街角ピアノ 第1話
第1話
街の駅で毎日6時30分になると、僕はこの駅に設置されている「街角ピアノ」を演奏する。「街角ピアノ」というと、通りかかった人がいつでも好きなだけ演奏できるようになっているピアノのことだが、僕は毎日ここに来て6時30分から演奏している。最近では割と有名になって来て誰かか使っていたとしても6時30分には席を空けてもらえて演奏できるようになっている。僕がこの街角ピアノを演奏し始めたのはちょうど1年位前のことだ。当時僕は音大を卒業したばかりで、作曲家になるつもりでいたが、実際にはほとんどお金を稼ぐことはできていなかった。高級なバーやラウンジなどで演奏して小銭を稼ぐ日々だった。そんなある日僕の街の駅に「街角ピアノ」が設置された。僕は何の気無しにピアノの前に座り演奏し始めた。すると足早に走り去っていくお客さん達が皆足を止めて僕の演奏に聞き入ってくれた、その日以来僕は街角ピアノの虜になって毎日ここに来て演奏するようになった。今日は演奏が終了すると、小学生の男の子が話しかけて来てくれた。「お兄ちゃんはピアノが物凄く上手だね。昔からやっているの?「うん、僕は6歳の時に初めてピアノに触れて以来それからずっとピアノ漬けの生活をして来たんだ。さっき演奏したのオリジナル曲で、僕本気で作曲家になりたいと思っているんだ。でも今はそれでお金稼ぐこと全く出来ていないんだ。」すると彼は「お兄ちゃんみたいに上手な人でもプロになれないなんて音楽の世界はやっぱり厳しいんだね。」と言った。そして「今度僕の學校で音楽会があるんだけれど、それに余興として出ておくれよ。皆きっと喜ぶよ。」僕は未来ある子供からの依頼だったので、もし僕の演奏を聴いてピアノを始めてみる子がいたりしたらこれ程嬉しいことは無いと、二つ返事でOK した。後日聞くところによると、実際に僕のピアノを聞いてピアノを始める事が一つのブームになっているらしかった。それを聞いて僕は小学校で演奏することが出来て本当に良かったと思った。
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