中国古典 唐時代 ｢褚遂良」
５９６年ー６５８年没。
褚遂良は、唐時代の書家であり政治家です。
浙江省の出身で、字を登善と言います。代々南朝に仕えた名門の家です。
欧陽詢・虞世南とともに初唐の三大家の一人として知られます。
褚遂良は、魏徴の推薦で、太宗（皇帝）の書道顧問として出仕し、中枢の役職を歴任しました。太宗からは絶大な信任を得ており、死後の後処理を任されるほど重要視されていました。褚遂良は率直に意見を述べることができ、その意見を重く受け止められた。太宗は名君と称されました。また褚も名臣と称され、のちに高宗（太宗の息子）の教育にも携わり、高宗の重臣にもなります。 しかし、武昭儀を皇后に立てることに反対したために則天武后に深く憎まれることになりました。彼は左遷され続け、最後は愛州（現在のベトナム、ハノイ）で亡くなりました。
太宗は国中の王羲之の真跡を集めましたが、誰も王羲之の鑑定を出来ず、褚遂良だけが全て正確に処理できました。
褚遂良の書は、南派の虞世南と北派の欧陽詢が完成させた楷書体を引き継いでいました。晩年の書は、針金のように引き締まった線に弾力があり、用筆の極限をいかした太細や強弱の変化を極めたもので、褚遂良独自の境地に達した個性ある楷書体になりました。その多様な変化と情趣豊かな点では、初唐の三大家の中でもとくに優れています。
「雁塔聖教序」は最高傑作といわれます。
〈孟法師碑〉
唐室の庇護を受けていた女道士の孟静素 (もうせいそ)の徳を讃えた記念碑。古法の隷意を感じる結体は、やや扇平で、筆がしっかりと紙を掴み、気力充満の書である。
【訓読】
観ずるに、夫の太陽は旦に始まり、崦しを指してそれ馳するをが若く、巨川は流れを分ちて渤澥に赴きて息まず。是を以って至人は己なく、天地に先だちて六気を御し、列仙は神化し、宇宙を隘しとして万物を遺れり。それ斉魯の縉紳は、名教を俄景に束け、漢魏競の豪傑は、栄利を窮塗に殉ぜしは、何ぞ蜉蝣崇朝に生じて、長きを亀鶴と争い、秋豪の未兆に出でて、大きさを崑閬と計るものと異ならんや。酒ち岱山の龍駕、神丹の秘決を伝え、秦都の鳳祠、洞簫の妙響を流し、用って能く、頽年を昧谷に延ばし、朽骨を玄盧に振い、白玉の簡の、西王に祈りて値うべく、青雲の衣の、東陵を師として襲い易きが若きは、度世の宝術、登還の妙道に非ずや。法師、俗姓は孟氏
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