蒼穹の見聞録-Lagra myth-14
液体窒素の真っ白な煙を直に浴びるような寒気。
植物が咲き乱れる空間があればたちまち生気を失うほどの。
空間は暗雲の密度を急速に支配していく。
何層もの暗雲が発生した。
空間から無数の夥しい螺旋が現れた。
侵食者‥
輪廻の砦を突如襲った群衆とは
闇に紛れ、人類を眠らせ
可能性の許容を制限してきた元凶。
姉メンテが押し黙り、重い口を開く。
攻防神から充填される加粒子霊波動の密度は
急速に上昇していく。
包囲網からの矛先は既に遠方から発生した
無数の螺旋をしっかりと捕捉した。
迎撃の準備は整っている。
螺旋が侵食者と思わしき鼻っ面を押し出し、
その禍々しい姿を見せた。
それも攻防神と対峙する同等の巨大さで。
再び輪廻の防衛網が一斉に火を吹いた。
本質は触れて正され秩序によって逆撫でされた。
目的も交渉も無意味に襲撃を開始する。
ポジティブとネガティブの衝突が絶対領域で始まる。
表情の無い無機質な黒い奴が呟いた。
互いの運命を賭けた衝突に
エノクの心が揺れ動く。