運命力(135期副将 神代)
引退して1か月が経ちました。
引退した時に後輩からいただいた盆栽ちゃんですが、とある日の強風で一気に葉が落ちてセクシーな見た目になってしまいました。世間はやっと涼しくなってきたばかりだというのに、その寂しい見た目からは冬を感じます。
息を吹き返せばいいのですが先はかなり長そうです。あーあ⤵
さて、4年間を振り返ってみますが、ボート部でやってきてよかったなぁぁ(しみじみ)、みたいな気分にはあまりなれていません。表現するのがとても難しいですが、なんとか完走しきった今だから全部コミコミで意味があったと捉えられている、というかんじです。
別に全く後悔しているわけではないし、幸せもたくさんありました。
早慶戦に勝利し全てから解放された瞬間、A決勝にしかないスタート直前の静寂が心を支配する瞬間、7年目にして練習中新たな大きい気づきに出会った瞬間。どれも時が止まり宙をさまようような素敵な時間でした。
他にも、この4年間を過ごしてきたからこそ得られた学び、そして出会えた自分がいます。そして何より、4年間を共にしてきた135期と出会えたことが、間違いなく僕の一番の幸運です。
恐らくこんな幸せな時間はもう二度と訪れてくれないのでしょう。
それでも、人生2週目できるとしたら確実にボートはやりませんし、ボートのことははっきり言って嫌いです。ほとんどの記憶が辛いことだったからでしょう。
沼から抜け出せず次の練習が怖くなる時間、退化する自分に言い訳をつけて逃げる時間、望む結果にたどり着けず同期の成功を喜べない時間、自分の現状以上に掛けられる期待に身動きが取れなくなり悩む時間、人の言葉が頭を反芻して眠れない時間。
情けない自分は次から次へと浮き出てきて、それでも1日2回練習はやってきて、もうどうしようもなくなる瞬間が沢山ありました。
自分と向き合おうとすればするほど、苦しむ時間は長くなっていき、結果が出ても全く相応の喜びを感じられなくなっていました。
それでも、自分と一番長く人生を共にするのは他でもない自分ということは誰しも一緒です。僕はこの4年間、自分と向き合う事からは逃げずにやってきたと胸を張ります。
これが僕の誇りです。
その中で僕が得た大きな学びを2つ紹介させてください。
・「自分の信念を貫くこと」
2年の夏、僕はどうしても対校に乗りたいと思い、圧倒的に練習してやろうと決めました。
朝練の後、バイクのインターバルを50セット、午後練の後にはエルゴメニュー、その後周走が入る日もありましたし、体幹も一日も欠かさずに続けました。
そしてこのメニューの毎回で、冗談抜きで1mmも妥協無しでベストを出そうとアタックし続けました。戸田の誰よりも練習している自信があったしこれは間違っていないはずです。当然エルゴではベストが出ました。水上選考でもコロナで寮が閉鎖されて打ち切られるまで、僅かな差でしたが勝ち進んでいました。
それでも、大人や対校エイトの方々が選んだのは僕ではありませんでした。
大きすぎる挫折でした。しかしその当時、一時的な悔しさや苦痛はあったものの、誰かを恨んだりするということはなく、自分に何が足りなかったのかを考えることに頭が自然とシフトしていきました。
人は自分で心から納得できるような行動をすれば、自分の不幸を吹聴し、他人に責を帰するという事は自然となくなり、自分に何が足りていないのかを考えるようになるようです。
だからこそ自分の信念は大切なのだと、僕は考えます。
・「すべての事には理由がある」
誰しもこんなこと言ったことがあると思います。
「TTでミスした」「ここには勝てるはずだった」「自分の方が漕げているはずだ」
僕はこういうのが大嫌いです。
ミスが出るのはボートを安定させることに妥協してきた証拠だし、ここ一番で力を出せない練習を積んできたのも自分、上手くても他の人が力を発揮できないような底力のない船を作ってきたのもまた自分です。
僕はこれらの根底には「クルーと信頼しあっているか」が関わっていると思います。
試合前の1週間や船が進んでいる時、表面的に塗り固めた信頼はレース中あっけなく剥がれます。
大事なのは、いかに苦しい時に全員で声を出して踏ん張ったか、誰かに責任を押し付けるのではなく全員で改善していくクルミができたか、どれだけ勇気を出してクルーを励ましてきたか。ここ一番で力を発揮してくれるのは、この真の信頼のみです。
今書いた2つのこと、それに共通するのは自分に目を向け続けることの大切さです。
不運、理不尽、逆に幸運、どんなことにでも必ず、必ず理由があって意味を見出せます。
でもそこで不満を垂れ、他人に理由を求め、擦り付け、必然を偶然と切り捨てた瞬間、その必然を掴む力、即ち「運命力」を得るチャンスは二度とやってきません。
ボート部で生きる以上、たくさんの悩みがあるはずです。
極限に追い込まれ負の感情に飲み込まれるボートへのストレス、プライベートが確保されない日々へのストレス。たかだか20歳程度の人間が常に時間を共にするわけなので、沢山の未熟な出来事に出会い、そんな時に限って自分の嫌な面が顔を覗かせます。
「自分は悪くない」「自分は努力している」「自分はできている」……
そんな感情に気づいたとき、自分に目を向けてください。間違いなくまだ自分に足りないもの、そして出来ることがあるはずです。
最後のレース、インカレで戦いきる気力がもうどこにも残っていませんでした。
でもオッ盾に向かって一緒に頑張ってくれたクルーの9人(怪我人含む)には、僕が4年間考えて出したこの結論を、沢山助けられながら、余すところなく伝えたつもりです。
入部した時に、ホームページの部員紹介に書いた目標。
「苦しい時に声を出して鼓舞できる人間になる」
最後の最後に少しでも近づけたでしょうか。答えは9人の今後の姿が教えてくれるだろうと密かに期待しています。
最後になりましたが、
136期の皆!陰ながら応援しています!
早慶戦の勝利、日本一、ぜひぜひ僕たちに見せてください。
でもそんなことより、皆が自分の目指す姿に少しでも近づいて引退の日を迎える事を願っています。
ついでに暇な時は、浅見と岸本の世話よろしく頼みます!
ではでは~👏
135期 神代 泰生