カンロ飴の視線
11月1日はくまきちの誕生日。いま思えば目の中に入れても痛くないというほど可愛がり、生活の全てで優先してきた愛猫だ。
ワンワンワンの犬の日に生まれたスコティッシュフォールドは折れ曲がった小さな耳とまん丸の顔が特徴的で、くまきちはスコ立ちと呼ばれる立ち方が得意だった。
ブログに夢中になったのも、一眼レフにハマったのも、くまきちが来たからだ。
スマホにはいまも数え切れないくらいのくまきちの写真が保存されている。
3年前の今日、15歳を迎えたくまきちは、「15歳まで頑張ろうね!」というわたしとの約束を果たして、翌年1月30日に旅立った。
すでに重度の腎不全だったが、最期まで立ち上がり、わたしを見つめ続けてくれた。
このカンロ飴のような視線を失って、いつも何かがものたりない。
くまきちと暮らし始めてからの15年、わたしはいろんな病気になった。何度も入院もした。そのたびにくまきちは実家に預けたり、母やKに面倒をみてもらったりした。
退院してくると、部屋から飛び出してきて迎えてくれたこともあったし、不貞腐れたような顔で遠くから顔を覗かせる時もあった。
そうして家で療養していると、やっぱりいつも、くまきちの視線の中にいる。仕事をしていても、テレビを見ていても、ふと集中が途切れると、カンロ飴の視線を感じているわたしがいる。
辛かったり、不安になったりしそうなときもその視線に支えられて、笑っていられたのかもしれない。
心を支えてくれていたカンロ飴の視線
くまきち、19歳おめでとう。
毎年恒例の誕生日のキハダマグロ缶の代わりに、おばあちゃんと一緒にキハダマグロ丼を食べる予定だよ。
カンロ飴は砂糖と水飴とお醤油の味なんだそうだ。いつも見つめてくる甘えん坊のくせに、抱っこが大嫌いで、触られるのも大嫌いだったくまきちは、甘いだけじゃない、しょっぱいカンロ飴の男だったんだね。