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【極超短編小説】彼女の観葉植物

 散歩や買い物、食事なんかで3回誘った内、2回は断られる。
 逆に彼女からの誘いは断ったことがない。
 と、いうわけで彼女に断られた僕は淋しい気持ちのままひとりで散歩に出かけた。


 景色がのんびりと過ぎていく。公園の植え込みや街路樹の濃い緑は、思わず深呼吸してしまいそうなくらい元気をくれる。
 途中、ふらっと立ち寄った園芸専門店で観葉植物を気まぐれで買った。


 植え替えして肥料をやり、日当たりに気を付け、慎重に水やりして育てた。『みどり』と名前も付けて朝出かけるときは「行ってきます」、帰ったら「ただいま」と声さえかけた。まさに愛情を注ぎこんだ。
 『みどり』はしばらくの間は心が和むような緑を見せてくれていたけど、ひと月もたたないうちに、徐々に元気がなくなり枯れてしまった。


 3回目の誘いで散歩に付き合ってくれた彼女に『みどり』のことを話した。
 「わたしの『観葉君』見る?」
 彼女の部屋を訪れると、大きくはないけど青々とした観葉植物が無造作に置かれていた。
 「もう10年以上かな」
 「どうしたらそんなに長く‥‥」
 「あなた、手をかけ過ぎ。放っておいて、たまに相手をしてあげるのがコツね」
  彼女は張りのある緑の葉にやさしく指を沿わせながらラッキーストライクを燻らせ、
 「今度の日曜日、ドライブに行かない?」
 「いいね、行こう」
 僕は即答していた。

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