宇宙ビジネス業界の中に身をおいて感じること
この記事は
はじめに
2023年8月から毎月投稿していた連載記事「#まいつき宇宙ビジネス」。(この記事を除き)これまで16本の記事を公開してきました。
自身にとっても良い勉強になった一方で、新年は新しい取り組みに時間を使いたいと思い、今回の記事をもって最終回にしたいと思います。
そこで最終回として、これまで記事を書いて(+ 実際に宇宙スタートアップで働いて)感じた宇宙ビジネスの現状について思うこと(意見)を綴ってみたいと思います。
思うこと
書き出せばキリがないので、3つに絞ることにしました。
やっぱり「官」が重要
儲かるアプリケーションが出せるか
日本のポテンシャル
宇宙業界の情報に日頃から接している方なら、このタイトルだけで大体内容が想像つくと思います。よく言われることですが、業界の中にいても強く感じることですので、目新しさはないですが改めて書いてみます。
1. やっぱり「官」が重要
ここでの「官」は政府や政府系機関を指します。防衛も含みます。
宇宙”ビジネス”といいながらも、ほとんどの事業者・ビジネスモデルは政府や政府系機関が顧客になること抜きには成り立ちそうにありません。
加えて、技術開発の段階においても資本市場からの投資マネーのみでまかなうのではなく政府の開発支援を活用することもほぼ必須となっています。
誤解を生まないようにお伝えしておくと、これが悪いことだとは考えていません。
そして日本だけではなく海外でも同様です。
宇宙というフィールドにおける事業は公の利益・防衛とのデュアルユースと切っても切り離せないません。
「官」ときちんと関係構築をすることの重要性がますます重要になっていると感じます。
2. 儲かるアプリケーションが出せるか
今の宇宙ビジネスの各事業者が向き合っているチャレンジは「いかに儲かるビジネスモデルをつくれるか」に尽きると思っています。
ロケットも衛星もビジネスにおいては手段にすぎません。それを活用して事業をどうスケール(拡大)させていくか。
1.で書いた「官」からの発注で売上のベースラインをつくりつつ、大きく成長するために官だけでなく民もユーザーになり得るアプリケーションが必要になります。
私の目からはまだその答えに辿り着いている事業者は”ほとんど”いないと感じます。
ほとんど と書いたのは、少なくとも1社 その壁を突き抜けた会社があるからです。
はい、ご想像の通りSpaceX社です。
Starlinkビジネスはまさに「稼げるアプリケーション」であり、”宇宙”を使うからこそ提供できるサービスです。
もちろんSpaceXがFalcon 9という自社ロケットをもっており、イーロンマスク氏というビリオネアが率いている会社であることで実現できたという見方もできますが、他の宇宙ビジネスのプレイヤーもこの例のように壁を突き抜けるビジネスを生み出すことが求められていきます。
3. 日本のポンテンシャル
最後に、宇宙ビジネスにおいて日本のエコシステムについて思うことです。
宇宙産業全体について言えることなのですが、日本の有する総合力は素晴らしいと思います。
アメリカ・中国には敵わない部分が多いですが、それでも単体の国として、ロケットから衛星、データ活用と一連のバリューチェーンにおける自国の技術・人材をもっています。
これは宇宙ビジネスにおいても強みになってきます。
一方で、総合力があるだけに、総花的な取り組みになりがちで「選択と集中」ができていないように感じます。
政府も大型の基金のような形で民間を支援するのであれば ”勝ち筋” を描いてそこにリソースを集中していくことが、グローバル競争の中で勝ち抜くためには求められていくと感じています。
また、業界を拡大させるには産業人口の拡大は必須です。
(あまり評論家的になってもしょうがないのでこの辺にしておきます)
まとめると、課題はもちろんあるが悲観するほどの状況ではなく、宇宙ビジネスにおいてもポジションを確立できる可能性が全然あるのが日本だと思っています。
私も業界内の一プレイヤーとして貢献していきたいと思います。
余談)記事のビュー数
最後に、本日(2024年12月31日)時点のビュー数 Top 3 の記事をご紹介します。
労力をかけてまとめた系の記事は、やっぱりビューも多いという結果でした。
まとめ
以上、普段はあまり意見は投稿しないようにしているのですが、最終回ということで書いてみました。
#まいつき宇宙ビジネス という形での投稿は本記事で最後になりますが、何か書きたいことが出たらその都度 note記事は出していきたいと思っています。
これまで駄文にお付き合いいただき読んでくださった皆さんに感謝です。
(来年も引き続き X(Twitter)にてアウトプットは続けていきます)
宇宙ビジネスはここから各社の技術実証や事業化が本格化し、「勝負の時期」に突入していきます。
ぜひ時代の変わり目を一緒に体験していきましょう。
Written by Genryo Kanno : https://genryo.space/