戦隊ショーで、連れ去られたら、少し大人になった話【後編】
【まずは、前編を読んでからどうぞ。】
舞台の進行状況を確認したレッドおじさんは、
「よし、行こかっ」と僕に声を掛け、僕の両脇を抱えて舞台上に颯爽と現れ、「少年は助け出したぞっ」っと言って、僕を客席へ戻してくれました。
その後、無事、ボス怪人お兄さんはレッドおじさんに倒され、ショーは終わりました。半ば放心状態の僕は、思ったのです。
僕は選ばれたんだ。最前列にいて、大人しくて、大人の事情がわかってくれる子どもとして、戦隊ショーの人質役という大事な役を任せられる人材として…
僕は、お母さんからもらった、お小遣いの百円で、いつも決まって乗る熊のゴーカートに乗った。屋上遊園地ではいつもゴーカートに乗ると決めている。そして、パンダよりも熊の方がスピードが出るので楽しめることも知っている。
素人はパンダに乗って失敗するのだ。
熊のゴーカートで風を切って走る僕を、小学校低学年の子が指さして、「あっ、怪人に連れ去られたお兄ちゃんだっ!」っと言った。僕は、ニヤリと笑い、少し大人になったことを実感した。
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