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人を操る心理トリガー6選

1.返報性(reciprocation)


一つ目は、「受けた恩は、返したくなる」という人間の心理に基づいたものである。つまり、他人から何かしら施しを受けたとき、人は恩義を感じ、それを返したいという気持ちを持つ傾向にあるのだ。例えば、スーパーである食品を試食し、美味しいという理由よりも無料で試させてもらったことを理由に購入した、募金活動前にささやかなギフト(たとえば一輪の花など)を先に渡されてしまい、寄付することになった……など、日々のシーンでも思い当たることは多いのではないだろうか。
登壇者のWheatland氏は、コンテンツマーケティングでこのアプローチを活かすには、企業側から出し惜しみせずターゲットが求めるコンテンツを提供し、「恩義」を感じさせることが重要だと語る。また、それが個人宛てにパーソナライズされたものであったり、相手が想定しているタイミングや情報量を上回るものであると、より深く「恩」を感じさせることができる。こちらから進んで何かを提供し、恩を感じさせるということは、それを返す何かをしなくてはいけないという気持ちにさせることであり、導きたい行動(購買や成約など)にターゲットが無意識に向かうような状況を整えてしまうということだ。
Wheatland氏は、コンテンツマーケティングでの活用例として無料のカウンセリングやセミナーへの招待・資料提供などを具体例として紹介。また、サンプル版の配布によって、製品・サービスに一度「無料」で触れてもらい、購入の意欲をより高める手法も、この心理を利用したものだと語った。

「お返し」の影響力


突然ですが、あなたはマーケット調査会社です。郵送アンケートをより高確率で返送してもらうにはどちらの方法が良いでしょうか?
①事前のプレゼントとして、5ドルの小切手を同封して送る
②「返送した後に50ドル送ります。」と書いた紙を同封する。
この実験の結果は①5ドルの圧勝に終わります。金額にして10倍もの差があるのに、です。
ポイントは先にもらっているかどうかです。これがお返しの影響力です。人は、何かを与えられた場合、それにお返しをするように教育を受けてきています。社会人として生きるために、プログラムされていると言ってもいいでしょう。そのルールを破ると、人間関係が難しくなります。そのため、お返しをしていない状態は、アブノーマルかつ、気持ち悪い状態なのです。
余計なお世話でも返したくなる愛がそこにある
このお返しの影響力の大きな特徴は、余計なお世話をされた場合でも、お返しをしたくなるという事です。
アメリカのある宗教団体が行った勧誘方法がまさにそれです。力を使っています。
お返しの影響力を取り入れた寄付金集めを行ったのです。道行く人に協会の小冊子や花を渡し、寄付金をお願いします。人によっては花を返そうとしますが、「いいえ、これは私たちからのプレゼントですから」と受け取りません。すると、余計なお世話でも、やはり「返さなくては」という意識が働きます。結果、その宗教は急成長しました

お返しの影響力は仕掛ける側がコントロールできる


ここから言えることは、
お返しの影響力は仕掛ける側が有利という事です。
余計なお世話でも人は恩義を感じます。つまり、何を渡して、何を要求するかは仕掛ける側が自由に設定できるという事です。
上の例だと、まず、
何をプレゼントに使うか?
・花や協会の小冊子
あくまで何をプレゼントするか決めるのは仕掛ける側です。
何を要求するか?
・寄付金
これも、仕掛ける側が、寄付金を見返りにする事を要求できます。
仕掛ける側のポイント
ポイントは、「花をあげるから、寄付金を下さい」という「交換」では無いという事。
「あなたが寄付する、しないに関わらず、まずお花をプレゼントします。これは単純にプレゼントなんです。」
「その後、もしよければ寄付をお願いします。」
↑これが重要です。プレゼントについては、なんの下心もなく行っている体(てい)。そして、プレゼントをもらったそこのあなた、どうしますか?という事なんです。
最初の例は交換による同時進行の話です。2つ目は「先に」と「後に」という時間軸があります。
普段しれっと行われているお返しの影響力
ケース①売り子の女性
スーパーを歩いていると、売り子の女性が声をかけてきます。
「新商品のお菓子です。お一つどうぞ」
ついつい食べてしまいます。
その後、、、っ しまった!なんか買わないと悪い気が、、、・
ケース②銀行員の話
このブログを書いている渡慶次は、4年前まで銀行員をしていました。銀行では、取引の無い事業所に飛び込み営業もやってました。取引の無い事業所に対して、どのようにアプローチしていくべきでしょうか?それは、情報や知識やコネクションを提供する事です。なんとか世間話をするような間柄までこぎつけ、情報収集します。そこから、相手先に対してどのような貢献ができるか考え、提供します。
ここでは、相手に「先に」提供するのは「情報や知識」です。なんといってもタダなところがいいです。しかも、精度が高ければ相手先に貢献できます。その後こちらの要求としては、取引を始めてもらう事にあります。場合によっては大型の融資や預金を獲得する事ができます。まあ、簡単にはいきませんが(笑)
銀行員に限らず、営業職は、相手先に「情報」で貢献できればスムーズに入り込めます。あとは相手先に適度なお返しを求めていきます。
 

お返しの影響力、強烈なBパターン


これまでの内容が、人は「恩を着せられる」⇒「要求を断りにくくなる」という影響力について書きました。次はいわば、Bパターンについてです。
拒否させて譲歩のコンビネーション
恩義⇒要求のAパターンに対して、Bパターンは「拒否」⇒「譲歩」の流れをとります。ただし、どちらも相手に借りを作らせるというお返しの原理は同じです。
アメリカで、ニクソン大統領を辞任に追い込む事になった事件があります。支持率も高く、再選を確実視されていました。
しかし再選対策委員会を取り仕切っていたリディという男の計画を実行してしまい、失敗。辞任に追い込まれました。リディの計画は、
敵対する民主党の本部に侵入⇒盗聴器を仕掛け、相手議員を脅迫。場合によっては、誘拐を行うための組織を編成する。というものでした。
この計画はかなりの危険性があります。そして25万ドルという経費のかかる計画でした。しかも、元々リディはあまり仕事のできる男ではないという評価でした。ではなぜ、そんな男の計画を委員会は承認してしまったのか?
実は、最初リディから提案された計画は100万ドルの経費がかかる、めちゃくちゃ規模の大きい計画でした。そこで、委員会は計画を「拒否」しました。しかし、リディはその後「譲歩」します。
「では、50万ドルに金額を落とした、この計画ではどうか?」
委員会は拒否。
「わかった、さらに削ろう。25万ドルでできる範囲でやる。」
、、、、、25万ドルは当時でもかなりの金額です。それでも、最初の金額の4分の1になったため、「じゃあまあ、いいか」という空気が委員会に流れてしまったのです。計画の会合に3回目以降から参加したメンバーが一人だけいました。その一人は最後まで計画に反対していたそうです。これも、「100万ドルから始まっている」という刷り込みが無かった事で冷静な判断ができていたという事でしょう。計画はあっさり失敗しました。委員会では「我々はどうしてこんなに馬鹿な話に乗ってしまったんだろう」という、あまりにも大きなミスを後悔する事になりました。
拒否⇒譲歩を成功させる、「要求下がった感」
このように、拒否⇒譲歩のコンビネーションは大統領を辞任に追い込む企画を議会で通してしまいました。相手に「借りを返したくさせる」というロジックはAパターンと同じです。
「100万ドルを断ってしまったし、その後50万ドルも断った。25万ドルなら、相手も譲歩しているし、この辺で手を打っておくか。」
ポイントは要求下がった感が出ているかどうかです。先ほど書いたように、25万ドルは大金です。しかし、最初の要求より下がったように感じるため、目眩ましになってます。
最初より要求が下がった感が大事です。
「要求下がった感」の生み出すもう一つの力
先ほど書いたように、この方法は実際の要求の大きさを忘れさせる力があります。さらにもう一つの力が、相手に満足感を与えられるという事です。自分が拒否した事で相手が譲歩案を出してきた⇒自分の意思通りに交渉がまとまった⇒満足感 につながるのです。交渉結果に満足感があると、次の交渉にもつながります。
 

2.希少性(scarcity)


「限られたものほど、欲しくなる」という心理を利用するというアプローチも有効だ。“モノ”の希少性を高める方法として、個数限定、シーズン限定、地域限定などの表現方法を思い浮かべる人も多いだろう。ECサイトの時間限定のセールなども、このアプローチの典型といえる。また、希少性を高める方法としては、ターゲットの“権限”を限定するという手法もある。会員登録した人にのみ展開される特典を訴求し、プレミア感を増したり、ターゲットとの関係性を深化させたりということが可能だ。
Wheatland氏が強調していたのは、商品特長ではなく、提供方法によって“特別感”を演出することと、行動しなかったときに失うものを想像させることで希少性をさらに感じさせるということ。つまり、希少性が商品自体にない場合でも、どのように提供するかによってそれを生み出すことができるというのだ。

3.権威(authority)


「肩書きや経験などの“権威”を持つ者に対して、人は信頼を置く」ことから、権威づけを活用したアプローチも人の行動に大きな力を発揮する武器である。その分野において知名度の高い組織や発言力のある人などの意見に従うのは、まさに権威を求める人々の心を刺激した結果と言えるだろう。
権威がいかに人の判断に影響するかの裏づけとしてセミナーで紹介されていたのは、ある不動産物件の成約率を分析したデータだ。郊外の不動産物件のうち、専門家の推奨付き物件は、営業マンの推奨のみで紹介された物件に比べ、見学の予約率が20%増、成約率は15%増を実現したという。
このアプローチをマーケティングに活用する際に、押さえておかねばならない重要なポイントは、ターゲットにとって信頼できる「権威」とは誰なのかを中心に考えることだ、とWheatland氏は主張。ターゲットが誰に憧れ、誰を信頼しているのかを正確に理解することができれば、「ターゲットにとって権威のある人物像」から推奨のコメントをもらう、プロジェクトに参画してもらうなど、力を借りた権威付けも活用することができるだろう。

4.コミットメントと一貫性(consistency and commitment) 


人は誰しも「表明した約束を守ろうとする」気持ちを持っている。なぜなら、社会では一貫性のある人物が評価される傾向があるため、自分が決めたことを口にしたり、書面に残したりすると、それを守ろうとする気持ちが強くなるのだ。例えば、ボランティアについてのアンケートで「今後やりたいと思う」と答えた人ほど、実際にボランティアを依頼された際に参加する傾向にあったという調査データがある。自分の意志でコミットしたものに対して、一貫した姿勢を保とうとする――この習性をうまく活用した武器が「コミットメントと一貫性」というアプローチだ。
マーケティングでこのアプローチを取り入れる際には、最初にコミットさせる内容は小さなアクションである方が結果につながりやすい、とセミナーでは紹介された。前例でいうと、アンケートに答えることは、ボランティア活動に参加することよりもはるかにハードルが低い。しかし、そこでボランティアに対する意欲を示してしまったからには、実際に参加することを求められた際には協力せざるを得ない、とターゲットは感じるようになる。つまり、方向性が一貫していれば、要求する行動の難易度が徐々に上がっても、ターゲットはその姿勢を保つためにコミットし続ける傾向にあるのだ。この特性を活かし、よりレベルの高い内容へと移行させ、購買プロセスの中でのステップアップを図る――そして最終的に導きたいコンバージョンへとつなげていくのだ。
 
 
人間は合理性を明らかに欠くと分かっていても、一貫したくなる生き物なのです。
あるところに、ティムとセーラーという若いカップルがいました。ティムは大酒飲みで、結婚する気もないようです。セーラーは愛想をつかし、別の男性と付き合いだします。セーラーが結婚を決意した頃、ティムから連絡がきます。「もう一度やり直さないか」しかし、セーラーは断ります。「結婚したっていい」とティムは粘ります。セーラーは「新しい相手の方がいい」と突き放します。とうとうティムは「酒をやめる」と言い出しました。そこまで言うなら、とセーラーは婚約を破棄し、ティムとやり直し、一緒に暮らし出します。
一ヶ月もしないうちに、ティムは「やっぱり酒をやめる必要は無いと思う」と言い出しました。その一ヶ月後には「もう少し様子を見てから結婚するべきだ」と言うようになりました。そしてそれから2年がたちました。ティムとセーラーはいまだに付き合っています。ティムは相変わらず大酒飲みで、結婚の計画もありません。しかし、セーラーは以前にも増してティムに夢中です。

選択を迫られた事によって、私にはティムしかいない事がわかった。そうセーラーは言っています。つまり、恋人を棄ててティムと一緒になったにも関わらず、事前の条件が何も満たされなかったにも関わらず、セーラーは以前よりも幸せになったのです。
著者はこのように分析しています。
「私たちは、自分のこれまでの行動や決定と一貫した思考や信念を持ち続けたいと思うあまり、ときには自分をだますことさえあります。」
我々は、一度自分で選択した物事に対して、かなり執着しているという事でしょう。また前述したように、一貫性を保つことで、考える事から逃げているとも言えます。
 

ある玩具メーカーの話


玩具メーカーの儲け時はいつごろでしょうか?そうです。クリスマスです。逆にいえば、どうしてもクリスマスにピークがきて、その後反動がきます。メーカー側からすれば、年末を過ぎても売れている状態が理想ですよね? そのためにはどうすればいいでしょう?それにはクリスマスの後に子供たちがおもちゃをもっと欲しがるようにすることではありません。年末でお金を使いはたしてしまった親が子供に、別のおもちゃを買ってあげようという気分にさせることです。
、、、、、、、かなりハードルの高い行動ですよね?
そこで玩具メーカーはどうしたか?
①クリスマス前に、特定のおもちゃのコマーシャルを大々的に行う
②そうすると、親は子供とクリスマスに、このおもちゃを買うことを約束してしまう。
③しかーし!メーカーはそのおもちゃを店に少ししか卸さない。
④クリスマス前に店に行っても、当然目当てのおもちゃは売り切れ。しかし、クリスマスなので、別のおもちゃは買わなきゃいけない。メーカーは代用品をたっぷり卸しておく。
⑤年明けに、再度コマーシャルを流し始める。そうすると、子供はさらにそのおもちゃが欲しくなる。「買うって約束したじゃないか」と親にぐずる。
⑥親は自分の言葉を裏切りたくない心理が働き、渋々お店に買いに行く。
、、、、、、汚いっ!(笑)なんてやつらだって感じですよね?ただ、法律を犯しているわけではありません。※ただし、やりすぎて不正広告として罰金を払う事になった会社もあるそうです。
一貫性の力が働く条件
2つの事例を紹介しました。では、どのような状況で、一貫性の力は働くのでしょうか。
①約束
②自分の行動や表明
③自己イメージや役割の認識
先ほどのおもちゃのエピソードが、①の約束の力が働いたものでした。誰かと約束をした後、それを破棄する事は一貫したいという欲求に反します。もう一つ前のセーラーの話は、②の行動と表明になります。ティムを選んだ事で、その事に縛られる事になりました。
約束、行動、表明。もしくは「あなたって、〇〇な人だよね」と言われる事によって、自己イメージを認識する事によって始まります。
以下本書より抜粋
承諾を引き出す上で鍵となるのは、最初のコミットメントを確保することである。コミットメント(つまり、自分の意見を言ったり、立場を明確にすること)をしてしまうと、人はコミットメントに合致した要求を受け入れやすくなる。したがって、多くの丸め込みのプロは、後でやらせようとしている行動と一環するような立場を最初に取らせようとする。しかし、すべてのコミットメントが必ず効果を発揮するわけではない。コミットメントが最も効果的に働くのは、行動を含み、周囲に知られ、努力を要し、自分の意思でやったと考えられる時である。

仕掛ける側のシンプルな方法


先に挙げたおもちゃ屋よりも、かなりシンプルな方法です。エジプトの元大統領の手口です。交渉になる前に相手にこう言うそうです。
「あなたたちの国民は協調性が高く、公正だと広く知られている」
すると、相手は気分を良くするだけではなく、このイメージを守りたくなり、交渉に積極的に進める効果がありました。まず、相手に守るべき高評価を与え、それによって自身の利益と合致した行動を取らせるという手法です。他者が自分に持っている、高いイメージを守りたくなるのです。
飲食店様の予約でちょっと使える話
よく飲食店で問題になるのが、「予約したお客さんが連絡無しにキャンセルする問題」です。一貫性の力を使って解決したケースが紹介されていました。
予約の電話を受けた時、「変更がありましたらご連絡下さい」と言うことをやめさせました。代わりに「変更がありましたらご連絡いただけますか?」と相手に聞き、答えを待つようにさせました。ポイントは聞いた後に相手の回答を待つことです。自分で「わかりました」と答えた事で一貫性の力が働くのです。これによってお店に現れないお客さんが3割から1割に減ったそうです。
2つのケースの重要なところは、相手に言わせる、もしくは、相手に守るべきイメージを与えるということです。
根本的なところはシンプルなので、応用が効きそうです。
努力して獲得したものは尊いと思いがち
あるアメリカのハイスクールで、社交グループに入会する際、「地獄週間」と呼ばれる入会儀式があるそうです。入会希望者は、年長のメンバーが考えぬいた、限界ギリギリの試練を与えられます。体力、精神力、羞恥心の限界を試すためのものです。実際に死人が出るケースもあります。
この試練は、単純に暴力を振るわれる事も含みます。両手を頭の後ろに組み、先輩に腹を殴られます。なにがあっても両手を解く事は許されません。また、雪山に連れていかれ、薄着で登山を命じられたり、地下室に閉じ込められて、飢餓状態にさせられたりしました。
たびたび死人や重傷者が出るために、それらを禁止しようと行政が動きますが、この儀式はしぶとく残っています。秘密裏に行われているのです。
新人いじめが無くならない理由
なぜそこまで新人いじめが大事なのか?それは、
「何かを得るために大変な困難や苦痛を経験した人は、苦労なく得た人よりも、得たものの価値を高く感じるようになる」という事です。つまり、グループに加入する時に壮絶な苦しみを経た人は、「このグループは最高だー!あれも、これも素晴らしいっ。 俺、凄いがんばる!」となるのです。つまり、この儀式を行う事で、忠実で献身的なメンバーが増え、強力な集団になるのです。
この社交グループは、普段は公共奉仕活動をしています。町の清掃や病院のボランティアです。そのため、加入儀式も「公共奉仕活動を何十時間もさせる」とかの方が理にかなっていそうです。しかしあえてそうしません。先の例に挙げたように、人は自分で決めた事に一貫性を持ちます。公共奉仕活動をさせてしまうと、公共の利益のためにやったと思ってしまいます。あくまで自分の意思でやっていると思わせなければならないのです。
相手をコントロールするには、魅力的なご褒美で釣ったり、強く脅してはいけないという事です。いかに相手に「自分で決めた。自分で苦しみに耐え抜いた」と思わせられるかが重要です。
 

承諾⇒はしごを外すテクニック


次は承諾先取り法というテクニックです。まず相手にとって有利な条件を提示し、喜んで買うという決定を誘い出します。営業に置き換えると簡単ですよね?原価ギリギリの見積もりや、豪華なおまけを用意しておくのです。そして決定がなされてから契約が完了するまでのあいだに、もともと用意していた有利な条件を巧みに取り除きます。一番最初のティムとセーラーの話もそうでした。「結婚」と「禁酒」の条件を出して、相手に別の男性との結婚をやめさせ、元のサヤに収まりました。ティムを選ぶという決定のあと、約束が守られなかったにも関わらず、セーラーは前よりずっとティムに夢中になりました。
「与えておいて決心させ、取り上げる」のです。
自動車ディーラーが使った一貫性の力
まずお客さんにとても有利な、競合店と比べて400ドルも安い値段を提示します。しかし、本当にそのままの値段で売るわけではありません。安い価格を提示する唯一の目的は、客に車を買う決心をさせる事です。いったん決定させた後、今度は様々な方法で、その車に対する客のコミットメントの感覚を強めていきます。何度も、自分が買うと決めている事を確認させられるのです。何枚もの契約書に記入させ、長期ローンの条件を取りまとめ、ときには「どんな車かお分かりになりますし、ご近所や職場の方々に見せることもできますから」と言って、一日試乗するように提案します。たいていの場合、このねちっこい確認作業で、買う側はさまざまな理由を考え出して、自分の選択を後押しします。「燃費もいいし、エクステリアも格好いいし、加速もスムーズじゃないかしら」となるわけです。自分の投資を正当化しようとします。
そこから、第2段階です。
計算上のミスが発見されたりします。例えば、「すみません~クーラーの値段を忘れてました~クーラー必要ですか?必要なら400ドル上乗せになります~」とやるわけです。クーラー、絶対必要です(笑)
もしくは、「やっぱり上司から赤字になると怒られまして、、、」とやります。車を手に入れるにはあと400ドル上乗せすればいいだけです。もう選んでしまっているという意識から、「上乗せしても、他の店の値段と同じだし、燃費もいいし、エクステリアも格好いいし、加速もスムーズだし、もういいじゃん400ドル払おう」となるわけです。
 
 

5.好意(liking)


「好きな人に同意したくなる」気持ちも、人の心を大きく動かす。仲の良い友人のおすすめ商品を購入したり、お気に入りの店員からたくさんの商品を買ってしまうなど、好意があったからその行動をとったというよう経験がある人は多いのではないだろうか。つまりは、ターゲットに「好意」を抱かせるようなアプローチも有効な影響力の武器なのである。
チャルディーニ氏によると、人が好意を抱く理由には「自分に似ている」「自分を褒めてくれる」「同じゴールを目指す仲間である」という3つがあるという。Wheatland氏によると、これら3つのポイントは、コンテンツの中でも特にSNS上で展開されるものにおいて非常に重要な要素だという。なぜなら、インターネットの発展により、ターゲットがさまざまなプラットフォームで人や企業とつながりを持ち、能動的に「共感する」「好きになる」場が拡大しているからだ。つまり、“人と人”だけでなく、“人と企業”の間においても「好感」や「共感」を表明できる場が増えている。そのような状況で先ほど述べた3つのポイントを押さえた“好ましい”コンテンツを提供することができれば、ターゲットとポジティブな関係を構築することができるだろう。
 

6.社会的証明(social proof)


「周囲の動きに同調したくなる気持ち」も、実は人の行動を大きく左右する要素だ。たとえば、街頭で多くの人が空を見上げていたら、その場に遭遇した人のほとんどは同じように空を見上げる、とチャルディーニの書籍の中で紹介されている。これは「みんながやっているからには何か理由や価値があるに違いない」という心理が働き、他者の行為を自分の行為に反映させる傾向があるためである。この心理を突いたアプローチが、最後の「影響力の武器」だ。
マーケティングにおいても頻繁にこのアプローチは活用されている。「売上No.1」を謳う、ユーザーの体験談を紹介する、などがその一例だ。この心理は一般消費者だけではなく、BtoBマーケティングにおいても活用が可能だ。例えば、どのような企業をクライアントに持つのかを公表することで、多くの企業と取引しているということをアピールし、信頼性やサービスの安定感を創出することができる。多くの人から支持されていることを強調することは、社会的に信頼できるという安心感を生みだすのだ。
 
社会的証明と書くと、なんだか難しい気がしますが、そういう事ではありません。要は「人はなぜ集団に流されてしまうのか」というテーマだという事です。それを社会的証明と言っています。
集団に流される時は2つの条件を満たしている時です。それが「類似性」と「非日常性」です。まずは、集団の影響力の強力っぷりから説明し、そのための条件である2つについて書いていきます(^^)
集団的圧力の作用・代表例ドリフ笑い
テレビ番組で演出として使われる録音された笑いが好きか嫌いか?
この本の著者が周りの人たちに聞いたところ、誰もが批判的でした。笑い声を絶え間なく流しつづけ、わざとらしく場を盛り上げているテレビにみんな批判的です。
それなのになぜ、テレビ番組の制作者たちは、あの笑い声をこれほど頻繁に使うのか?
答えは、単純かつ合理的。
きちんとした実験から、笑い声に効果がある事がはっきりしているからです。
笑い声があるほうが、観客の笑いの回数、長さがアップするという実験結果があるそうです。
ジョークがつまらない時ほど効果がアップするとの事(笑)
 

200年前からあったサクラという仕事


200年前のオペラ鑑賞では、当然のようにサクラを使っていました。泣きのスペシャリスト、泣き師。合図があれば、すぐに大声で泣けるという特殊能力の持ち主です。叫び屋は合図があると興奮した声で、「アンコール」と絶叫できました。さらに、勉強になるのは、叫び屋たち自身が自分達がサクラである事を隠そうともしない事です。ちょうどドリフ笑いと同じであからさまです。それどころか、サクラ派遣会社は新聞紙に広告を載せていました。
<サクラ値段表>
登場の時の喝采   1リラ
演技中の強烈な喝采 15リラ
いかなる犠牲もいとわない「アンコール」 50リラ
ものすごい大歓声 要相談
ちっとも隠す気がありません(笑) 
 

無意識に笑わせる事までできてしまう影響力


こういう歴史やデータから、番組制作者のやっている事は筋が通っている事になります。みんなが笑っているので、自分が笑う事も正しい事だと反応してしまうのです。
偽物の笑いだとわかっているはずなのに、影響を受けてしまうという事です。ただし、2016年になった現在は、ドリフ笑いを使っているテレビを久しく見てません。もうちょっと進化していて、トーク番組なんかでスタジオに観客を入れ、実際の笑い声を撮っています。本番が始まる前に、前説と言われる、観客を温める漫才、漫談を行い、本番でより笑い声を撮れるように工夫しています。リアルな笑い声を聞かされる事で、テレビの前の人も笑いやすくなります。影響を無意識に受けてしまう集団の影響力は、ある行動をする人が多いほど、それが正しい行動だと判断します。実際、僕たちは日ごろから多くの小さな判断と行動を繰り返しています。そのため「みんながやってるし、この選択でいいだろう」は、スピーディに行動できる考え方で、よく使いがちです。しかし、この方法を悪用する人に引っかかりやすくなります。
 

バーテンダーと教会の手口


海外の飲食店で「はチップを払うのが一般的です。バーテンダーはよく店を開ける前に何枚かのドル紙幣をチップ入れに混ぜておきます。それを前の晩の客が残していったチップに見せかけて、たたんだお金。つまり紙幣がバーにふさわしいチップだと印象づけます。教会の受付も、同じ理由から募金箱に前もってお金を入れておきますが、こうする事によって募金額が上がります。
広告主は、製品の「伸び率が最高」とか「一番の売れ行き」といった事を強調したがります。こうすれば、製品の良さを直接わからせる必要が無いからです。多くの人がそう考えていると伝えれば、それが買う理由になります。
セールスコンサルタントは、新米セールスマンに、この原理をまず教えます。「自分で何を買うか決められる人は全体のわずか5%、残りの95%は他人のやり方を真似する人たちです。ですから、私たちがあらゆる証拠を提供して人々を説得しようとしても、他人の行動には適わないのです。」
 

子供の対人恐怖症を治すには


集団の影響力は、子供にも非常に有効です。ある心理学者が行った研究では、内気な子供の対人恐怖症を治すために映画を見せるという手法を使っています。小さいころにクラスの輪に溶け込めず、長期に渡り孤立化。そういう子供はどこにでもいます。成人しても社会的に快適な生き方がしにくくなるのではとその心理学者は心配しました。そして、この行動パターンを一辺させるために、ある映画を作りました。
どの場面も、まず一人ぼっちの子供が、何か集団で行動しているほかの子供たちを眺めるところから始まり、やがて積極的にその活動に参加。最後にはみんな楽しそうにしているところで終わります。この心理学者は、四つの幼稚園から選りすぐりの内気な子に対して、映画を見せました。その影響は実に強烈でした。引っ込み事案だった子供が普通の子供と同じように、よく仲間と交わるようになったのです。6週間後に様子を見に行くと、映画を見なかった子供は内気のままだったのに、対して、映画を見た子供はリーダーシップを取り始めていました。「ちょっと話ができすぎない?」と思いましたか?大丈夫です。僕もです。ただ、同じ年頃の同じ内気だった子が心を開いていく事でハッピーになっていくという過程を見せる事は凄く有効なようです。その理由はこれから書いていきます。ポイントは自分と似た人の影響を受けるという点です。
 

影響力を身につけた営業マンの話


ある聖書販売の営業マンがいました。売上を増やそうと、あれこれ試行錯誤していました。すでに商品を購入している客の名前を織り交ぜるようにしたところ、売上が伸びました。「お隣のジョンソンさんがこのセットを購入したいと思ったのは、子供たちに聖書の物語を読んであげたかったからでした」という具合にです。そのアプローチにしてから売上が62.3%もアップしたそうです。
しかし、その後さらに次の段階に到達します。
人の名前を使った事で、逆に売り損なったパターンを分析した事です。ある日、主婦に営業を行っていた際、その方は元々聖書に興味があったようです。人の名前を使わずとも契約できそうでした。そのときダメ押しとばかりに、「あなたの友人のメアリーとビル夫妻も買ってくれましたよ。」と言いました。しかし、「メアリーとビルも買ったの、、、、そうねじゃあ私も主人と相談してから買わなくちゃ」
似た人の名前だけを出す
夫婦の話をした事で、うかつにもすぐに買わなくていい理由を与えていたのです。「まずは主人と相談しなくちゃ」
しかし、もしも彼女と似た主婦が何人も本を買っていたら、彼女も買っていたはず。
そこから、この営業マンはさらにアプローチを改善しました。主婦に営業する時は、ほかの主婦の名前だけを。男性に売り込みをかける時は男性の名前だけを。
この営業マンの売上は119.67%も伸びたとの事です。倍以上ですね。
 

集団の影響力の正体と条件


集団の影響力に人はなぜ陥ってしまうのか?その原因の一つに失敗しても、「だって他の人も同じ事してたし、、、、」という言い訳をしやすいという事です。なにかを判断した時に伴うはずの責任が薄まったような錯覚があります。
キャサリン事件~目撃者が多いほうが助からない?~
1964年、ニューヨークでキャサリンという女性が殺害されるという事件がありました。
仕事帰りに暴漢に襲われ、アパートの前殺害されました。問題は大勢の人の前で殺人が行われていた事でした。犯人は35分のあいだに、三回、路上で逃げ惑うキャサリンを襲い、ついにナイフで殺害してしまいました。信じられないことに30人も住んでいるアパートの住人は窓から見ているだけで、通報すらしませんでした。実際窓の明かりがついた時点で犯人はいったん逃げたそうです。しかし、誰も助けに来ない上、警察がくるような雰囲気もないので、すぐに戻ってきてキャサリンを殺害しました。これは、当時大きなニュースになりました。殺人がではなく、「なぜ30人見ていたのに、助けられなかったのか?」という点で衝撃を与えました。
、、、、、、、、、なぜだと思いますか?
ポイントは30人も見ていた「のに」ではなく、30人も見ていた「ので」通報しなかったという事です。助けられそうな人がほかに何人かいれば、一人一人の個人的な責任は少なくなると錯覚します。「たぶん誰かが、助けるか、助けを呼ぶだろう」と考えるので、結局誰も助けないという結果になるのです。つまり、責任が薄まる事で集団に流されてしまうという事です。
あなたが集団に流されやすいのはどういう状況か
責任が薄まるという意識が集団に流される心理を生むという事を書きました。ただ、この事件にはもっと重要なポイントがありました。非日常で特殊な状況下である時、人は集団に流されやすくなるのです。多くの場合、緊急事態というのは、それが緊急事態だとはっきりわかるわけではありません。道に倒れている男性は、心臓発作を起こしたのかもしれないし、酔って眠っているだけかもしれません。となりの部屋が騒がしいのは、警察を呼ばなければならないような、暴行が行われているからかもしれませんし、たまたま派手に喧嘩しているだけかもしれません。そういう非日常的で不確実な状況の時、僕たちは周囲を見回して、他の人々の行動を参考にしようとします。それが自然な反応です。
ただ問題は、その出来事を見ている他の人々もやはり他の人を参考にしようとしているという事です。そのため、周りを見る事だけで何もしないという状況に陥ってしまいます。
 
どうしていたらキャサリンは助かったのか?
ここまで状況を分析してきてやっと、どうやったらキャサリンは助かっていたのか?という話ができます。まず、緊急事態だという事をはっきりと伝えなければなりません。意外と緊急時は悲鳴を上げるだけで、「助けて」という言葉は出てこないようです。「助けてほしい」事を伝えなければなりません。しかし、それを叫ぶだけでは不十分です。その他大勢に伝えるかたちになると、責任が薄まり、対処してもらえないかもしれません。そのような時、集団から一人を分離しなさい。という事になります。一人だけを見つめ、「そこの赤いポロシャツのあなた、助けて下さい。あと警察を呼んでください。」とはっきりと伝えます。そのような場合、効果的な援助を得られる確率が飛躍的に高まる事が、研究で明らかになっています。
 

まとめると類似性と非日常性が流されやすい心を育てる


集団の影響力は強力で、その効果が発揮されるのは①自分と似た集団である事(類似性)②日常とはかけ離れ、判断が難しい状況である事。(非日常性)
最後に、競馬場の話を書きたいと思います。類似性と非日常性のどちらの条件も満たしているエピソードです。
競馬のオッズは賭けられたお金によって決まります。ある馬に賭けられる額が多いほど、オッズが下がり、その馬で勝ったとしても配当金が減ります。競馬場はレースや賭けの戦略についてほとんど知識を持ちあわせていない人がたくさんやってきます。そのため、特に出走する馬のことをよく知らない場合など、単純に人気馬に賭けてしまうことが多いのです。電光掲示板に最新のオッズが刻々と表示されるので、客はそのときの人気馬がどれなのか、手に取るようにわかります。それでは集団の影響力を使ってどのように賭けるのか?

集団の影響力in競馬場


手口は至ってシンプルです。まず、勝ちそうだと思う馬を心の中で決めます。次に高いオッズ(例えば15倍)の勝つ見込みがほとんどない馬を選びます。売り場の窓口オープン時に勝ち目のない方の馬に100ドル賭けます。するとオッズが2倍程度の人気馬が一時的に出現します。そのとき集団の影響力が動きだします。どの馬に賭けようか迷っている人は、すでに投票を終えた人がどの馬に賭けたかを調べるために電光掲示板に目を向け、人気の馬に自分も賭けるのです。そうすると、その結果を掲示板で見た客がまたその人気馬に賭けるということになり、雪だるま式に増えていくことに。その後、売り場に戻り、最初から心に決めていた本命馬に大金を賭けます。この時点で最初に仕掛けた「作られた人気馬」の出現によって本命馬のオッズはずっと高くなっています。もし勝ったなら最初の100ドルの投資は何倍にもなって戻ってきます。
この話では、
出走馬に詳しくない人が競馬場に来ている事⇒非日常性 
同じように掲示板を見ている人がそれを頼りに判断していく⇒類似性

という構成になっています。
 


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