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読書感想と本について

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小説の感想と本についてのお話。
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#読書

「家康、江戸を建てる」門井慶喜 感想

「家康、江戸を建てる」門井慶喜 感想

 読書会でオススメしていただいた本書。時代小説がより面白くなるとのお墨付きが本当でした。
 正直、昨年の大河はこういう物語が見たかったのです。とまぁそれはさて置き、何もない沼地だらけの不毛の大地に260年という歴史を刻んだ、その始まりに着手した武士と、技術者、人足(労働者)、開拓者など、江戸を建てることに関わった人々のお話。

 大きな河川を移動し、金貨を流通させ、飲水を広域に引き、城壁を築き、天

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寄贈すること

寄贈すること

 先日、地元の病院に本の寄贈をしてきました。
 そこの病院には図書室があり、随時本の寄贈を募集しているそうで、それを読書会の仲間から聞いた私は、さっそく自分の蔵書から30冊程選んで紙袋に詰めました。ほっこり癒し系と元気が出る本を中心に。また、自分が好きな作家さんや推している作品も含めて。

 実は数冊買い足した作品もあります。心があたたかくなる作品は何よりも栄養剤になると思います。とまぁ、私の実感

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第17回読書会報告書

第17回読書会報告書

7月21日(日)、第17回読書会が開催されました。
課題本 サン=テグジュペリ「星の王子さま」

 7月21日(日)の午後、連日の猛暑続き、べとつく湿気、アスファルトの陽炎、ゆがむ視界、なにもかも暑さにヤラれるこの時期、集中力も散漫になりがちです。そんなときはやはり、冷房の効いた室内でゆっくり読書するのがいいですね。本日は暑い中、読書会に足を運んでくださりありがとうございました。
 課題本は、大人

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「海岸通り」 坂崎かおる 感想

「海岸通り」 坂崎かおる 感想

〈 あらすじ 〉

※本文に触れているためネタバレにはご注意下さい。

 「海岸通り」坂崎かおる

 第171回芥川賞候補作。
 とてもよかった…また好みの作家さんに出会えた。

 海辺の老人ホームで派遣清掃員として働くクズミはウガンダからきた新人のマリアに仕事を教えることになる。
 同僚や施設の入居者達、在日外国人によるコミニティなど繊細な問題がある中で時にクスッとしてしまうようなクズミの比喩が

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「黙って喋って」ヒコロヒー 感想

「黙って喋って」ヒコロヒー 感想


 「黙って喋って」 ヒコロヒー

※若干ネタバレを含みますので未読の方はご注意ください

 思ってた以上にすごくよかった。比喩表現が巧みで、彼女にしかできない表現方法が面白く、この感じ、結構好きだなと思った。短い物語のなかで、よくある身近な話題から二人にしかわかりあえない微妙なニュアンスの部分まで、男女の繊細な機敏をわかりやすく、また文章も読みやすい。それが、人気の理由なのかもしれません。
 最

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神保町のPASSAGEへ

神保町のPASSAGEへ

 神保町にある共同書店PASSAGEと三階のbis、そして近隣にあるSOLIDAへ行ってきました。
 著名人から一般の本好きまで幅広い人たちが各々の売りたい本、推したい本を棚に並べて置いてあるこの本屋さんは、部屋いっぱいに本が陳列されていて、本棚の中身は一貫性がなく分類や大きさもバラバラ、だからこそ新しい出会いを予感させるのかワクワクする気持ちが湧いてきて、それが楽しくて仕方がない。前から気になっ

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「ぼくは青くて透明で」窪美澄 感想

「ぼくは青くて透明で」窪美澄 感想


「ぼくは青くて透明で」 窪美澄

 とてもよかったぁ。海くんと忍くんの関係だけでなく、海くんの継母や父親、同級生の視点などを、一話ずつ重ねながら進む物語は、多面的で一方の思い込みを柔らかく解いていく。
 文章ってきっと相性があるんだと思う。どんなに読みやすい文体でも読みづらく感じることはあるし、逆に難しそうでもすんなり頭に入っていって、スラスラ読めることもある。窪美澄さんの作品は、とても読みやす

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私のファンレターの書き方(我流)

私のファンレターの書き方(我流)

 ファンレターに関して思うことがあったので書きました。単なる私のファンレターの書き方です。なんとなく、手紙を書くことに二の足を踏んでいる人がいるようなので、一読者ただのファン視点ですが、私が送るときに気をつけていることと、心構え等を箇条書きにする感じて記載します。

【 宛先は書籍の奥付編集部へ 】

 基本的に宛先は、書籍の一番後ろに記載してある出版社の住所へ送ります。親切にファンレターの宛先は

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ブックカバー

ブックカバー

 本を読む人の装いは様々です。
 表紙を装着したまま自然に読む人、表紙のカバーを外して裸身で読む人、書店でかけられた紙のブックカバーをラフに使う人、愛用のブックカバーをつけて着飾って読む人など、紙の本を好む人にはいろんなスタイルの人がいますね。
 どこで読むかによっても違いがあるかもしれません。家で、職場で、カフェで、公園で。
 落ち着く場所、捗る場所もひとそれぞれです。
 みんな等しく本好きなの

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古本まつりへ

古本まつりへ

 仙台駅前のイービーンズで開催されている古本まつりへ行ってきました。
 6階のエレベーターから出るとズラリと並ぶ本棚の陳列が壮観でした。古書だけでなく、雑誌や雑貨、映画DVD(Blu-ray)、レトロなハガキ、切手、額縁に飾られた絵(イラスト)、熊の置物まで!本好きにとってはたまらない空間です。私が行ったのは日曜日だったからか、人入りはけっこうあって、吟味している人の背後から覗いたり、気づいたら横

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直木賞候補二作品を読んで

直木賞候補二作品を読んで

 「襷がけの二人」 嶋津輝

 山田家の嫁となった千代はそこで女中頭を務めるお初と出会う。
 大正から激動の戦後を一緒に生きた二人、この時代の普通から反れる彼女たちは、己が信じる道を泥だらけになりながらも力強く生きていた。それがほんとうに美しい姿として私には見える。こういうお話大好きです。また二人の絆の他にも大正から戦時下の時代背景やそのころ食べていた多彩な料理と食事風景、終戦後の貧困、女性の結婚

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