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居残りオオハクチョウ「越夏記」
〇帰らないハクチョウ
茨城県小美玉市の北西に池花池(いけばないけ)という溜池がある。
もうポンプ場もなく全く使われていない溜池であるが、冬になるとこの200m四方程度の池に多い年は150羽ものハクチョウが越冬する。
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しかし2024年の春は桜の花が散ったあとでも帰らない1家族がいた
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葉桜のなか帰らないハクチョウたち
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1羽は相変わらず池に残っている
桜が満開になった時点で12羽、その後6羽が桜が散って葉桜になる4月18日まで確認できた。
まさかもう帰るだろうと思った4月20日には、幼鳥1羽を残して他のハクチョウは姿を消していた。
このハクチョウは4月26日にもいて北帰行する様子もなかった。
〇1羽だけの不安な夏
ゴールデンウィークが終わるころ、ただ1羽残ったオオハクチョウの幼鳥は人から離れた場所にいた。
この池はこれから水面をスイレンが覆いつくしてしまう。ハクチョウの泳ぐスペースはなくなってしまうのではないかと心配になったが、何もすることはできない。
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まだ顔や首の毛の色が灰色がかっている
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翼の状態から飛べないようである。家族たちもギリギリまで待ったが飛べないので置いて行ってしまったのだろう。
このように飛べなくなった居残りハクチョウは北日本を中心に毎年何羽かいるが、ここでは初めてのことでる。
本来なら人懐こいオオハクチョウも1羽だけになり心細くなったか、人間から距離を置き近づくことはなかった。そのためしばらくはハクチョウの姿が小さな画像が続くことになる。
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相変わらず同じ場所に居続ける
5月11日も池の西側の"定位置”にいた。人が来ても近づく様子はない。
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6月5日、スイレンが池のほとんどを覆いつくして花を咲かせ始めていた。
居残りオオハクチョウは池の北側に移動して何かを食べているようだ。
ハクチョウの立っているあたりは、沼の中に島のように土が堆積した場所で、冬場はカモ類がよくここで休んでいる。
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スイレンがある場所が水面
真ん中あたりで帯状に草が生い茂るところが
砂が堆積して水がない場所
案外広い
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6月22日は夏至の翌日であり、晴れていたせいもあり暑かった。いよいよ夏がやってきた。
おそらく渡り鳥としては、当時日本で一番南にいると思われるこのハクチョウは、関東地方内陸部の猛烈な暑さに耐えられるだろうか。
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ほとんど水は見えない
◯猛暑きたる
7月に入った。今年も昨年同様の暑い夏がやってきた。
7月6日、草が生い茂りほとんど水面がみえない池花池に場違いのようにいるハクチョウ。翼はバサバサやっているが飛べるようにはみえない。
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7月13日、地元の人が声をかけると近くまで泳いできた。
ここ池花池は地元の人たちが自分の子供のようにハクチョウを大切にする。
このハクチョウ1羽が帰れなかったときも、地元の人たちが心配そうに見る姿をたびたび見かけている。
市役所に問い合わせをした人もいたそうだ。
ただし野鳥に関しては役所もさすがに手が出せない。
それでも地元の人達の思いが、ついにこのハクチョウの警戒心を解いたようである。
ただし地元の人限定で、よその人はスルーされてしまう。
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猛暑の中体にこたえないだろうか
7月16日には換羽期に入ったのを確認。羽根が抜け落ちて何か病気かと一瞬思ってしまうが、鳥には普通におこる現象なので心配はいらない。ただエネルギーを使うので連日35℃以上の猛暑の中大丈夫だろうかという心配はある。
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8月1日、地元の人が池の西側のスイレンをいくらか除去したけど
相変わらずスイレンだらけ草ぼうぼうで、ハクチョウがいるのが不思議なくらいの状態。(これだけの草を独り占めできるという考え方もできるが)
暑さは心配ないようでこのまま夏を乗り切りそうである。
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誰がきても逃げないでスイレンの上で居眠りをするようになった
8月は並行して観察しているコブハクチョウのほうに異変が多く発生したため池花池には行けず(今年のコブハクチョウの雛については別にまとめる予定)
次に来たのは9月7日である。
この時はもう観察所の目の前で餌をねだるようになっていた。
4月、5月はあんなに警戒していたのがウソのようである。
餌を与えないとそのままスイレンの上で居眠りをするという余裕。
コブハクチョウのほうで悪いことが続いたため、こちらのハクチョウが元気なことが救いであった。
続く