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海上浮上都市
ADOL NOAHの少し前の話。
大海嘯の大波によって壊滅したジェネシスベイエリア。
それ以来、惑星ラグラの海上には都市開発など不可能だと誰もが考えられていた。
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あれから数百年経とうとしている‥
都市開発不可能、その筈は、とある宇宙異民族の往来によって定説は崩れ去った。
私はニクロ。
ラグラ航空調査団の隊員である。
今回司令部からの依頼で、その宇宙異民族が忽然と海上に姿を消してしまう事態を調査する為、姿を消した指定エリアの上空を調査する任務に従事する事となった。
私と同行する相棒のゼネルと共に基地から出動する。
エンジニアの手慣れた整備のお陰か、機体の調子が良い。
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ランドシップが流れ行く雲に覆われて行く。
高度を下げ、問題の海上エリアに向けて進路を取る。
複座のコクピットで談笑が始まった。
ゼネル
「リコルの誕生日だったんだろう?ちゃんとしたプレゼント渡せないとな」
ニクロ
「反抗期だからな、カリカリしてるとプレゼントお預けだぞって説教したら大人しくなったぞ。お前のおかげだな」
ゼネル
「ハッハッハ!本気で言うとはな。しかし‥」
ニクロ
「今回の調査の件か?」
ゼネル
「ああ、しかし何故今まで調査しなかった?」
星間条約によって惑星ラグラの往来を受け入れた種族は、広大な海上に都市開発を可能にするだけの充分な時間を与えている。
それが今まで忽是と姿を消す疑問など、とっくの昔から調査できた筈だ。
それは私も疑問だったが、司令部側は長きに渡る黙認の末、今更調査を依頼した。
ゼネル
「飲まれた‥なんて後味悪いだろ」
ニクロ
「大海嘯はジェネシスベイエリアの壊滅以来、数回は発生している。
先月の合同国際会議に主催側が来場したのを覚えているか?」
ゼネル
「やはり‥それがきっかけかもしれんな」
議員一同が目を丸くして驚愕した筈だ。
ラグラの大海嘯でも壊滅しない都市開発など、歴史始まって以来の衝撃だ。
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どうやってこんな質量を凌ぐ都市開発を可能にしたと言うのか。
私はこの調査を心待ちにしていた。
童心に返り、眠れなかった程だ。
ゼネル
「海上は静かなものだな‥」
ニクロ
「司令部も絶海の状態も顧慮してくれていたか」
ゼネル
「エリアに近くなってきた。どんな都市なんだ?」
私は機体の記録中のフライトレコーダーを司令部に送り続けている。
そこには穏やかな絶海が広がるだけで、都市の建造物一つも見当たらなかった。
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ニクロ
「‥‥おかしい。何もないぞ」
ゼネル
「まさか‥」
ニクロ
「よせ、縁起でも無い」
その時だった。
海底から浮上して来る。
それは‥
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言葉を失った私達は、終始絶海を見下ろす。
そしてそれは浮上した。
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彼ら種族の偉業‥。
途方もないテクノロジー。
文明の差を思い知らされる。
異文化に招待される様に、彼らは私達の往来も歓迎してくれていたのだ。
計算されたタイミングで受けた衝撃は、私とゼネルの網膜にしっかりと焼き付けた。
彼ら種族の名は‥‥‥