収益だけではない、DOOHの魅力。デジタル化がもたらすOOHの社会的価値。
OOHの未来はデジタル化しかない!と、このnoteでも何度も紹介しているのですが、今日は「売り上げが伸びることだけがOOHのデジタル化が持つ価値ではないよね」ということについて書いていきたいと思います。
OOH業界を支えるデジタルサイネージ化
公共空間におけるデジタルサイネージの設置は急速に拡大しており、5Gの影響もありますます市場が伸びていくと言われています。
これに伴い、DOOH広告市場も急拡大中です。世界のOOH業界に関するニュースリリースは9割以上が、データを使ってDOOHをいかに効率的に売っていくか。ということを伝えるものとなっています。
DOOH化によって売り上げが伸びる理由は、ここでも何度も書いてきていますが、最も大きいのが優良な枠を複数社に提供できることです。
OOHの広告枠は人が集まる場所の価値が非常に高いので、売れる場所と売れない場所の差が大きいです。
プランニングにおいて、モバイルデータを活用したターゲティングなどが急速に進んでいるとはいえ、渋谷のスクランブル交差点やJR新宿駅の改札前の媒体ではなく、新小岩駅周辺の媒体を優先的に買いたい。という広告主は特殊な状況を除いてめったにいません。
そうなると、媒体社としては渋谷・新宿のような人の多い場所(売れる媒体)でいかに売り上げを伸ばすかが重要になるわけですが、静止画ポスターであれば1社にしか提供できなかった枠をデジタル化によって放映時間を分割することで、複数の広告主に提供できることになります。
業界の流れとして、OOH媒体社が収益を上げるにはDOOH化していくしかない。という状況ではありますが、DOOH化には、収益源としての価値だけでなく、「公共空間において、その場所を生きる人々に寄り添ったメッセージを発信し、街を元気にする。」といったOOH広告の持つ、社会的な価値においても成長させてくれるものだと考えています。
100歳で国民的スターになった男
少し話は変わりますが、、、、
2020年にイギリスで最も有名になったThomas Mooreさんという方がいます。日本でもニュースになっていたので、ご存じの方もいるかもしれません。
この方が何をしたかというと、2020年にコロナ禍の医療従事者に45億円の寄付を行って勲章を受章しました。
これだけ聴くとただのお金持ちということになるのですが、お金の集め方が特徴的でして、Thomasさんが100歳の誕生日を迎える2020年4月に、25メートルある実家の庭を歩行器つきで100往復する。というのを行い、このウォーキングを「Tom's 100th Birthday Walk」と名付けて募金を募ったところ、なんと45億円も集めてしまったのです。
このTomさんなのですが、支援額もさることながら、第二次世界大戦のころに陸軍で働いていたというバックグラウンドも重なって、「Captain Tom」という愛称と共に一気に国民のスターになります。
(本や絵本が出版されています)
(イギリスのGQで表紙になったりもしました)
一気に広がった国民の悲しみ
そんなCaptain Tomさんですが、先週末にコロナに感染したというニュースが届き、2月3日には亡くなってしまいました。
コロナ禍で生まれたスターがコロナによって亡くなってしまう。僕自身もTomさんに勇気をもらっていた一人だったので、本当にショックでした。
テレビでは、Tomさんの追悼番組が流れ、Boris Johnson首相も公式にメッセージを発信。Twitterでもトレンド入りするなど、世代・年齢問わずイギリス国内全体に悲しみが広がりました。
Boris Johnson首相は、国民に対して、Captain Tomさんが亡くなった日の翌日、2月4日の午後18時に皆で拍手をしようと呼びかけ、多くの人が家の前で拍手をしていました。
OOH媒体社はどうした?
追悼のムーブメントが国内に広がる中、僕はこうした国民全体の心の動きに寄り添うのが、OOHメディアであるべきだよなぁ。。。なんてことをぼんやり考えていたら、一つの媒体社がやってくれました!
イギリスを代表する媒体、Piccadily CircusのDOOHの媒体社であるOceanはTomさんが亡くなった日に媒体を活用して追悼のメッセージを発信しています。
イギリスはロックダウン中だったので、多くの人がこれを直接見る事はできなかったわけですが、この画像がtwitterでも投稿され、ハッシュタグと共に拡散していくことで、一気にトレンド入りしていくことになります。
こうしたメッセージの発信はもちろんDOOHでなくても可能なのですが、2,3日後に流しても国民の関心が薄れてしまうわけで、即日で放映することで人々の共感を生むことができると思います。
即日で流すスピード感はDOOHだからこそ実現できることであり、これによってOOHが単純な広告枠ではなく、社会に寄り添うものであることを示し、数回重ねていく中で、結果として媒体価値が高まることにつながるのではないかと思っています。
一方で少し現実的な話として、急遽メッセージを流すと、当該時期に発注をしている「広告主の放映回数が減る」という問題が想定されますが、事前に最低放映保障回数を規定しておくことで、ある程度フレキシブルに対応できるようにしています。
実際のところ、丸1週間流すわけでもなく、何回流したかというのはそこまで重要ではなかったりすると思うので、スピード感をもって世の中の流れを捉える事を優先する必要があると思っています。
社会に求められるOOH媒体として
というわけで、、、
DOOH化というのは収益(儲け)の側面だけでなく、世の中の話題にあいのりしてメッセージ配信することを実現しやすくし、人々の心に寄り添うことでOOHメディアの社会的価値を高めてくれる。という話をしてまいりました。
こうした即時性の高い配信は、新聞の号外など、いろいろなメディアで行われている手法ではありますが、広告主が協賛についていたりもするので、お金を生みながらやっていくことも可能だと思っています。
業界が厳しくなっている今だからこそ、通常フローでの出稿獲得以外にも、OOHの役割を様々な角度から見る事で、媒体の活性化や社会にとって求められる存在であり続けるべき。
と思ったイギリスでの出来事でしたのでまとめてみました!
最後に、Tomさんのご冥福を心よりお祈りしています。