【極超短編小説】チューして
1週間でよくもまあこんなに散らかせたものだ、とオレは呆れながらカノジョの部屋の掃除をする。カップ麺の容器、紙屑、ペットボトル、菓子パンの包装紙、パーラメントの吸殻などなど、足の踏み場もない。
「何か食べたいものある~?」
シンクに積まれていた食器を洗って片付け、さっき片付けと掃除が終わったキッチンからカノジョが尋ねる。
「何でもいいよ~」
オレはゴミを分別しながら応える。
リビングの片付けと掃除が終わり、洗面所で汗の噴き出した顔を洗ってキッチンに行くとテーブルの上にスパゲティナポリタン。カノジョの皿は大盛、オレの皿はドーンと大盛プラス。
「味見してないけど~」
とカノジョ。
「いただきます」
スパゲティナポリタンを食べ終わり、オレは満腹で思わず腹をさすっていると、カノジョは淹れたてのコーヒーをオレの前に置く。
「チューして」
カノジョがテーブルの向かい側から唇を突き出す。
「なんでこのタイミングで?」
「いいからチューして」
カノジョは目を瞑って唇を突き出す。
「なんで?」
とオレは言って、チュッとチューする。
カノジョがニコッと笑うのを見ながら、オレはコーヒーを啜った。
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