブルアップ効果

データの収集結果によれば、昼加温+CO₂施用区と昼加温区では、ハウス内の温度が無処理区に比べて約2℃上昇していることが確認されました。

ここから先は

2,803字
農業はビジネスです。アグリハックは、農家が自らメーカーとなり、マーケットに向けた革新的な戦略を展開することを提唱します。私たちは常にお客様の視点に立ち、品質と価格のバランスを追求しながら、最も付加価値の高い作物を生み出します。自然とテクノロジーの融合を通じて、持続可能な農業経営を追求し、地域のニーズに応える生産体制を築きます。アグリハックは、農業の枠を超えた経営戦略のノウハウをお届けし、農業ビジネスの未来を切り拓きます。農業を革新し、地域との絆を深める、アグリハックの世界へようこそ。

アグリハックを通じたビジネスのメッセージは「農家はメーカー」であるということです 。常にマーケットを意識しながら、コストの削減や栽培プロセ…

期間限定!Amazon Payで支払うと抽選で
Amazonギフトカード5,000円分が当たる

よろしければサポートお願いします! いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!