【極超短編小説】出会い
夏の一歩手前。少し汗ばむ陽気。
日差しが少しまぶしくて、眉の上で手をかざす。
公園のベンチに女が一人で座って煙草を吸っている。
僕はなぜか女の横に座ってみた。
膝に頬杖をついて、くわえ煙草。口と鼻からもわっと煙が漂い出る。その姿に背中にぞわっとしたものを感じたとき、女はにわかに振り向き僕の鼻にぐうパンした。
鉄の匂いと鉄の味。鼻血が垂れる。
僕は立ち上がり今度は女の正面で片膝をついた。
女の顔がおもむろにこちらを向く。僕は女の頬にビンタを張る。勢いで顔がぐるっと横を向くと同時に煙草がどこかへ飛んで行った。
僕は再び女の横に座った。女は煙草をとりだし火を点けた。
「これからどうする?」
「考えてみようか」
彼女はくわえ煙草で夏の一歩手前の青空を仰いで言った。