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【極超短編小説】どっちなの?

 日曜日の午前中、オレはいつものようにカノジョの部屋を掃除する。キッチンの油汚れをこすり取り、リビングに散乱するペットボトルやカップ麺の容器を集め、玄関の脱ぎ散らかされた靴を揃え、トイレの便器を磨き上げる。そして最後にバスルームの掃除の後、シャワーを浴びて汗を流す。

 カノジョの前には大盛のカレーライス、オレの前には大盛プラスのカレーライスが置かれている。
 「きょうはシーフードカレーでーす」
 カノジョは、どうぞご覧あれというように両手のひらをこちらに向ける。
 「いただきます」

 オレが満腹になった腹をさすっていると、カノジョはコーヒーを淹れてくれる。香ばしい香りを嗅ぎながらズズッと一口含む。ああ、おいしい。
 気づくとカノジョは頬杖をついてオレをジッと見ている。
 「なに?」

 「コーヒーとアタシ、どっちが大事?」
 「なんだよ?突然」
 「ねえ、どっちが大事?」
 「君だよ」
 コーヒーを味わってばかりいないでアタシを見ろってこと?
 「シーフードカレーとアタシ、どっちが大事?」
 「君」
 満腹でもボーッとしないでアタシを見ろってこと?
 「掃除とアタシ、どっちが大事?」
 「君」
 掃除なんかしないで傍に居ろってこと?
 「仕事とアタシ、どっちが大事?」
 おっと、来たねぇ。よくあるやつ。模範解答は当然、
 「君」
 「車とアタシ、どっちが大事?」
 はいはいはい、そう来るよねぇ。オレのEP82スターレットGT後期型。『北』の車屋でやっと見つけたんだよな。でも答えは、
 「君」
 「アナタとアタシ、どっちが大事?」
 「君」
 オレがそう答えるとカノジョは少し睨むような眼で、
 「ダメー」
 「え?じゃあ、オレ?」
 「正解~!」
 そう言ってカノジョはニコッと笑った。
 
 

 

 

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