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正義とは「多勢に無勢」という現実

「正義」とは何か。それは哲学的にも社会的にも非常に深い問いであり、人類の歴史を通じて何度も議論されてきました。しかし、冷静にその実態を見つめ直すと、正義はしばしば「勝者の論理」であり、その勝者を決定づけるのは圧倒的に「多勢」の力であることがわかります。このブログでは、正義の定義に切り込みながら、「多勢に無勢」という現実がどのように社会や歴史を形作ってきたかを考察します。


正義の定義:誰が決めるのか?

まず、「正義」とは何でしょうか?
辞書的には「正しい道理」「道徳的に正しい行為や思想」とされていますが、それを誰が決定するのか、という視点が重要です。個人、集団、国、宗教、歴史的背景など、正義の基準は常に変動し、特定の視点から定義されています。

例えば、ある国では「自由のための闘争」が正義とされても、別の国から見れば「テロ行為」として断罪されることもあります。つまり、正義は客観的な基準ではなく、ある立場における主観的な価値観に過ぎない場合が多いのです。

ここで注目すべきは、正義が「力によって正当化される」という現象です。歴史を振り返ると、「勝者」や「勢力が強い側」が正義を定義し、その結果を「事実」として刻んできたことがわかります。


勝者が正義を作る仕組み

「多勢に無勢」という言葉があります。この言葉は、少数の力では多数の力に対抗できない現実を指しています。正義の概念もまた、この現実の中で生まれ、強者や多数派によって支配されてきました。具体的な事例を挙げながら、そのメカニズムを解説します。

1. 歴史的事例:第二次世界大戦

第二次世界大戦における連合国の勝利は、「多勢の力」の象徴です。連合国側は、戦争中に外交的努力で多くの国を味方につけることに成功しました。アメリカ、ソ連、イギリス、中国などの大国を中心に形成された連合国は、枢軸国(ドイツ、イタリア、日本)を数と資源で圧倒しました。

連合国の勝因は単純な軍事力だけではなく、「仲間を増やす能力」にありました。例えば、米国は莫大な経済力を武器に、レンドリース法を通じてイギリスやソ連を支援し、戦争を長期化させることで勝利に近づけました。このように、数的優位を築く能力が戦争の勝敗を決め、結果として「連合国の正義」が歴史に刻まれたのです。

2. 少数派の弱さ

少数派がどれだけ「正しい」と主張しても、それが多数派の支持を得られなければ、歴史における正義として認められることはほとんどありません。例えば、第二次世界大戦中の反戦活動家たちは、当時の社会からは「非国民」や「裏切り者」として扱われました。彼らの主張が正義であったかどうかは、戦争が終わり、時間が経過してからようやく評価されることとなりました。

現代でも、少数派の意見や運動が社会的に受け入れられるには、長い時間と多くの支持者を必要とします。この「支持者を増やす」というプロセスが、最終的に正義を形成する基盤となるのです。


戦争の本質:「数」の力

戦争において、最終的に勝利を決定づけるのは「数」です。兵士の数、兵器の数、資源の量、同盟国の数——これらすべてが多ければ多いほど、勝つ可能性が高くなります。痴話喧嘩から国家間の戦争に至るまで、この原則は普遍的です。

1. 痴話喧嘩の「仲間の数」

例えば、夫婦喧嘩や職場での対立でも、どちらの側に多くの仲間がつくかで「正義」が決まることがあります。一方がどれだけ論理的であろうとも、周囲の支持がなければその主張は押し通せません。

2. 国家戦争の「動員力」

国家間の戦争では、人口規模や経済力、外交力が重要です。アメリカが冷戦期にソ連に勝利したのも、その経済規模と世界各国との同盟構築が鍵でした。同様に、ウクライナ戦争でもNATOや国際社会の支援がウクライナの防衛を支えています。どれだけ「正義」を掲げても、実際に「多勢」を動員できるかが勝利を左右するのです。


綺麗事のない現実:「数」こそ力

「少数派の正義」や「一人の英雄的行為」が称賛されることもありますが、現実的にはそれが社会を変えるには「数」が必要です。マーティン・ルーサー・キング牧師の公民権運動や、ガンディーの非暴力運動も、個人の力だけでなく、多くの支持者を得ることで歴史を動かしました。

一方で、数の力が圧倒的に優位に立つ場合、少数派の声はかき消されます。この現実は「弱肉強食」の世界そのものであり、そこには綺麗事は通用しません。


結論:「多勢に無勢」の中で生きる我々

「正義」とは、結局のところ「多勢の力」で形作られるものです。歴史を動かしてきたのは、思想の純粋さや論理の正しさだけでなく、それを支える「数の力」でした。この現実を受け入れた上で、少数派が自分たちの正義を通すにはどうすればよいかを考えることが重要です。

少数派が勝利を得るためには、綺麗事を捨てて、いかに「味方を増やすか」という戦略を立てなければなりません。そのためには、共感を呼ぶメッセージや強力なリーダーシップ、そして長期的な視野が不可欠です。

最終的に、正義を実現するには、「多勢に無勢」という現実を理解し、その中でいかに優位に立つかを考える必要があります。我々が生きる社会は、そうした「数の論理」の中で動いているのです。

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