47章 眼とリウマチ疾患 The Eye and Rheumatic Diseases
キーポイント
ぶどう膜炎の症状は、眼球内の炎症部位や発症の時間経過によって大きく異なる。
強直性脊椎炎は、北米やヨーロッパでぶどう膜炎を伴うことが最も多い全身性リウマチ性疾患である。
生涯のうちに、強直性脊椎炎患者の約40%に急性前部ぶどう膜炎が発症する。
サルコイドーシスはしばしばぶどう膜炎として現れる。
網膜血管炎患者のほとんどは全身性血管炎を合併しない。
強膜炎患者の多くは、関節リウマチなどの全身疾患を合併している。
抗好中球細胞質抗体検査は、重症強膜炎患者のサブセットの同定に役立つ。
多発血管炎性肉芽腫症は、眼窩を最も頻繁に侵すリウマチ性疾患である。
前部虚血性視神経症は巨細胞性動脈炎の最も一般的な眼症状である。
視神経虚血による視力低下の患者のほとんどは動脈炎ではない。
はじめに
リウマチの治療を必要とする全身性炎症性疾患は、事実上すべて眼またはその周辺構造に影響を及ぼす。 表47.1には、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、脊椎関節症、多発血管炎性肉芽腫症や巨細胞性動脈炎( 側頭動脈炎としても知られる)を含む血管炎、強皮症、ベーチェット病、再発性多発性軟骨炎、皮膚筋炎の典型的な眼症状が示されている。本章では特定の眼球構造-ぶどう膜、角膜、眼窩、視神経-に焦点を当て、それぞれの炎症が自己免疫疾患や炎症性疾患とどのように関連しているかを説明する。
・SLEの綿花様白斑はSLEの網膜血管炎の中では、最多(78%)にみられるよう(BMC Rheumatol. 2021 Oct 1;5(1):34.)ですが、あまり遭遇しません。
Pearl: 前部ぶどう膜炎の視力低下は黄斑浮腫によるものが多い。
Comment: “An anterior uveitis, especially if it begins suddenly, is associated with redness, pain, and photophobia. Visual loss varies and often is due to macular edema”
・前部ぶどう膜炎は、特に突然発症した場合、発赤、疼痛、光視症を伴う。視力低下は、多くの場合、黄斑浮腫によるものである。
・中間ぶどう膜炎では、白血球が視軸に入り込むために浮遊物が生じるが、ほとんどは加齢性や硝子体内の他の変化によるものである。
・後部ぶどう膜炎はそれ自体では通常、痛みや発赤を生じない。
・前部ぶどう膜炎でも黄斑浮腫(後部に位置)がおこる機序は調べても出てきませんが、前眼部の炎症性の液性因子が後眼部に回り込むのでしょうか。眼科の先生に聞いたところ、ぶどう膜炎は前眼部炎症から始まることが多く、逆に眼底の炎症から始まるのは、感染や悪性リンパ腫の方が多い印象にあるようです。
黄斑浮腫
Pearl: 前部ぶどう膜炎は後部または中間部ぶどう膜炎よりも一般的である
Comment: “anterior uveitis is more common than posterior or intermediate uveitis.”
・北米では、ぶどう膜炎に最もよく合併する全身性疾患は強直性脊椎炎である。(Ophthalmology 111(3):491–500, 2004.)
・急性前部ぶどう膜炎に伴う脊椎関節炎は診断されないことが多い(Ophthalmology 123(8):1632–1636, 2016. Arthritis Rheum 52(1):269–274, 2005. PMID: 15641041 .)
・日本とは疫学が異なります。日本ではぶどう膜炎の背景疾患は、サルコイドーシス (8.9%)、ヘルペス性虹彩毛様体炎 (6.7%)、眼内リンパ腫 (5.5%)、フォークト・小柳・原田病 (4.8%)、未分類の急性前ブドウ膜炎 (4.6%)、ベーチェット病 ( 4.5%)、、の順ですが実は、unknownが最も多いです(40-50%)(Int Ophthalmol. 2021 Jul;41(7):2377-2388.)。
Pearl: ブドウ膜炎患者では、約30%で診断カテゴリーに分類できないブドウ膜炎を有している。(Arch Intern Med 149(5):1173–1176, 1989. )
Comment: “In most series of patients with uveitis, about 30% of patients have uveitis that defies placement within a diagnostic category”
・このような患者の多くは、眼外で見つけることが困難なサルコイドーシスである可能性がある。検査(例えば、主に眼サルコイドに対する血清アンジオテンシン変換酵素値やガリウムスキャン)の感度と特異度は不明である。
・眼科からぶどう膜炎で紹介されても背景疾患不明ですっていうこと結構ありますね。
ちなみに心サルコイドーシスのPETの感度は90%弱(Radiol Cardiothorac Imaging. 2020 Aug 27;2(4):e200347.)
Pearl: Band keratopathy「帯状角膜症」は、角膜の表層にカルシウムが沈着するもので、JIAに伴うぶどう膜炎の合併症としてよく知られており、頻度も高い。
Comment: “Band keratopathy, which is the deposition of calcium superficially in the cornea, is a well-known and frequent complication of this form of uveitis”
・Band keratopathy
Pearl: 自己炎症性疾患にもぶどう膜炎がみられる。
Comment: “Band keratopathy, which is the deposition of calcium superficially in the cornea, is a well-known and frequent complication of this form of uveitis”
・ブラウ症候群:皮膚と関節、眼に肉芽腫形成
・NOMID(CINCA):クリオピリン関連周期熱
・見たことないです。
日本人のブラウ症候群50例を対象にした研究では50人中38人に眼症状がみられ、うち7人は失明に至った。(Ann Rheum Dis. 2020 Nov;79(11):1492-1499.)
Pearl: 目の充血が痛み、羞明、視力変化を伴う場合は、眼科医に紹介すべきである。
Comment: “A rheumatologist should refer patients with red eyes to an oph- thalmologist if the problem is associated with pain, photophobia, or a change in visual acuity“.
・強膜炎に伴う角膜融解や角膜周辺部の菲薄化は、失明の可能性のある合併症である。
・強膜炎は痛みを伴い、何年も続くことが多い。これとは対照的に、上強膜炎はより表在性の病変を伴い、通常は一過性である。
・Scleral nodule 強膜結節
・この部位で脈絡膜炎が起きているようです。
・Scleromalacia 強膜軟化症
https://webeye.ophth.uiowa.edu/eyeforum/atlas/pages/scleromalacia-staphyloma-glaucoma.htm
Pearl: 強膜炎患者の約40%は全身疾患を合併している。この中で最も多いのは、GPAとRAである。
Comment: “About 40% of patients with scleritis have an associated systemic illness. The most common of such illnesses are limited granulomatosis with polyangiitis and rheumatoid arthritis. “
・強膜炎または上強膜炎の日本人128人を対象にした研究。30% は全身疾患を伴う合併症を患っていた(ANCA 関連血管炎の患者 10 名と関節リウマチの 8 名を含む)。のちのちAAVを発症することもあるようです。 Jpn J Ophthalmol (IF: 2.45; Q3). 2019 Sep;63(5):417-424.
・ぶどう膜炎の活動性と関節炎はパラレルではないことが多い(Arthritis Rheum. 1986 Jun;29(6):797-800.)
Pearl: 痛風による強膜炎もある
Comment: “Tophaceous gout also has been reported as an unusual cause of scleritis.“
・痛風発作と関連して出ることがあるようです。(Clinical Eye and Vision Care
Volume 8, Issue 3, September 1996, 155-163)
・強膜炎と関連する他の全身性疾患には、炎症性腸疾患、再発性多発性軟骨炎、巨細胞性動脈炎などの他の血管炎、強直性脊椎炎などがある。
Pearl: 視神経を最もよく侵す免疫介在性疾患は多発性硬化症である。
Comment: “The immune-mediated disease that most commonly affects the optic nerve is multiple sclerosis.“
・当初、視神経は乳頭浮腫を示すこともあるが、炎症が後球根に及んでいる場合は正常に見えることもある。数週間かけて、罹患した神経は通常蒼白になる。
・MSの5割はONを経験します。(Eye Brain. 2016; 8: 195–202.)
ON/AIONの鑑別
・GCAはAIONもしくはCRAOを呈する。
特にCRAOの眼底では、動脈血流が著明に減少し、桜色に染まる, “cherry red spot”
・非動脈炎性AION患者は、視神経杯が小さい傾向にある(Prog Retin Eye Res. 2009 Jan;28(1):34-62.)。この内部を視神経や網膜中心動脈が通る。
Pearl: 薬剤性ぶどう膜炎がある。
・リファブチン、静脈内投与ビスフォスフォネート、モキシフロキサシン、TNF阻害剤、イピルマブ
・HCQによる網膜毒性に関しては、タモキシフェン治療を併用している場合、または腎疾患がある場合は、投与量を減らすべきである。
・BP製剤静注によるぶどう膜炎に関しては、BP製剤の種類によらず強膜炎が誘発されました。そういった症例では軽度の発熱とインフルエンザ様の投与時反応がみられたことから、BP投与後の急性反応の一貫で眼炎症を起こした可能性が指摘されています。(South Med J. 2005 Jul;98(7):733-5.)
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