【M&A】財務モデルとは?財務モデルの作り方から目的まで徹底解説
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財務モデルとは
財務モデルとは、企業の将来の財務状況や業績を予測・分析するためのツールです。具体的には、事業計画や業績予想を基に、損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書の財務三表を作成し、それらを連動させることで、企業価値の評価や投資判断に役立てます。
財務モデルは主に「オペレーティング・モデル」と「バリュエーション・モデル」の二種類に分類されます。
オペレーティング・モデルは、事業計画や業績予想を予想財務三表に変換するためのもので、企業の将来の業績をシミュレーションする際に使用されます。
一方、バリュエーション・モデルは、予想財務三表を基に企業価値を算定するためのもので、投資判断やM&Aの際に活用されます。これらのモデルは相互に関連しており、オペレーティング・モデルを内包したバリュエーション・モデルが一般的です。
財務モデルを作成する目的
将来の財務状況を予測し、経営判断を支援するため。
投資判断や資金調達計画を立てるため。
リスクシナリオを分析し、事前対策を講じるため。
事業戦略の策定や目標設定を明確にするため。
ステークホルダーと財務情報を共有し、意思決定を促進するため。
順番に見ていきましょう。
目的①:将来の財務状況を予測し、経営判断を支援するため
財務モデルは、企業の将来の財務状況を予測するための重要なツールです。これにより、経営者は将来の売上高や利益、費用などを具体的な数値で把握できます。例えば、過去5年間の平均売上成長率が年率5%であれば、今後も同様の成長が期待できると予測できます。
この予測に基づき、経営者は適切な意思決定を行えます。例えば、新規事業への投資や人員の増減、設備投資のタイミングなど、具体的な数値に裏付けられた判断が可能となります。さらに、将来のキャッシュフローを予測することで、資金繰りの計画や資金調達の必要性を事前に把握できます。
また、財務モデルは複数のシナリオ分析にも活用できます。例えば、楽観的なシナリオでは売上成長率を7%と設定し、悲観的なシナリオでは3%と設定することで、さまざまな状況に対応した計画を立てられます。これにより、リスク管理や柔軟な経営戦略の策定が可能となります。
さらに、財務モデルは外部のステークホルダーとのコミュニケーションにも役立ちます。投資家や金融機関に対して、将来の財務状況を具体的な数値で示すことで、信頼性を高め、資金調達を円滑に進められます。
目的②:投資判断や資金調達計画を立てるため
財務モデルは、投資判断や資金調達計画を立てる際の基盤となります。具体的な数値分析により、投資案件の収益性やリスクを評価できます。例えば、あるプロジェクトの内部収益率(IRR)が15%であれば、投資基準を満たしているかどうかを判断できます。
また、財務モデルを用いることで、資金調達の必要性や適切なタイミングを明確にできます。将来のキャッシュフローを予測し、資金不足が見込まれる場合、事前に金融機関からの借入や増資を検討できます。例えば、2年後に大規模な設備投資が予定されている場合、その時点での資金需要をモデルでシミュレーションし、最適な資金調達計画を策定できます。
さらに、財務モデルは投資家や金融機関への説明資料としても活用できます。具体的な数値に基づく計画を提示することで、投資家の信頼を得やすくなります。例えば、将来の売上高や利益率の予測を示すことで、事業の成長性や収益性をアピールできます。
目的③:リスクシナリオを分析し、事前対策を講じるため
財務モデルは、企業が直面する可能性のあるリスクを定量的に分析し、事前に対策を講じるための有効な手段です。例えば、主要な取引先の倒産や市場環境の急激な変化など、さまざまなリスクシナリオをモデル内でシミュレーションできます。
具体的には、売上高の急減やコストの増加など、複数の仮定条件を設定し、それぞれの影響を数値で評価します。例えば、主要製品の需要が20%減少した場合、利益率やキャッシュフローにどの程度の影響が出るかを予測できます。
このようなシナリオ分析により、企業はリスク発生時の影響範囲を把握し、適切な事前対策を講じることが可能となります。例えば、売上減少が予測される場合、コスト削減策や新規市場開拓の計画を立てることができます。
さらに、財務モデルを活用することで、リスク管理のプロセスが体系的かつ効率的になります。定期的なモデルの更新とシナリオ分析を行うことで、リスクへの対応力を強化できます。
目的④:事業戦略の策定や目標設定を明確にするため
財務モデルは、事業戦略を策定し、具体的な目標を設定する際に必要不可欠です。これにより、企業の中長期的な方向性が明確になります。
まず、財務モデルを活用することで、収益性の高い事業分野や製品を特定できます。たとえば、売上総利益率が他の事業と比較して高い部門があれば、そこにリソースを集中させる戦略を立てることが可能です。
次に、将来の売上目標や利益目標を設定する際にも役立ちます。過去の実績データや市場成長率を基に目標値を算出することで、現実的で達成可能な計画が立案できます。たとえば、次年度の売上目標を前年比10%増とした場合、必要なマーケティング投資や人員配置をモデルでシミュレーションできます。
さらに、財務モデルは事業戦略を実行する上での資金調達計画にも活用されます。新規事業や製品開発の資金ニーズを定量的に把握し、それに応じた資金調達方法を検討できます。
目的⑤:ステークホルダーと財務情報を共有し、意思決定を促進するため
財務モデルは、ステークホルダーとの効果的なコミュニケーションツールとして機能します。これにより、経営陣、投資家、金融機関との意思決定がスムーズに進みます。
まず、財務モデルは企業の将来像を数値で示すことができます。たとえば、将来のキャッシュフローや利益予測を具体的に提示することで、ステークホルダーは企業の収益性や健全性を正確に把握できます。これにより、信頼関係の構築が進みます。
次に、投資家への説明資料としても役立ちます。新規事業やプロジェクトの収益性を具体的に示すことで、投資判断を下す際の重要な判断材料を提供できます。たとえば、予測される投資回収期間(Payback Period)が3年以内であれば、投資家にとって魅力的な案件として評価される可能性が高まります。
さらに、金融機関からの融資交渉においても、財務モデルは不可欠です。借入金の返済計画や資金使途を具体的に示すことで、融資審査を円滑に進めることができます。
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財務モデルの作り方の手順
財務モデルの作成には、以下のプロセスが含まれます。
事業概要の理解と過去の財務数値の分析
仮定条件の設定
損益計算書の作成
貸借対照表の作成
キャッシュフロー計算書の作成
財務三表の連動
シナリオ分析の実施
結果の検証と調整
最終モデルの完成
順番に見ていきましょう。
作成手順①:事業概要の理解と過去の財務数値の分析
事業概要の理解は、財務モデル作成の最初のステップ。企業のビジネスモデルや市場環境を把握することで、正確なモデルを構築するための土台ができます。特に、事業が直面する競争環境や成長の可能性を分析することが必要です。
まず、過去の財務数値を詳しく分析します。売上高、営業利益、純利益の推移を確認し、成長率や利益率のトレンドを把握します。例えば、過去5年間の売上成長率が年平均5%を超えている場合、これは将来の予測を立てる際の基準となります。
次に、主要な費用項目についても確認します。人件費や原材料費、固定費などの割合を調べ、それらが売上に対してどの程度の負担となっているかを明確にします。この分析によって、コスト削減の余地や利益率の改善ポイントが見えてきます。
また、業界平均と比較することで、自社の強みや課題が浮き彫りになります。例えば、業界平均の利益率が10%である場合、自社がそれを下回っているなら、その原因を特定し改善策を講じる必要があります。
さらに、非財務データも参考にします。市場シェアや顧客満足度、製品ポートフォリオの分析も重要です。これらのデータが将来の売上や費用にどのように影響するかを考慮することで、より精度の高いモデルが構築できます。
作成手順②:仮定条件の設定
仮定条件の設定は、財務モデル作成において非常に重要な役割を果たします。将来の売上高、利益率、成長率などを想定することで、モデルの方向性が決まります。
まず、売上高の仮定を立てます。過去の成長率を基に、今後の市場成長や競争環境を考慮します。例えば、**市場成長率が年平均3%**と予測される場合、自社の成長率はこれを基準に調整します。過去のトレンドが安定している場合は、直近の成長率をそのまま使用することもあります。
次に、利益率の仮定を設定します。営業利益率や純利益率を予想する際には、コスト構造やコスト削減施策を考慮します。例えば、新技術の導入によって生産コストが10%削減される見込みがある場合、これを反映した仮定を設定します。
さらに、費用の変動要因を考慮します。原材料費の高騰や為替レートの変動が事業に与える影響を分析し、それらがどの程度業績に影響するかをモデルに織り込みます。
最後に、キャッシュフローに影響を与える要因も検討します。資金調達計画や設備投資のタイミングなどが予測にどう影響するかを確認します。
作成手順③:損益計算書の作成
損益計算書の作成は、財務モデルの中心的な作業の一つです。売上高や利益、費用の予測を行い、事業の収益性を明確にします。
最初に、売上高の予測を行います。設定した仮定条件を基に、年ごとの売上高を計算します。例えば、過去3年間の売上成長率が平均5%の場合、これを基に次年度以降の売上高を算出します。新規事業や新製品がある場合は、それらの寄与分も考慮します。
次に、売上原価を予測します。売上高に対する原価率を基に計算し、コスト構造をモデルに反映させます。例えば、**売上高に対する原価率が60%**の場合、売上高が増加するとその割合に応じて売上原価も増加します。
さらに、営業利益を算出するために販管費を予測します。人件費や広告宣伝費、固定費などを具体的に見積もり、それらを売上高と連動させることで現実的な予測を行います。
営業利益から金融費用や税金を引き、最終的に純利益を算出します。この純利益は、貸借対照表やキャッシュフロー計算書と連動させるための重要な要素となります。
作成手順④:貸借対照表の作成
貸借対照表の作成では、資産、負債、純資産のバランスを予測し、企業の財務状況を明確にします。
まず、資産の部を作成します。現金や売掛金、在庫といった流動資産を予測し、それに設備や土地などの固定資産を加えます。例えば、売掛金は売上高の3か月分とするケースが一般的です。
次に、負債の部を予測します。買掛金や短期借入金といった流動負債を計算し、これに長期借入金や社債などの固定負債を加えます。借入金の返済スケジュールを考慮し、現実的な負債額を設定します。
最後に、純資産の部を作成します。利益剰余金や資本金を基に、予測される純資産を計算します。例えば、前年の純利益が加算されることで、利益剰余金が増加します。
これらをすべてまとめ、資産合計と負債・純資産合計が一致するように調整します。
作成手順⑤:キャッシュフロー計算書の作成
キャッシュフロー計算書の作成では、現金収支の流れを明確にし、資金繰りを予測します。
まず、営業活動によるキャッシュフローを計算します。損益計算書で算出された営業利益を基に、減価償却費や運転資金の変動を加減して予測します。例えば、売掛金が増加する場合、その分だけキャッシュフローが減少します。
次に、投資活動によるキャッシュフローを作成します。設備投資や資産の購入・売却を反映させ、現金の増減を予測します。大規模な設備投資が計画されている場合、それがキャッシュフローに大きく影響します。
最後に、財務活動によるキャッシュフローを予測します。借入金や配当金の支払いを考慮し、資金調達の状況を反映します。例えば、新たな借入金がある場合、現金収支が増加します。
これらの計算を基に、期末の現金残高を算出します。
作成手順⑥:財務三表の連動
財務三表を連動させることで、モデル全体の整合性と信頼性を高めます。損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書が相互に影響を与えるため、それぞれをリンクさせる必要があります。
まず、損益計算書の純利益を貸借対照表の利益剰余金に反映させます。これにより、純利益が自動的に貸借対照表に加算されます。
次に、キャッシュフロー計算書の期末現金残高を貸借対照表の現金に反映させます。このリンクにより、現金残高が正確に表示されます。
さらに、運転資金や設備投資の影響を三表にわたって調整します。例えば、在庫や売掛金の増減がキャッシュフローにどのように影響するかを計算し、三表間の一貫性を確認します。
作成手順⑦:シナリオ分析の実施
シナリオ分析は、財務モデルの柔軟性と実用性を高めるために欠かせないプロセスです。複数の仮定条件を用いてさまざまなケースをシミュレーションし、事業計画のリスクや可能性を評価します。
まず、基本シナリオを設定します。これは、最も現実的な仮定条件を基に作成されるもので、標準的な業績予測となります。売上高、原価率、利益率などが設定された基本の財務モデルを基に進めます。
次に、楽観的シナリオと悲観的シナリオを追加します。楽観的シナリオでは、市場成長率が予想より高い場合やコスト削減が順調に進むケースを想定します。一方、悲観的シナリオでは、売上が予想を下回ったり、コストが増加したりする状況を想定します。
さらに、複数の変数を組み合わせた複雑なシナリオも作成します。例えば、新規市場への参入による追加収益や、設備投資の遅延による影響など、実際に起こり得る状況をシミュレーションします。
作成手順⑧:結果の検証と調整
モデルの精度を高めるためには、結果の検証と調整が必要です。不整合や現実とかけ離れた結果を排除することで、モデル全体の信頼性を確保します。
まず、財務三表の整合性を確認します。損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書の数値が一貫しているかを確認し、矛盾があれば修正します。例えば、キャッシュフロー計算書の期末現金残高が貸借対照表の現金と一致しない場合は、入力データやリンク設定を再チェックします。
次に、設定した仮定条件の妥当性を見直します。市場成長率や利益率が現実的かどうか、過去の実績や業界平均と比較して確認します。例えば、利益率が業界平均を大幅に上回る場合、根拠を再検討する必要があります。
さらに、結果を第三者にレビューしてもらうことも効果的です。外部の視点でモデルを見直すことで、見落としていた点や新たな改善点が発見されることがあります。
作成手順⑨:最終モデルの完成
最終モデルの完成は、財務モデル作成の集大成です。この段階では、モデルの精度と実用性を最大限に高め、最終的な形に仕上げます。
まず、全体のデザインを整理します。使用するエクセルやその他のツールが見やすく、操作しやすいレイアウトになっているかを確認します。たとえば、入力項目や計算結果が一目でわかるように色分けやラベル付けを行います。
次に、モデルのドキュメント化を行います。仮定条件、計算方法、リンク構造などを詳細に記載し、第三者がモデルを使用する際にもスムーズに理解できるようにします。
さらに、最終的な結果を関係者に提示します。モデルを用いたシナリオ分析の結果や、予測される財務状況をわかりやすく説明します。この際、具体的な数値やグラフを活用することで、より説得力のあるプレゼンテーションが可能になります。
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財務モデルとは:まとめ
財務モデルは、企業の将来を予測し、経営判断や投資判断を正確に支える重要なツールです。これにより、収益性やリスクを具体的に把握し、柔軟な対応が可能となります。
例えば、将来の売上高や利益率のシミュレーションを通じて、最適な事業戦略を策定できます。さらに、複数のシナリオ分析を行うことで、不確実性への備えが強化されます。資金調達計画や設備投資のタイミングも、財務モデルを基に具体的に検討することができます。
また、財務モデルはステークホルダーとのコミュニケーションにも役立ちます。投資家や金融機関に対して、信頼性のある情報を提供することで、意思決定を円滑に進められます。
これらの利点を最大限に活用することで、企業の持続的な成長と安定した経営を目指せます。
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