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美味しい秋ナス栽培の管理

前回は「露地のナス栽培によくある障害」と題して、ナスの露地栽培中は真夏を経験するので様々な障害の危険性に見舞われます。特に異常気象の続く昨今では、その対策について考えておく必要があるので今回は日焼け果などの対策について解説させていただきます。

今回は、夏秋ナス栽培の管理のコツを紹介させていただきたいと思います。
夏秋ナス栽培における管理のコツとして、十月以降の収穫量の落ち込みを軽減するために以下のポイントに注意しましょう。

夏秋ナスの収量の劇的な落ち込みが見られるのは十月以降です。この課題に対処するためには、適切な管理を行うことが重要です。

まず、適切な栽培計画を立てましょう。種まきや定植の時期、収穫時期などを適切に調整することで、十月以降の収穫量を最大化することができます。

次に、栽培環境の管理に注意しましょう。日照量や温度、湿度などを適切にコントロールするために、日除けシートや遮光ネットを利用することが有効です。また、散水による冷却も効果的です。

風通しや排水状態の確保も重要です。ナスの株に十分な風が通り、水はけの良い状態を維持することで、病害虫の発生リスクを低減させることができます。

最後に、定期的な点検と早期の発見・対処を心がけましょう。病害虫や生理障害の早期発見は重要です。定期的に株の状態をチェックし、異常があれば適切な対策を行うことが収量の保持につながります。

以上の管理のコツを実践することで、夏秋ナスの収穫量の落ち込みを軽減し、収量を最大化することができます。適切な栽培計画、栽培環境の管理、風通しや排水状態の確保、定期的な点検と早期の対処を行いながら、夏秋ナスの栽培を成功させましょう。

また、夏秋ナスの栽培においては、単価の面でも注意が必要です。なぜなら、この時期には促成ナスの出荷が始まるため、夏秋ナスは促成ナスと比較して品質や収量に劣る傾向があります。

夏秋ナスは気温の低下とともに肥大に時間がかかるため、品質が劣ってしまうことがあります。その結果、市場価格も低下し、夏秋ナスの単価は通常150円程度まで下がることがあります。

このような状況に直面した場合、栽培者は効果的な販売戦略を立てる必要があります。例えば、夏秋ナスの特徴や風味をアピールし、地域の需要や特定の顧客層に焦点を当てた販路を探ることが重要です。また、夏秋ナスを加工品として販売することや、地域の直売所や地産地消の取り組みを活用することも考慮しましょう。

単価の低下に直面するかもしれませんが、夏秋ナスの特長を活かした販売戦略を展開することで、需要を喚起し収益を確保することができます。柔軟な対応とマーケティングの工夫によって、夏秋ナスの単価の低下をカバーし、栽培の継続性を確保しましょう。

さらに、夏秋ナス栽培においては日照時間の減少も重要な要素です。この時期になると日照が弱くなり、光合成産物の生成量も減少してしまいます。

ナスの樹にとっては、脈芽や収穫に至らない果実に対しても多くの光合成産物を供給する必要があります。しかし、日照時間の減少により、果実の肥大に必要なエネルギーが不足し、肥大が悪化してしまう可能性があります。

このような状況では、管理に注意を払う必要があります。以下の点に留意して対策を行いましょう。

日照量の確保
枝や葉の配置を調整し、果実に十分な日光が当たるようにします。適切な樹形を保ち、日照を最大限に利用することが重要です。

葉の間引き
適度な葉の間引きを行い、果実に充分な光が届くようにします。過密な葉の状態では日光の透過性が低下し、果実の肥大に悪影響を与えます。

肥料管理
充分な栄養供給を行い、光合成能力を最大限に活用するようにします。適切な量とバランスの肥料を施し、樹の健康状態を維持します。

病害虫の管理
病害虫の発生リスクが高まる時期でもあるため、適切な病害虫管理を行います。健康な樹の状態を保ち、光合成能力の低下や果実の品質低下を防ぎます。

これらの対策を適切に実施することで、夏秋ナスの日照不足による肥大の悪化を最小限に抑えることができます。適度な日照と光合成能力を確保し、健全な果実の肥大を促進するために、管理に細心の注意を払いましょう。

手入れを怠ると、収穫済みの果実だけが残り、側枝は光を求めて上方に茎葉を伸ばす傾向があります。これにより、次に収穫する果実の周辺の日光が遮られ、果実の肥大が遅れるだけでなく、果実の色も褪せた赤色になってしまいます。

このような状況を防ぐためには、収穫終了時期を見極め、開花から収穫までの日数を考慮しながら適切な手入れを行う必要があります。以下のポイントに留意しましょう。

不要な花や果実の除去
収穫に至らない花や果実は株に負担を与えるだけでなく、日光の遮蔽やエネルギーの浪費となります。収穫が見込まれないものは早めに取り除きましょう。

不要な茎葉や脈芽の取り除き
果実の周辺や上部に茎葉や脈芽が密集すると、日光の透過性が低下し、果実の成熟や色付きに影響を与えます。必要な範囲に茎葉を残し、他の不要な部分はかき取りましょう。

収穫終了時期の判断
開花から収穫までの日数や収穫目的に応じて、収穫終了時期を見極めましょう。十分な肥大や色付きを確保できるうちに収穫を終了し、樹に負担をかけないようにします。

これらの手入れを適切に行うことで、果実の肥大や品質の維持に寄与すると同時に、側枝の茎葉の過繁茂を抑え、充実した収穫を実現することができます。日光の遮蔽を最小限にし、健康な樹の状態を保つために、定期的な手入れを欠かさずに行いましょう。

手入れの際の判断基準は「邪魔にならない葉は残す」というシンプルな方針で行いましょう。

側枝の整理や茎葉の間引きを行う際には、以下のポイントに留意しましょう。

邪魔にならない葉は残す
果実の周辺や下部には、日光の透過や通気性を確保するために必要な葉があります。これらの葉は成長や光合成に貢献するため、削り過ぎないようにしましょう。

脈芽の一部は残す
脈芽には成長ホルモンが集中しており、樹の発育や果実の肥大に重要な役割を果たします。そのため、脈芽の一部は残しておくことで、健全な成長を促進することができます。

ただし、茎葉や脈芽が密集している箇所や枝先に果実が存在する場合は、必要な葉や芽を残しつつも、過密な状態を避けるために適宜間引きを行いましょう。

これらの判断基準に従い、樹の健康状態や果実の肥大を最適化するために手入れを行いましょう。適度な葉や脈芽の残留を意識しつつ、不要な茎葉や密集した脈芽を取り除くことで、良好な収穫結果を得ることができます。

収穫時はもちろんナスのアグリハックでご紹介させていただいておりますが、実とともに茎葉も切断するようにします。

本マガジンの「ナスは収穫のたびに切り戻しするのがコツ」でも詳しく触れておりますのでご参照ください。

収穫後の観察と反省は、経験を積み重ねる上で非常に重要です。

農業だけでなく、どんな分野でもPDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)を上手に回すことが重要です。具体的な手順は以下の通りです。

計画(Plan)
収穫後に収穫果実数や品質を詳しく観察し、今後の栽培に反映させるための計画を立てます。収穫時の作業や管理方法についても振り返り、改善点を把握します。

実行(Do)
計画に基づいて実際に改善点を取り組みます。例えば、収穫作業の効率化や栽培管理の見直しを行います。

確認(Check)
改善策が実際に効果をもたらしたかどうかを確認します。収穫後の観察を通じて、収穫果実数や品質にどのような変化があったかを評価します。

対策(Act)
確認の結果に基づいてさらなる改善策を立てます。成功した点を継続し、不備や課題があれば新たな対策を講じます。

このようにPDCAサイクルを回すことで、効率を追求するだけでなく、経験から得た知見を次の栽培に生かしていくことができます。観察と反省を怠らず、改善点を把握することでより良い収穫結果を追求しましょう。

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