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ネットワークビジネスに誘われた話(後編)

前編はこちらからお読みください

本編
友人に連れられて行ったのは街中から電車で10分ほど郊外に行った綺麗なマンションだった。

当時はセミナーというのは会議室や講堂などで行うというイメージを持っていたので、マンションに案内されたのは少し驚いた。

ちなみにもし万が一怪しげな宗教で拉致、監禁されてもいいように直前に頼れる人に周囲の写真や場所などを送っておいた。ついでに1時間連絡が無ければ警察に連絡して欲しいとお願いもしておいた。こういうのはあまり良い話を聞かないし何があるかわからない。

エレベーターに乗り、少しして部屋の前まで来ると内容までは分からなかったが中から話し声が聞こえた。

そのまま友人が扉を開けて中に入ると、そこは4LDK程度の間取りになっていて奥のリビング、ダイニングをつなげた空間はかなり広く2,3名ほどのグループが既に3つほどあった。

私は空いているテーブルを案内され、この後講師の人が来るので少し待って欲しいと言われた。友人は飲み物を持ってくると言って席を立ち、1人になった。

周囲を観察すると…

それぞれが小さな机を挟んで話しており、見たところ片方は講師役、片方は聞き手に分かれているようだった。

近くの席では資料を広げながら

「こういうふうに話してください」
「聞かれたらこう返してください」

という話をしていた。恐らく勧誘のロープレだろう。営業をしたことがある人は分かると思うが、営業トークをその場で考えていてはなかなか成功しない。彼らは空き時間を使ってトークの練習をしているのかもしれない。

別の席ではスーツを着た男性が、2人の若い女性に笑顔で語りかけていた。片方の女性はニコニコしており、もう1人は無表情というか少し引きつった顔をしていたので、自分と同じように連れてこられたのかもしれないと思った。

この様子だと人目はあるし少なくとも無理矢理に何かされる、という心配は無さそうに見えたので少し冷静な気持ちになった。

しばらく待っていると友人がペットボトルのお茶を片手に、講師と思われる男性を連れてきた。スーツ姿を想像していたが、割とラフな格好だった。ハキハキしたガタイの良い感じでいかにも営業向きという感じの印象だった。後で聞いた話だと歳は30代前半、若くして幹部になった方なのだそうだ。

セミナー
そこからは残念ながら大して面白い話はなかった。歓迎の挨拶があって、雑談に始まり今の仕事の不満点などを自然な感じで聞かれ、頃合いを見てビジネスの紹介という流れだった。

資料を広げられ、A4の白い用紙に講師が話の内容を手書きしていくというスタイルで説明は行われた。

「今のお仕事も素晴らしいと思います。どうでしょう副業をされてさらに仕事の幅を広げていきませんか?」

「このお仕事であれば今お話いただいたような不満は決して発生しません」

こんなことを言われた。

たしか商品は水と浄水器だった。何か特殊な効果があるというような話をされた気がする。正直あまり覚えていないのだが浄水器は1台で20万位という話だった気がするし、紹介だから安くできるというようなことも言われた。

ビジネスの概要は要は売れば売るほど収益になるというような話だった。業界では今こんなものが売られているが、ここで扱っている商品は効果が違う、少し高価だがこんなに性能が良いという話を熱く語られた。

さらに加えてネットワークビジネスあるあるとして、販売してくれるビジネスパートナーを紹介することで自分にもその人が売った分の収益が一部還元されるという内容も話をしてもらった気がする。

その後は水道水とその浄水器の水に何かしらの試薬を入れて、水道水とはこんなに違う!みたいな実験を見せられたりした。

印象に残ったのは普及率の話だ。細かいことは覚えてないが日本人で浄水器を使用しているのは何%で今後はさらに普及が見込める。そのため売れる余地がまだまだあるという内容をキャズム理論を絡めて話してきてたような気がする。よくあるイノベーターとかの話だが、理論立てはしっかりしており勉強しているという印象を受けた。

ちなみに話の流れで聞いたところ飲食店も経営しており、友人が連れて行ってくれた例の肉バルもこの会社のなのだという。なるほど、友人があの店にこだわったのはそういう理由だったのか。安くなったり、マージンが出たりするのだろうか。

帰宅
話を聞き終えどう断ろうかと考えていたのだが、講師の方が幸いにも私の名前を間違えて呼んでくれたので

「失礼過ぎる。貴方は人の名前を間違う人間から何かに入りたいと思うのか?ビジネスとは信頼関係ではないのか?」

などと適当に怒ったふりをして帰ってきた。なかなか良い演技だった気がする。帰り際は何度も謝られ丁重に出口まで案内してもらえた。

そのあとはあっさりだった。友人から謝罪のメールが来たりしたり、もう一度だけ来てほしいということを言われたのだが、適当に断っていたらこの友人とも疎遠になってしまった。

この話を思い出すとその友人のことも思い出す。大学時代のこと感謝していたので仲良くしたかったけど…あの時この話を断っていれば今も仲良くできていたのかなと思うことはある。

終幕
そんなわけで友人を1人無くしてしまったという話でした。みなさんもネットワークビジネスやマルチには気をつけてください。

あと私はあっさりついて行ったし、その会社もしつこくはしてこなかったので助かったけど危険なのであまり関わらない方が良いでしょう。

そんなわけで取り留めの無い思い出話でした。あの時断っていれば友人を失わずに済んだのでしょうか?

おわり

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