野猿との我が闘争
長野県北部は野生動物の宝庫ですね。ここ、信州高山村では、特に猿!散歩していて一番よく見かける野生動物。この地域は、人口密度は低いが、「猿口密度」はかなり高い。
日本人よりもむしろ外国人によく知られている地獄谷野猿公苑(例の温泉に入る猿達がいるところ)は、私の所から車で小一時間、29 km 先のところにある。だが、地図で見ると、その29 km はのの字を描くようにぐるりと回り込んで移動するルートであって、直線距離でみるならば、野猿公苑とわが庵の距離はわずか10 km にも満たない。猿口密度が高いのも納得がいくというものだ。
実は、わざわざ猿を探しに行かなくても、彼らの方から我が庵に押しかけてくる。最初の猿軍団の襲来は実に印象的だった。ある日、突然天井からものすごい騒音が鳴り響いた。「な、何なんだ?ポ、ポルターガイストか?」と正直思った。家を飛び出して、外から家を見ると、屋根の上は猿軍団に占拠されていた!
被害が騒音だけなら、「また、奴らか!うるさいエテ公どもだ!」で、済ますこともできるだろうが、残念ながら状況はそのような安易なものではない。彼らは私が庭に植えて手塩にかけて育てた果樹の実を食い荒らすのだ。
例えばりんご。5年前に紅玉の苗と、花粉樹としてアルプス乙女(ちびりんご)の苗を庭に植えた。近所の方が来て、「ここは標高800 M。リンゴは育ちませんよ。」とアドバイスしてくれた。別の方は「いやー、今は地球温暖化の時代だ。育つかもしれないよ。」と言ってくれた。ちびりんごの方は3年後には実をつけ始めた。だが紅玉は、実をつけるどころか、ほとんど花すら咲かなかった。「やはり標高800 M の呪いか?」などと思っていた。それがなんと、5年目の今年になって、ついに初めて、5〜6個の実を結実させた。だがそれはすべて、成熟するはるか以前に、猿に食われてしまった。同様に、今年初めて大量の実をつけたスモモも、ほんのわずかでも赤みが出てくると、即刻、猿の餌になってしまった。なんとか残っていた30個ほどのスモモを熟す前に摘み取って、家の中で熟させ、かろうじて口にすることができた。
今実行している猿対策は、音で脅すことだ。よーいどん!のおもちゃのピストル。さらには20連式の爆竹を用いている。おかげで猿の傍若無人な振る舞いは目に見えて減ったが、2〜3匹の小編成で、忍者のようにこっそり庭に忍び込むようになった。猿は知恵があるだけに厄介だ。来年は更にたくさんの紅玉やスモモが成るだろう。そこに餌があることを学習してしまった猿は必ずやってくるだろう。来年はわが庵の庭は、猿と人間様の熾烈な知恵比べの対決の場になることだろう。
田舎暮らしはある意味、刺激に満ちている。