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No Bitcoin , No Life ?

1.直近のビットコイン市場動向

 小田玄紀です

 ビットコインの価格が過去最高値を超えて、再びビットコインの価値が再注目をされつつあります。

 2017年も年始にビットコインの価格が15万円を超えて、最高値更新と言われて1年がスタートし、結果的には2017年末には200万円を超えて、文字通り仮想通貨バブルが来ました。

 ただ、今回のビットコインの高値は2017年~2018年の状況とは性質が大きく異なります。これは多くの人が感じていると思いますが、日本においては個人の暗号資産(仮想通貨)投資がそこまで活発になってきていません。当時は完全に個人が主役で、機関投資家などはむしろほぼ参入していない状況でした。

 JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOが「ビットコインは詐欺のようなもの」と発言したことに対して、多くのビットコインホルダーは「彼は何も分かっていない。我々の方が投資を分かっている」という見解をもっていたのが2017~2018年の頃であり、それが今は個人投資家と機関投資家のスタンスは逆転しています。

 欧米の機関投資家のビューを見ると、ビットコインを投資アセットに加えることについては、ほぼ主要な機関投資家は認めており、その価格予測についても将来的に20万USD~40万USD(1ビットコイン=2000万円~4000万円)程度という見解のようです。

 また、ビットコインに関する周辺サービスも様々な企業が展開をしており、PayPalのビットコイン決済参入やフィデリティによるカストディサービスなど確実に周辺産業も強化されています。

 株式市場でも暗号資産交換業で米国首位のコインベースも上場準備に入っており、これも今後の暗号資産交換業(仮想通貨交換業)の市場成長にとっては極めて大きなニュースだと考えられます。

 ただ、そうだからといって楽観視出来ないところがビットコイン市場の特徴です。業界に携わっていれば携わっているほど、様々な進歩や成長を感じてしまい、非常に楽観的になってしまいがちですが、ビットコインをはじめとする暗号資産(仮想通貨)は原資産を持たないので、あくまでその価格形成要因は需要と供給です。「買い」が多い時は上がるものの、「売り」が多い時は下がる。非常にシンプルなものの、この価格形成ファクターが未だ確立出来ていないところに市場のリスクがあります。

 一般論で考えると、今回は原則長期ホールドの機関投資家が買いに入っており、今後、ここに個人投資家が入ってくると一気にさらなる買いにより価格は上昇となる可能性が高いものの、多くの個人投資家が以前に暴落で痛い目を見ているので、「機関投資家は我々が買ったら、売ってくるだろう」という疑心暗鬼になり、そこまで価格が伸びない可能性もあります。

 しかし、機関投資家は個人の動向は参考にするものの、判断材料の一つでしかないために、そうした個人投資家の意向は気にせずに買いトレンドが続く可能性もあります。

 こればかりは誰にも正解が見えないことであり、投資において重要なことは「投資のプロはいない」ということを改めて認識し、「●●さんが言っていたから買う」という他人任せの判断ではなく、自分自身のポートフォリオの中でリスクアセットとして投資出来る範囲で投資をするという投資の原則に則るべきということは強調させて頂きます。

2.そもそもビットコインの価値は?

 なお、このようにビットコインの価格が上昇してきている中で、改めて考えるべきことは「ビットコインの価格」よりも「ビットコインの価値」です。

 より広義で考えると「ビットコインの価値」よりも「ブロックチェーンの価値」として定義してもいいかもしれません。

 極めてシンプルにブロックチェーンの価値をまとめると①投資対象としての価値、②決済手段としての価値、③送付手段としての価値、④契約・執行の自動化手段としての価値などの例示が出来ますが、何よりも重要なこととしては「ブロックチェーンの方がいい」よりも「ブロックチェーンじゃないと出来ないこと」に今後、どれだけ使われていくのか。ここがとても大事なことになってきます。

 世界経済フォーラムもブロックチェーンを第4次産業革命における1つの大きなファクターと考えていますし、たとえば国連も以下のように「Beyond bitcoin」としてブロックチェーンが果たす役割の可能性について触れています。

 ブロックチェーンの最大の価値は「デジタル情報の非改竄性」です。つまり従来のデジタル化というものは同じものを簡単に無限に複製出来ることが特徴でしたが、ブロックチェーン技術を活用することで、デジタル情報を改竄することが出来ない(改竄しても、それが改竄であることがブロックチェーンを辿ることで容易に特定出来てしまう)ことが最大の特徴です。

 この点を活用し、本人認証を行うことで戸籍を持たない難民の人たちや銀行口座を持たない人たちに対する金融サービス・行政サービスを低コストで行うことが出来ますし、良い行いをした人に対して、その記録を書き込むことで信用形成を図るなど、様々な社会貢献活動においてブロックチェーンは活用可能性があります。

 寄附についても、海外で支援を求めている人に対してもビットコインを使うことで簡単に寄附をすることができ、送金手数料や為替、そして送金時間を意識することなく、世界どこへでも寄附が可能になります。

 今まさにSDGsとビットコイン/ブロックチェーンの相性が高いことから、ビットコインは再注目されており、このことが「ビットコインの価値」を今後高めてくると考えています。

 こうした価値形成と価格形成が相関関係をもって上昇していけば、暗号資産(仮想通貨)市場は健全な成長・発展を遂げていけると信じています。

3.日本の暗号資産(仮想通貨)市場が成長するためには

 2017年4月頃は日本が世界で最も暗号資産(仮想通貨)市場をリードしていました。ビットコインの現物取引量の50%以上が日本円で取引がされており、世界ではじめて暗号資産(仮想通貨)に関する法律が出来たのも日本でした。

 当時は国会においても議連が主要なもので3つ形成され、暗号資産(仮想通貨)だけで日本の資産が3~5兆円程度増えたとされました。

 その後、ハッキングや不正流出を含めた様々な障害や価格下落により一気に市場は冷え込みました。ビットコインの現物取引量は最盛期は1日3000億円程あったものが1日100~200億円にまで低迷し、日本の政治家でも暗号資産推進派は声を潜めるようになってしまいました。暗号資産(仮想通貨)を推奨することが悪いことと思ってしまう空気が流れているというのが実感としてあります。

 おそらく、冒頭に延べたような海外の動向により2~3年後には日本の政治家や大企業も再び暗号資産(仮想通貨)推進派になっていく可能性は高いと思います。ただ、これが外圧で変わるという受動的なものでよいのか、より主体的になることでまだ日本が暗号資産(仮想通貨)市場において世界の主要国になれる可能性はあるのではないかと強く考えています。

 日本の暗号資産(仮想通貨)市場が成長するためには以下の点がこれから重要になってきます。

(1)税制の変更
 現状では暗号資産(仮想通貨)の売却益は個人の場合は雑所得扱いになってしまいます。よって売却益に対しては最大55%の課税がされてしまいます。

 ここについては株式やFXのように申告分離課税にすることで課税を売却益の20%にしようという話は以前から出ていますが、中々実現が出来ていません。

 様々な関係者に提言を自分自身でしている中で、これが通らない要因としては「暗号資産(仮想通貨)の税率を20%にするということは、政府が暗号資産(仮想通貨)取引を推奨するということに繋がるから、それは出来ない」という点です。

 要するに最大税率55%から20%にまで優遇することに対して、優遇措置を取るための国民理解が得られないのではないかという理由です。

 この考えは実際には間違っており、暗号資産(仮想通貨)は出国税がかからないので、大口ホルダーは海外で法人設立をした上で海外の交換所に口座を開設し、その法人に対して貸付という名目で暗号資産(仮想通貨)を送付し、当該法人の口座で売却をすれば実質無税(シンガポールなどでは無税)で換金出来てしまうので、むしろ日本の税収を考えた際には逆のことをしています。

 税率については、欧米でもこれから再度明確に定義されて変わってくる動きがあるため、その機運をみて日本でも再定義されるのではないかと思いますが、むしろ日本が先駆けて『暗号資産(仮想通貨)の税率を5~10%にする。その代わり、海外に送付する際には出国税を3~5%程度課金する』などのような施策をすることで、世界中から多くの暗号資産(仮想通貨)が集まってきて、日本が世界一の市場になる可能性はあります。

(2)取扱通貨の増加
 現在、日本では各取引所が新規に暗号資産(仮想通貨)を上場させる場合には事前に認定自主規制団体である一般社団法人暗号資産取引業協会による審査が必要になります。

 このように審査を行うことについては、以前2017~2018年に詐欺コインと言われる実態を伴わないICOが多く行われたことからも必要だと考えています。

 しかし、現在は多くの暗号資産交換業者(仮想通貨交換業者)は金融機関水準の管理態勢が求められており、内部監査体制を含めて相応の体制を敷いて経営をしています。

 ビットポイントでも新規暗号資産を取扱う場合には、当該プロジェクトの調査やトークンの技術的評価、当社で取扱うことの技術的リスクやカバーヘッジのリスクなど非常に多岐に渡り考察を行い、外部調査機関での調査を含めて最低でも2~3ヶ月間のデューデリジェンスを行います。

 調査には多額の費用もかかり、ここで総合的に取扱に問題がないと判断したもののみを取扱申請として提出するのですが、そこからさらに協会の方でゼロベースでの審査になります。

 重複した確認をすることも重要ですが、暗号資産(仮想通貨)のデューデリジェンスは通常の企業のデューデリジェンスとも内容が異なります。そのため、申請をした暗号資産交換業者(仮想通貨交換業者)がどのようなデューデリジェンスを行ったのかを精査することの方が重要であり、また、そこで事業者のデューデリジェンス力が評価出来ます。

 適切なデューデリジェンスをしている事業者であれば、より多くの暗号資産を上場でき、逆に簡易なデューデリジェンスしかしていない事業者であれば、新規の取扱がなかなか出来ない。ここで必然的に差異がついてくるので、より事業者側にリスクを持たせて新規の暗号資産(仮想通貨)を上場できるようにした方がよいと考えています。

 今、日本国内で最も多くの暗号資産(仮想通貨)を取扱っているのはコインチェックですが、それでも14種類の暗号資産(仮想通貨)になります。バイナンスのように160種類以上の暗号資産(仮想通貨)の取扱は必要ないかもしれませんが、コインベースでも44種類の暗号資産(仮想通貨)を上場しており、日本でも早期に30~50種類の暗号資産(仮想通貨)は取り扱えるようになることが、市場を刺激することに繋がると思います。


 その他にもレバレッジ倍率などについても思うところは多々ありますが、実はここに書いた2つのことだけが実現するだけでも、再び日本が暗号資産(仮想通貨)取引の中核になれる可能性は高いです。アメリカや中国がブロックチェーンそして暗号資産(仮想通貨)を国家戦略の1つに置いている中で、日本がどのような戦略を講じられるかが問われているのではないでしょうか。

4.結局、ビットコインは買いなのか?

 ここまでにビットコインの市場動向やその可能性などを書いてきましたが、結論としてビットコインを買うべきなのか、それともまだ買わない方がいいのでしょうか。

 買うための理由は色々とあります。今後の価格上昇可能性があります。ビットコインは0.0001BTCからでも買えるので、300円あればビットコイン投資を始めることが出来ます。口座開設や口座管理料もかからないですし、多くの取引所が口座開設キャンペーンで口座開設をするとビットコインがもらえるキャンペーンもしています(ちょうどビットポイントもやっていたので紹介します)。

 まずは投資することにリスクがあったら、上記のように無料口座開設でもらえるビットコインの価格動向をみて、試してみるというのもいいかもしれません。

 ただ、だからといってビットコインを買う必要があるか?と聞かれたら、それはそこまで必要性はありません。まだまだ新しい市場であり、誰も気付いていないリスクがあるかもしれません。様々なポジティブな見方もありますが、当然にネガティブな見方も多くあります。

 考え方としては『No Music , No Life』のようなものでよいのかなと思っています。

 一般的に『No Music, No Life』は「音楽がない人生なんて、人生じゃない」と訳されますが、実際には「音楽が無くても人生は成り立つ。でも、音楽があった方がより豊かな人生になる」という訳が正しいのではないかと考えています。

 なので、まさに『No Bitcoin, No Life』です。ビットコインを持っていなくても幸せな人生は送れます。ただ、ビットコインを持っているとまた人生にスパイスが加わるかもしれません。

 一般社団法人暗号資産取引業協会の調査によると日本国内の暗号資産交換業者に預けられている資産は2020年10月時点で5135億円(法定通貨1230億円、暗号資産3905億円)であり、口座開設数は363万件のようです。この数を多いと捉えるか、少ないと捉えるか。捉え方によって、考え方そして取るべき行動が変わってくると思います。

 2020年12月20日 小田玄紀


 




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