大麻も広告できる。データとテクノロジーで規制を突破するOOHプランニング。
先日、アメリカのOOH広告業界団体が表彰している「OOH MEDIA PLAN AWARD」の2020年の受賞作品が公開されました。
OOH MEDIA PLAN AWARDは、優れた”OOHメディアのプランニングで成果の出た”キャンペーンを表彰するものです。
受賞作品の中で、「広告掲出における規制をクリアしながら、OOHを上手く活用する」プランニング事例がありましたので、紹介していきたいと思っています。
公共空間にあるため広告基準の厳しいOOH
今日のテーマである広告掲出にあたる規制についてですが、OOH広告は他メディアと比べて厳しく設定されているように感じます。これは、公共空間で不特定多数に接触することが理由です。
デジタル広告であれば、サイト上での年齢確認や、行動履歴による細かなターゲティングができますし、テレビであれば時間帯や番組によって広告を出し分けることがなので、特定層に広告を見せないことがある程度可能です。
一方で、OOHは不特定多数に接触することから、より公共性の高い広告が求められ、テレビ・デジタル広告での基準を通過している広告クリエイティブをそのままOOHに転用すると、審査基準に抵触して使えない。というシーンも多くあります。
広告主にとってはクリエイティブ制作のコストが追加で発生してしまったり、時にはキャンペーンの内容自体を変えなければならなくなるので、審査基準の違いによってOOH広告の利用を見送らざるを得ないケースもあるのではないかと思っています。
海外でも特に厳しいOOHの基準
広告出稿における規制は海外でも同様です。
イギリスでは2019年に、ロンドン市交通局(日本でいう東京都交通局)が、子供の成長・健康を害するとして、高砂糖・脂肪食品/飲料(ハンバーガーや炭酸飲料など砂糖や脂質)の広告を原則不可としました。
この規制を受けて、媒体社は細かく広告クリエイティブにおけるガイドラインを設定しています。
直接的な高脂肪/砂糖食品の商品告知だけでなく、全く関係ないサービスにおいて、クリエイティブ内に表示されているだけでも掲出がNGとなる。といった規制が発生しています。
(告知内容が高砂糖・脂肪製品でなく、旅行や家具の告知でも、クリエイティブ内に高脂肪/砂糖商品を表示することが認められない)
この規制により、広告主が限定されてしまうだけでなく、出稿を検討している広告主が他メディアで使っていたクリエイティブを転用できなくなる。といった事態が発生することになっています。
規制の厳しい大麻の告知をOOHで行う
世界共通でOOH独自の厳しい審査基準をクリアしなければならない。という課題がある中で、今回「OOH MEDIA PLAN AWARD」で表彰されたキャンペーンはテクノロジーの力を上手く活用してこの課題を乗り越えています。
今回紹介するのはオンラインで大麻を頼むことのできるサービス「eaze」によるOOHキャンペーン事例です。
アメリカでは医療用ではなく、嗜好品としても大麻が合法化される州が増えており、約3分の1の州で合法的に大麻を購入することが可能です。
一方で、大麻の広告に関する規制は緩いわけではなく、今回OOHキャンペーンが実施されたカリフォルニア州では、以下のような規制があります。
・大麻の販売免許がない事業社
・学校や医療施設、公園などから300m以内の場所
・広告接触者の71%以上の年齢が、21歳以上だと信頼できるデータにて説明できない場合
・映画やアニメなど21歳以下に訴求力の高い宣伝キャラクターの使用
・無償で大麻を提供できる旨の告知
・大麻摂取による虚偽の効果を記載した広告
・広告用に仮設した媒体での告知・カリフォルニア州と他州の州境から25km以内での広告・他州と接続している高速道路上での広告
eazeはこうした規制の中でも夏に2ヶ月に渡るOOHキャンペーンを実施し、その成果として大麻購入検討層の90%がeazeから大麻を購入したい。という高いサービス利用意向の獲得に繋げています。
具体的な施策内容を以下に紹介していきます。
データ/テクノロジーを使い、規制をクリアする
今回、eazeはOOHの中でも2つのデジタルサイネージ(DOOH)を使用しています。タクシー(Uber)の屋根に設置された面と、高速道路のサービスエリアに設置されている媒体です。
この2つの媒体が選ばれている理由は、上記規制にもある21歳以上のターゲットを狙いやすいためです。
この2つの媒体において、それぞれ規制を避けながらのプランニング/メディアバイイングを実現しています。
まず、タクシー媒体についてですが、タクシー(Uber)の車の位置をGPSによりリアルタイムで捕捉し、広告出稿可能エリアに入った場合のみ広告を放映しています。
このタクシー媒体は、位置情報ベンダーと連携し、媒体の視認エリア内に入った人間の性・年齢をリアルタイムに把握できるようになっており、車体の位置情報と視認可能者の情報を瞬時に集計し、広告出稿に問題ないとされれば、広告が配信される仕組みを取っています。
続いて、高速道路のサービスエリアの告知についてですが、掲出可能エリアにある媒体のみをセレクトし、過去の位置情報データを基に、こちらも広告接触者の71%が21歳以上だと確認できるタイミングのみで放映を行っています。
また、いずれの媒体についてもeazeがサービスを提供している午前8時から午後10時のみ掲出しており、サービスの利用を検討するユーザーがすぐに実施できるようなキャンペーンの設計を意識したものとなってます。
これは、従来のOOH広告の購入方法とは異なるアプローチを取っています。
従来のOOH展開であれば、媒体社の定めた面を1週間ないしは2週間の定められた期間、固定された時間帯でのみ購入するしかありませんでしたが、デジタル広告で使用されている売買プラットフォームと同じテクノロジーがDOOHの配信で使用可能となってきたことで、好きな面を好きなタイミングで購入する(予算は事前に上限を設定)ことが実現できるようになっております。
売買の柔軟性が新たな可能性を切り開く
従来のポスター媒体やデータのない時代では、大麻の広告で屋外広告を実施することは非常に難しかったと言えます。
欧米では、データを使った細かい媒体視認者の分析や、売買(枠)の単位が柔軟になったことで、これまで不可能と見られていた規制を突破することができ、OOHの活用方法は広がりを見せています。
という事で今回は、これまで出稿を見送らざるを得なかった広告商材でもOOHキャンペーンを行える可能性を感じる一つの事例をご紹介させて頂きました!
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