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職人気質と日本文化
フロンティアスピリット
フロンティアスピリットとは開拓者精神とされますが先進、先取、変化を先取りしたい気風という意味でもあると思っています。その意味で日本文化は元来フロティアスピリットに富んだものだと言えます。
歴史をみても先進、先取、変化を先取りしようとする文化はずっと持たれてきた日本の特徴だと感じることができますし、それが日本を日本たらしめて「国」としての形さえ保たせ、成長させた原動力の一つだとさえ思うのです。
なんでも「道」にしてしまう
少し前(何ヶ月前だったか何年前だったかも定かではないのですが)コラムニストさんかエッセイストさんがこんなタイトルで記事を書かれていたことがずっと頭から離れずに残っています。
たしかに柔道、剣道、茶道に華道 上げていけばきりがないほどありそうです。
職人気質
加えて何でも突き詰めるのも日本的気質だと思うのです。おおよそ他の文化圏
では目的に沿うやり方、技術やノウハウが成立するとそこからはあまり追及しなくなってしまいます。もうすでにそのありようで役にたつ、事足りればそれで良しとする感覚であったり、いきなり目的やルールごと変えてしまうようなドライさがあるように思います。
この点において日本では「なぜこれがいいんだろう」「もっといい方法はないんだろうか」「そもそも何でこうするんだ」などの自問自答があちこちで生まれてそこかしこでそれらが追求されてゆく職人気質が浸透していると思います。
最近では「オタク」などの言い方もありますが要は「没頭」することを否定せず、より生産的、精神的なものにさえ「昇華」させてゆく。これは貴重な文化的特徴だと思います。
時間を軽んじない
時間にシビアな文化だと言われることも多いように思います。これは人に迷惑をかけてはいけない、つまり他人の時間を奪ってはいけないと考える日本的な「礼儀」の現れだと思うのです。
「時は金なり」なんて言い方もありますし同じ社会に共生し共有していると思えばこそ、お互いに対して誠実に時間を過ごすべきだとの共通概念が成立しているのだと思います。
人をたいせつに扱う
これも日本的な美点の一つだと思います。インバウンド需要が強く、日本にやってくる海外の方の数が毎年増える一方だと言われています。なぜでしょうか。
為替レートに起因するもの、地政学的な理由、エンタメなど文化の浸透による効果など様々に要因は重複したり偏在しているでしょう。けれどもつきつめて思えば人を大切に扱うことが前提である文化だからこそ、その過ごしやすさに価値を見いだす方が多く訪れているとも感じます。慈しみの心とでもいいましょうか。
(タイ国もアジアの観光大国の一つであり仏教国です。どことなく通じ合う気質を感じることもこの思いを強くさせます)
一方でのモラハラ、カスハラ、パワハラ
これらのワードが生まれるのも日本的だと思うのです。他人も含めて自分の周囲の人たちへ配慮することが当然だとされる文化だからこそ、そこに託けて自分のエゴをぶつけてやろう、的なイヤな人の一面も現れるのだと思います。
海外での気づき
シンガポールで過ごした頃に見かけたニューステレビ局のドキュメンタリー番組です。
1600年ごろから以降、シンガポールがどんな街を形造って変化してきたかをまとめてくれています。(通してみると全部で47分を越える割と長いストーリーですが非常にフォーカスの定まった編集なので間延びせずに楽しんでみられると思います)この中に「日本」が現れます。(35分あたり以降)シンガポールの漁村や漁業に日本がどんな影響を与えたのか、シンガポールの一般的な住居であるHDBと呼ばれる団地がいかにしてつくられ始めたのか。そんなことに日本が関係あるの?と思われるでしょうか。ぜひご覧になることをお勧めします。
世界を照らす柱になろう
唱歌教育も日本的なものの一つですし、それを活かして「校歌」も多くの学校で大切にされています。これらをみているとその学校のある土地に対する愛着と誇り、そこで育つことと未来を担う新たな世代としてのプライドの喚起を促す歌詞が多いと思います。
これも非常に貴重な価値観だと思うのです。
今の日本は自信を失っているか、共有されるべき「国としての物語」がぼやけているために刹那的な心象が多いように思います。またここから自分たちの美点凝視によって自信を取り戻したいものです。
かつて先人たちが世界を見よ、と言ったのもまたそれによって日本の良さにも気づけるからこその教えだったと思うのです。
オーソリティはいまこそ襟を正せ
権威、権力のあるものこそが果たすべき義務があるという道徳、「知足」の悟りを西郷隆盛は「敬天愛人」と表しました。
「万人の上に位する者、己を慎み、品行を正しくし驕者を戒め、節倹を勉め、職事に勤労して人民の標準となり、下民其の勤労を気の毒に思う様ならでは、政令は行われ難し」
西郷さんは学びを忘れてはいけない、かつ軸を持って諸外国の考え方や制度を取り入れろ、目指すものがあやふやなまま取り入れれば人々の精神は荒廃するぞ、とまで当時の視点で指摘してくれています。
日本文化のもつ大切な視座の一つです。