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読書感想と本について

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小説の感想と本についてのお話。
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#ネタバレ

第19回読書会報告書

第19回読書会報告書

 11月4日(月祝)、第19回いわぬま読書会が開催されました。
 清々しい秋晴れに恵まれ、すじ雲が青空に広がり、近場の方は、歩いて会場まで来られた人もいました。風がほどよく吹いているので、日和に誘われてお出かけしたくなります。また読書の秋にぴったりの気持ちのいい季節です。東北の秋はほんとうに短いので、この時季が長ければいいのになぁといつも思います。
 本日の課題本は「82年生まれ、キム・ジヨン」チ

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「海岸通り」 坂崎かおる 感想

「海岸通り」 坂崎かおる 感想

〈 あらすじ 〉

※本文に触れているためネタバレにはご注意下さい。

 「海岸通り」坂崎かおる

 第171回芥川賞候補作。
 とてもよかった…また好みの作家さんに出会えた。

 海辺の老人ホームで派遣清掃員として働くクズミはウガンダからきた新人のマリアに仕事を教えることになる。
 同僚や施設の入居者達、在日外国人によるコミニティなど繊細な問題がある中で時にクスッとしてしまうようなクズミの比喩が

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家父長制アンソロ「父親の死体を棄てにいく」感想

家父長制アンソロ「父親の死体を棄てにいく」感想

家父長制アンソロジー「父親の死体を棄てにいく」

〚 あらすじと感想 〛
家父長制に対するアンチテーゼとして、父親の死体を棄てにいく小説だけを集めた文芸アンソロジー。
あらすじは『おざぶとん』黒田八束さんの通販サイトより引用致しました。以下掲載順です。
※物語にふれているため、未読の方はネタバレにご注意ください。

① Sewing Pieces Together(落山羊さん)
「次のお話を探そう

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「忘れられない日本人 民話を語る人たち」小野和子 感想

「忘れられない日本人 民話を語る人たち」小野和子 感想


「 忘れられない日本人 民話を語る人たち 」
             小野和子

 前作の「あいたくて ききたくて 旅にでる」が好きだったので、今回の2作品目も迷わず購入しました。
ブックカフェ火星の庭さんで購入

 今回は語り部たち8人にスポットを当てた、彼らの人生と思い出をまとめたもの。
 常々、『人の一生は文学になる』と思っていたが、今回の本書を読んでますますそう感じました。それと同時に

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「黙って喋って」ヒコロヒー 感想

「黙って喋って」ヒコロヒー 感想


 「黙って喋って」 ヒコロヒー

※若干ネタバレを含みますので未読の方はご注意ください

 思ってた以上にすごくよかった。比喩表現が巧みで、彼女にしかできない表現方法が面白く、この感じ、結構好きだなと思った。短い物語のなかで、よくある身近な話題から二人にしかわかりあえない微妙なニュアンスの部分まで、男女の繊細な機敏をわかりやすく、また文章も読みやすい。それが、人気の理由なのかもしれません。
 最

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「愛と死」武者小路実篤 感想

「愛と死」武者小路実篤 感想

 
 「愛と死」 武者小路実篤

※ あらすじを含んでいるのでネタバレを気にする方はご注意ください

 ただただ想い合っている。こんなに気持ちいいものはない。ラストが悲恋であれ、これが人と人が真っ直ぐに想い合う美しい姿なんだなと思った。愛を形にするならばと問われれば、きっと私はこの小説が頭に思い浮かぶだろう。相思相愛とはこのことだ。

 先輩作家であり友人野々村の妹「夏子」との初めての出会いは、何

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「余白の迷路」赤川次郎 感想

「余白の迷路」赤川次郎 感想

 赤川作品は、色あせることなく、私をワクワクさせてくれる。今回は、「余白の迷路」から好きな台詞や文章をご紹介します。

 ※ 若干ネタバレも含みます

 二年前『しばらく出かける』というメールを最後に行方不明になったまま帰ってこない夫。そんな夫が夢にでてきて茜と交わした会話が印象的だった。
 「迷う」というマイナスともとれる言葉が、彼の返しでガラリと好転して、それを楽しむようなニュアンスに変わり、

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