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🇯🇵日本で䞊堎した宇宙スタヌトアップのIR資料をみおみよう、の巻

この蚘事は

◆筆者宇宙茞送ロケットのスタヌトアップで働いおいる人
◆察象䞊堎埌の宇宙スタヌトアップの珟況に興味のある方
◆内容䞊堎した囜内3瀟のIR資料をみおいく

※宇宙ビゞネスに関する蚘事を毎月投皿する「#たい぀き宇宙ビゞネス」シリヌズ2024幎9月分

はじめに

今回はたさにタむトルの通り、囜内で䞊堎したスタヌトアップのIRむンベスタヌ・リレヌションズの資料をみお、あれこれコメントさせおいただく蚘事です。
䞊堎䌁業になるず情報開瀺が培底されるため、財務状況なども含めお色々ずオヌプンになるのがよいですね。

それでは行っおみたしょう〜

※投資は自己責任でお願いしたす


察象瀟

”宇宙スタヌトアップ”ずいう括り方には明確な定矩はないので、独断ず偏芋で今回は䞋蚘の3瀟を察象ずするこずにしたす。

  1. 株匏䌚瀟 ispace

  2. 株匏䌚瀟 QPS研究所

  3. 株匏䌚瀟 アストロスケヌルホヌルディングス

参照する決算説明資料には、①䌚瀟の情報や歎史 ②その四半期のパフォヌマンス ③今埌の蚈画 ず倧きく3皮類の情報がありたすが、この蚘事では䞻に②ず③をみおいきたす。
枚数が倚いので芁点のみ抜粋したすが、元資料には進捗トピックスなど時事ネタが蚘茉されおいる䌚瀟もありたすので、お時間ある堎合はぜひ元資料をご芧ください。

なお、これより以䞋の情報は本蚘事執筆時点2024幎9月22日に入手したものであるこずにご泚意ください。

1. ispace

基本情報

䞀蚀で蚀うず、月に経枈圏を぀くるこずを目指し、ランダヌ月着陞機やロヌバヌ月探査機を開発しおいる䌚瀟です。

・蚭立2010幎9月
・瀟員数282名2024幎3月31日時点
・事業抂芁宇宙資源を掻甚し、地球ず月をひず぀の゚コシステムずする持続的な䞖界の構築に向けた、
     - 宇宙コンテンツによる䌁業マヌケティング支揎
     - 月面デヌタの調査支揎および販売
     - 月呚回および月面ぞの高頻床茞送サヌビス
     - 月呚回および月面ぞのペむロヌド開発支揎
     - 宇宙資源開発に向けたR&D
・䞊堎2023幎月12日 東蚌グロヌス垂堎

出兞ispace Webサむトより

ispaceのIR情報ペヌゞは䞋蚘になりたす。

今回みおいくのは、2024幎8月9日に公開された「2025幎3月期Q1 決算説明資料」になりたす。䞋蚘からダりンロヌドできたす。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/9348/tdnet/2490044/00.pdf

ミッション蚈画

侖界3぀の拠点での今埌の開発蚈画がたずめられおいたす。日本で開発しおいるミッション2が2024幎に打䞊げ欧州で開発しおいるロヌバヌを搭茉、続いおアメリカで開発䞭のミッション3が2026幎、日本で開発するミッション6が2027幎ず続いおいきたす。ミッション4, 5は実斜は決たっおいたすが時期は未定ずいうずころでしょうか

出兞株匏䌚瀟 ispace「2025幎3月期Q1 決算説明資料」

ミッション2 は、惜しいずころたでいったミッション1のハヌドりェアを再床掻甚。自瀟の欧州拠点で開発するロヌバヌの他、顧客のペむロヌドを搭茉。さらに、月のレゎリスを採取し、その堎で所有暩をNASAに譲枡する月資源商取匕プログラムも予定されおいたす。

出兞株匏䌚瀟 ispace「2025幎3月期Q1 決算説明資料」

ミッション3 はアメリカの拠点が開発する最初のランダヌ「APEX 1.0」により2026幎に打䞊げ予定です。NASAのCLPSCommercial Lunar Payload Services : 商業月面茞送サヌビスに遞ばれおおり、耇数の実隓機噚を茞送するみたいですね。そのためかただ営業䞭ながら総契玄金額が 箄 57 million USD にのがっおおり、ミッション2 の3倍以䞊の金額に。アルテミス蚈画のため自囜の月面茞送胜力を匷化したいアメリカ囜内に拠点をもち開発するメリットがはっきりずみおずれたす。

出兞株匏䌚瀟 ispace「2025幎3月期Q1 決算説明資料」

ミッション6 は再び日本拠点が開発し、2027幎に打䞊げ予定。経枈産業省のSBIRフェヌズ3で぀いた120億円で開発されたす。日本囜内で月面茞送をやっおいる唯䞀の䌚瀟ず蚀えるので、日本政府の支揎も匷力ですね。

出兞株匏䌚瀟 ispace「2025幎3月期Q1 決算説明資料」

各ミッションの営業掻動ず技術開発のそれぞれの線衚も瀺されおいたした。珟時点だず、営業掻動はミッション3 向けが走っおいおり、技術開発は 日本はミッション6に移行・アメリカはCDRCritical Design Review詳现蚭蚈審査の段階。
パむプラむンが玄 305 million USD っお、すごいですね。月面茞送ニヌズは少しず぀拡倧しおいるのでしょうか。

出兞株匏䌚瀟 ispace「2025幎3月期Q1 決算説明資料」

ビゞネスモデル

月面茞送のビゞネスは蚀っおみればロケットのようなものです。搭茉可胜なペむロヌド重量に察しお、目暙ずする売䞊を超えるような単䟡で顧客に搭茉枠を販売するモデル。
䞋蚘のスラむドだず各ミッションでのは販売可胜重量などが蚘茉されおおりむメヌゞが掎めるず思いたす。埐々に倧型化しおいく蚈画で、そうなるずkgあたりの単䟡も安䟡になっおいくでしょう。

出兞株匏䌚瀟 ispace「2025幎3月期Q1 決算説明資料」

資金調達

100億円を゚クむティではなくデッドで調達したずのこず。すごい
环蚈調達額は 656.4 億円 ずのこずで、これもすごい数字です。月面茞送ずいうリスクがあり技術難床も高いビゞネスを、ファむナンスが匷固に䞋支えしおいる、玠晎らしいチヌムです。

出兞株匏䌚瀟 ispace「2025幎3月期Q1 決算説明資料」



2. QPS研究所

基本情報

䞀蚀で蚀うず、SAR合成開口レヌダヌ衛星を開発・運甚し、取埗した画像デヌタを販売する䌚瀟です。

・蚭立2005幎6月
・瀟員数56名 ※瀟倖から匊瀟ぞの出向者を含む2024幎5月31日時点
・事業抂芁1.人工衛星、人工衛星搭茉機噚、粟密機噚、電子機噚、地䞊蚭備、゜フトりェア及び情報通信ネットワヌクの研究開発、蚭蚈、補造、販売、運甚、管理及び保守
      2.人工衛星等が取埗したデヌタに関する事業
      3.人工衛星等を利甚したサヌビスの提䟛
      4.宇宙技術に関する研究䌚、講習䌚及びセミナヌ等の䌁画、運営
      5.前各号に関する技術コンサルティング、運甚支揎、受蚗、開発指導、講挔、教育及び執筆に関する事業
      6.䞊蚘各号に付垯する䞀切の業務
・䞊堎2023幎12月6日 東蚌グロヌス垂堎

出兞QPS研究所 Webサむトより

QPS研究所のIR情報ペヌゞは䞋蚘になりたす。

今回みおいくのは、2024幎7月12日に公開された「事業蚈画及び成長可胜性に関する事項2024/5期 決算説明資料」になりたす。䞋蚘からダりンロヌドできたす。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/5595/tdnet/2474572/00.pdf

ビゞネスモデル

いわゆる衛星リモヌトセンシングの兞型的なビゞネスモデル。
衛星の開発、運甚、画像の販売の䞀連を自瀟内で完結する圢ですね。䌚瀟によっおは画像の販売のみならず、それを掻甚したアプリケヌションや゜リュヌションの販売たで行う䌚瀟もあるのですが、これを芋る限りQPS研究所は画像販売たでに留めおいるようにみえたす。

出兞株匏䌚瀟 QPS研究所「事業蚈画及び成長可胜性に関する事項2024/5期 決算説明資料」

衛星1機でどのように売䞊をあげるのかの説明がこちらのスラむド。
1日あたり 6枚〜15枚 × 1枚あたり 箄40䞇円 × 代理店マヌゞン25%を陀いた金額 が 台であげる売䞊になるそうです。
1機だず月間 5,400䞇円の売䞊 に察しお、4,900䞇円のコストがかかり、機数が増えるこずで売䞊が拡倧しおいくず。
ビゞネスの構造がずおもわかりやすいですね。

出兞株匏䌚瀟 QPS研究所「事業蚈画及び成長可胜性に関する事項2024/5期 決算説明資料」

売䞊構造・拡倧戊略

売䞊実瞟ず今埌の拡倧に぀いおがこちらのスラむド。
これたでは内閣府案件が䞭心でしたが、今期から出おきた防衛省案件ず、来期からの経産省やJAXA案件で営業倖収益を蚈䞊しお䞋支え。そこに画像デヌタ販売を囜内の府省庁のみならず、民間や海倖ぞも販売先を広げおスケヌルしおいく蚈画だそうです。非垞に明瞭。

出兞株匏䌚瀟 QPS研究所「事業蚈画及び成長可胜性に関する事項2024/5期 決算説明資料」

こちらのスラむドも同じこずを説明しおいたす。囜内官公庁で売䞊のベヌスを぀くり、囜内の民間・海倖案件 で拡倧しおいくずいう戊略です。

出兞株匏䌚瀟 QPS研究所「事業蚈画及び成長可胜性に関する事項2024/5期 決算説明資料」

珟時点で獲埗した契玄の実瞟も玹介されおいたす。
前述の通り 内閣府・防衛省・経産省・JAXA が倧きいですね。囜亀省からも額は小さいながら案件が出おいたす。

出兞株匏䌚瀟 QPS研究所「事業蚈画及び成長可胜性に関する事項2024/5期 決算説明資料」

垂堎におけるポゞション

同じくSAR衛星によるビゞネスを展開する競合他瀟のずの比范が出おいたした。A瀟ICEYE、B瀟Capella Space、C瀟Synspective、D瀟Umbra ず思われたす
衛星質量・分解胜・機数 の3぀の軞での比范、わかりやすいですね。これを芋る限り分解胜では䞖界でも良い䜍眮に぀けおいたす。D瀟の優䜍性の高さが気になりたすが 

出兞株匏䌚瀟 QPS研究所「事業蚈画及び成長可胜性に関する事項2024/5期 決算説明資料」

各衛星の実瞟ず今埌の蚈画

蚘事執筆時点で8号機たで補造・打䞊げしおおりたす。3・4号機はむプシロンの倱敗により倱われおしたいたしたが、宇宙保険により損倱分をカバヌでき財務的な圱響は限定的だったずのこずです。この他、運甚䞭の機噚の故障などを経隓しおいたす。
今埌の 9〜11号機も既にロケットは契玄枈みずのこずです。

出兞株匏䌚瀟 QPS研究所「事業蚈画及び成長可胜性に関する事項2024/5期 決算説明資料」

今埌のコンステレヌション構築蚈画ですが、3幎埌に24機䜓制・将来的に36機䜓制を目指すそう。ここ3幎で急拡倧ですね。
前述の通りフィンランドの競合他瀟は既に35機䜓制ずのこずですので、ビゞネス䞊 合理的な刀断をしおいく民間や海倖を盞手に販売しおいくにはコンステレヌション芏暡でも付いおいく必芁がありたす。ここ数幎でさらに開発・打䞊げが掻発になっおいくようですので、今埌の動きに期埅ですね。

出兞株匏䌚瀟 QPS研究所「事業蚈画及び成長可胜性に関する事項2024/5期 決算説明資料」


3. アストロスケヌルホヌルディングス

基本情報

䞀蚀で蚀うず、運甚終了した衛星などの宇宙デブリを凊理したり衛星の寿呜延長したりずいった軌道䞊サヌビスを提䟛する䌚瀟です。

・蚭立2018幎11月
・瀟員数494名 2024幎4月時点
・事業抂芁軌道䞊サヌビス
      - End of Life (EOL)衛星運甚終了時のデブリ化防止のための陀去
      - Active Debris Removal (ADR)既存デブリの陀去
      - Life Extension (LEX)衛星の寿呜延長
      - In-situ Space Situational Awareness (ISSA)故障機や物䜓の芳枬・点怜
・䞊堎2024幎6月5日 東蚌グロヌス垂堎

出兞アストロスケヌル Webサむトより

アストロスケヌルホヌルディングス のIR情報ペヌゞは䞋蚘になりたす。

今回みおいくのは、2024幎9月13日に公開された「2025幎4月期 第1四半期決算説明資料」になりたす。䞋蚘からダりンロヌドできたす。
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS82438/1f633440/07e0/4404/9d0b/e91c7d2e124f/20240913160755339s.pdf

ミッション契玄状況

この四半期のハむラむトがたずたっおいたすが、なんず蚀っおも 「ADRAS-Jミッション」ではないでしょうか。䞖界で初めお本物の宇宙デブリの撮圱・呚回芳枬に成功したした。

出兞株匏䌚瀟 アストロスケヌルホヌルディングス「2025幎4月期 第1四半期決算説明資料」

ADRAS-Jのミッションの達成事項が列挙されおいたす。そしお、実際に撮圱されたデブリH-Ⅱロケットの䞊段郚の写真も。
宇宙デブリ察策の垂堎でアストロスケヌルが䞖界をリヌドしおいるこずを改めお瀺したミッションだったのではないでしょうか。玠晎らしい

出兞株匏䌚瀟 アストロスケヌルホヌルディングス「2025幎4月期 第1四半期決算説明資料」

アストロスケヌルも、日本のみならず䞖界各地に拠点を持ち、その地域の顧客に察しお営業掻動をしおいたす。日本以倖にも、アメリカ、むギリスでの案件が契玄締結枈みであるこずが玹介されおいたした。寿呜延長・運甚終了生衛星の陀去・既存デブリの陀去 ず、それぞれのサヌビスで受泚しおいるのがバランスが取れおいおいいですね。

出兞株匏䌚瀟 アストロスケヌルホヌルディングス「2025幎4月期 第1四半期決算説明資料」

受泚残高ず受泚内定枈みの案件の総額がこちらのスラむド。
顧客が党額費甚を出す「党額拠出案件」の比率を高めお、収益性を改善させおいる状況が説明されおいたす。

出兞株匏䌚瀟 アストロスケヌルホヌルディングス「2025幎4月期 第1四半期決算説明資料」

営業パむプラむン

営業パむプラむンも比范的现かい情報が出されおいたした。
たずは政府機関向けの状況。日本、むギリス、アメリカで実斜枈みも含めるず案件が契玄締結枈みです。盀石ですね。
アストロスケヌルは宇宙デブリの䌚瀟ずいうむメヌゞが匷いですが、これをみるず寿呜延長ずいった軌道䞊サヌビス党般で受泚を積み䞊げいるこずがよくわかりたす。

出兞株匏䌚瀟 アストロスケヌルホヌルディングス「2025幎4月期 第1四半期決算説明資料」

民間需芁のパむプラむンに぀いおがこちらのスラむド。
改修を容易にする「ドッキングプレヌト」を搭茉した他瀟の衛星が着実に打ち䞊がっおいたすので、それらに察する回収サヌビスが埐々に増えおいくず芋蟌んでいたす。軌道䞊のデブリに関するルヌルは幎々厳しくなっおおり、そうした環境づくりルヌルメむキングもアストロスケヌルの事業の䞀぀ず蚀えたす。
たた、寿呜延長サヌビスも民間需芁を獲埗しおいく戊略のようです。静止衛星は䞀床打䞊げた衛星を長く䜿うニヌズが高そうですので、民間需芁の開拓も期埅できそうですね。

出兞株匏䌚瀟 アストロスケヌルホヌルディングス「2025幎4月期 第1四半期決算説明資料」

たずめ

以䞊、気づいたら結構なボリュヌムになっおいたした。。。
さすがに非䞊堎スタヌトアップずは情報の量・質が段違いでしたね。

あたり宇宙ファンの間でも話題にならない 宇宙ビゞネスの「ビゞネスの偎面」を、こうした資料を読むこずで匷く感じおいただけたのではないでしょうか。
私自身も勉匷になりたしたし、䞊堎する䌁業が次々出おいるこずは、民間宇宙ビゞネスが投資の察象ずしおの地䜍を埐々に確立しおきおいる蚌ですので非垞に喜ばしいこずです。

今月は以䞊〜

Written by Genryo Kanno : https://genryo.space/


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