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ベン・ジョンソンについて

今年もHCの有力候補としてあげられるデトロイトライオンズのOCベン・ジョンソンについて知っていることをまとめてみました。彼の経歴、強み、性格、HC職としての将来性について書いています。参考とした記事のリンクも張ってあるので興味のある方はそちらもご覧ください。

経歴

ボストンカレッジでのコーチ経験の後、2012年よりMIAでNFLでのコーチキャリアをスタート。2012年のMIAはHCジョー・フィルビン、OCマイク・シャーマン体制。この時代にダン・キャンベル(TEコーチ)、ザック・テイラー(QBコーチ)と共に過ごしている。2018年までMIAに在籍する間にビル・レイザー(2014-2015)、ザック・テイラー(2015)、アダム・ゲイス(2016-2018)などの複数のコーチ職の下で過ごしたため、明確なコーチツリーを見出すのは難しい。
ウェストコートオフェンスをベースにシャナハンの要素をパクっている取り込んでいるとも評される。

ジョンソン自身は多様なバックグラウンドを自身の強みと考えている。[1]
明確な師匠を持たないことでプレーデザインの柔軟性や、他者からの意見を取り入れる協調性に影響を与えたかもしれない。
2019年MIAがブライアン・フローレスのHC招聘に伴い、ジョンソンはMIAから解雇された後、HCマット・パトリシア、OCダレル・ベベル時代のデトロイトとアシスタントコーチで契約。両者との接点は不明で、なぜデトロイトに来たのかは謎で巡り合わせとしか言いようがない。

デトロイトはパトリシア解雇後の2021年にダン・キャンベルをHCとして採用。OCはアンソニー・リン。ジョンソンはOLコーチのハンク・フレイリーと共にチームに残留し、TEコーチとなる。ダンとのMIA時代のつながりもあって信頼はあったのかもしれない。

2021年シーズンの開幕8連敗、オフェンス大不振の責任を取る形で、プレーコールがOCアンソニー・リンからHCキャンベルに移る。同じタイミングでパスゲームコーディネーター職に昇格、事実上のOC就任。この前後に、OTデッカーが怪我から復帰、WRジョシュ・レイノルズ獲得、アモンラ・セントブラウンとゴフの関係成熟などが重なり、オフェンスがファン目線では目に見えて改善し、DET関係者ではジョンソンの評価は上がっていた。

2021年シーズン終了後に、リンが正式に離脱、ファン待望のジョンソンのOC正式就任。当時CINのHCだったザック・テイラーも自身のスタッフとして欲しがっていたらしい。[3]

OC就任はしたものの、2022年夏頃まではプレーコールは引き続きダンが行う可能性もあった。プレーコールを担うのは高校、カレッジ含めて初めてということを懸念されていたかもしれないが1年目から素晴らしい成績を残す。

  • 2022年 スコアリングオフェンス 5位

  • 2023年 スコアリングオフェンス 5位

  • 2024年 スコアリングオフェンス 1位

2022年シーズン終了後にはHC職候補としていくつかのチームから面談オファー。ノースカロライナ出身ということもあり、CARのオーナーがかなり熱心だったようだが、最終的にDETでのOC残留を決断。
2023年シーズン終了後もHC職候補としていくつかのチームから面談オファー。特にWASが熱心だった模様だが、再びOC残留を決断。この際、WASサイドからと思われる良からぬ噂(要求金額が過剰、面接態度が不遜等)を流された。
2024年も人気のHC候補として迎える。

特徴と強み

ジョンソンは明確なコーチングツリーを持たないため、システム的な特徴はあまりない。彼は良いゲームプランナーであり、良いプレイコーラーだが、プレーデザインの革新性はあまり重視していない。彼は真に創造的なプレーデザインは希少であり、プレーデザインの良し悪しよりも、どのプレーをどのタイミングでコールするかが重要であると考えている。
私の個人的な印象ですが、効果的なプレーデザインだが何らかの理由で埋もれてしまったプレーを掘り起こし、現代的にアレンジするようなDJのような仕事しているように見えるときがある。

ジョンソンの明確な強みとなる点が2点あり、それが「協調性」と「緻密さ」である。

協調性

パトリシア解雇後に確立したオーナーのシーラとチェアマンのスピールマン体制では、他者と協調して仕事をできるか"collaborative"が人事採用で最重視されるようになる。GMホームズもHCダンもこれを重視して採用されていて、選手、他のコーチ、スカウト等もこれに習っているものと思われ、その中でもジョンソンはよく人の話を聞き、意見を取り入れていると評さる。

As everyone on the coaching staff has said, Johnson continues to preach that the offensive framework has always been a collaborative processone was still working out where they fit in properly.

"コーチングスタッフの誰もが言っているように、ジョンソンはオフェンスの枠組みは常に共同作業だと繰り返し説いてきた。”[1]

プレイヤーの特性に合ったプレーを考えることに長けていて、最たるものがゴフとの関係性である。

  • ゴフとの話し合い

ゴフのキャリア復活のキーパーソンであるのは間違いない。OC1年目、ジョンソンはゴフと3日間一緒に部屋に閉じこもり、好きなコンセプト、プレー、戦略について熱心に話し合い、ゴフの長所と傾向に寄り添い、今日のオフェンスを構築し始めた。

  • プレーの採用

トップダウンでなく共同作業を好み、他者からの提案を聞く傾向がある。他のポジションコーチや若手アシスタントコーチからの意見を取り入れ、最近のトリックプレーもそうした意見から生まれている。以下のフェイクファンブル"Stumble bum"はアシスタントコーチからのアイデアを採用して実行したものだ。[4]

成功した後のこの喜びよう。


他にもJAXとの共同練習に参加していた審判からのアイデアも参考にした。[5]

緻密さ

プレーへの細部へのこだわりが強く、選手にも緻密さを要求する。協調性とも関連するが、オフェンスラインの選手たちに毎週お気に入りのプレーを提出させ、ゲームプランの構築に役立てている。どの選手も自分たちのやることすべてがいかに細部にこだわっているかをコメントするので、時間はかかるが、プレーをきちんと実行できる適切な選手がいれば、素晴らしい結果を生み出すことができる。[6]

ジョンソンのMIA時代の師匠であるフィルビンは、2022年シーズンにDALに在籍しており、DETと直接対決をした際に以下のコメントを残している。

"certainly Ben schematically is very, very good. But the impressive thing is they execute at a high level,"

「ベンのスキームは非常に良いが、一番印象的だったのはその実行力だ」[7]


JAMOは、ジョンソンが緻密さの重要性を常に強調しているとコメントしている。プロレベルでは自分のアスレチック能力だけに頼ることはできないと認め、ジョンソンの指摘に耳を傾けている。[8]
彼の飛躍には時間がかかったが、3年目に1000ヤードレシーブを達成した。

個人的に緻密さにこだわったプレーの例として以下を挙げる。ギブスのランプレーでは、右サイドに位置した3人のWR陣、14.アモンラ・セントブラウン、9.JAMO、17.ティム・パトリックがキレイにブロックしていることが分かる。

ダン・キャンベルの献身的なブロックを高く評価すること、TEコーチの経験が長いジョンソン、闘争心の塊であるセントブラウンの存在などもあり、DETのWR陣はTEのように激しいブロックを厭わず、その作業も精緻に行われる。強豪チームなら当然かもしれないが、上記のようなプレーがゲームを通して安定的に見られることは残念ながら以前のDETでは見られなかった。

緻密さ、細部へのこだわりは高い実行力"Execution"につながっていて、ダンのショーン・ペイトン譲りの積極的な4th Down Goも、これに恩恵を受けて成功している側面が大きい。

2015年のライオンズはスタフォード、カルビン・ジョンソンを擁しながらオフェンスが停滞した時期があり、当時のOCが"Execution"がダメだったと毎週のように敗者コメントを出していたが、ジョンソンはその"Execution"を高める術を知っているようだ。

性格

OC就任当初は物静かなイメージだった。2022年、ライオンズはハードノックスで特集されたが、AHCのステイリーやDCのグレンといった濃いコーチ陣の陰に隠れて、取り上げられる機会は少なかった。
選手によるコーディネーター職の人気投票では2023年シーズン時点でTOP5入りを逃している。ちなみにAGはDC部門で1位だった。


”静”のイメージが定着しているもののプレーの細部へのこだわりを持つため、練習では時に激しい態度を見せることもある。

モチベーターとしてダン・キャンベルのレベルを期待するのは難しい(ダンレベルの人間は希だと思うので同レベルを求めることが酷であるが)が、最近ではかなり熱い一面も見せるようになっている。以下は7-23で迎えたハーフタイム(HOU戦)の話。ジョンソンは「49ersとの試合の逆再現をするぞ」と選手に喝を入れた。(2023シーズンのCCで前半24-7から逆転負けした試合を引用)

HCでの成功可能性

ジョンソンの今の成功には、プレーコール能力の高さの他に、

  • 協調性を重視する組織風土

  • ダン・キャンベルの存在

  • プレーの実行能力が高い選手

  • 活きのよいアシスタントコーチ陣

なども大きな要因だったと思われる。もしジョンソンが新天地でHC職を得てDETと同じような道で成果を上げようとするならば、上記の要素が必要になるかもしれない。特にDIVA気質のプレーヤーが多い場合、うまく機能しない可能性がある。
ただし、ジョンソンは非常に賢明な人なので、全く違う道で成功の果実を得る可能性もある。

参考記事

https://www.prideofdetroit.com/2021/12/10/22828124/getting-to-know-detroit-lions-te-coach-ben-johnson-rising-influence [1]

https://www.detroitnews.com/story/sports/nfl/lions/2022/02/03/ben-johnson-helped-detroit-lions-find-their-rhythm/6653829001/ [2]

https://www.hogshaven.com/2024/1/30/24046837/daily-slop-30-jan-24-it-shouldnt-be-long-now-commanders-about-to-finalize-search-for-head-coach [3]

https://atozsports.com/nfl/detroit-lions-news/former-ohio-state-quarterback-has-become-a-big-part-of-the-detroit-lions-trick-play-filled-offense-and-could-find-himself-as-an-o-c-soon/ [4]

https://lionswire.usatoday.com/2023/09/03/lions-ben-johnson-creative-play-idea-from-official-during-practice/ [5]

https://www.patspulpit.com/2025/1/10/24339796/patriots-head-coach-profile-ben-johnson-lions [6]

https://www.espn.com/nfl/story/_/id/38508867/the-rise-detroit-lions-oc-ben-johnson [7]

https://www.mlive.com/lions/2025/01/lions-jameson-williams-discusses-growth-under-oc-ben-johnson.html  [8]

https://www.mlive.com/lions/2025/01/lions-jameson-williams-discusses-growth-under-oc-ben-johnson.html [9]

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