WebX2024が果たした役割
小田玄紀
昨日・本日と日本最大級のWeb3イベントであるWebX2024が開催されました。正確にはサイドイベントが今週月曜から続いており、また、今週末まで関連イベントがあるために広義の意味でのWebXはまだ続いているのですが、メインイベントは滞りなく開催されました。
今回は15,000人近い申し込みがあり、また、海外からの参加者が4000~5000人となるなど、まさに日本を代表する国際的イベントとなりました。
国内外の政治リーダーそしてビジネスリーダーが登壇し、また、多くの企業がスポンサーとしてこのWebX2024を共に創り出すことが出来ました。
| WebX2024 | ASIA’S LEADING WEB3 CONFERENCE (webx-asia.com)
今回は私自身もセッション企画や登壇者調整などにも携わらせて頂き、参加者にとって実りあるイベントにすることが出来たのではないかと実感しました。
今回、直接的にモデレーターをしたセッションは「日本のWeb3戦略と展望」というテーマで自民党の平将明先生と越智隆雄先生に登壇頂き、暗号資産市場に日本政府としてどのように向き合っていて、これからどうするのかということを語って頂きました。
Web3業界に関わる人であれば平先生の功績を知らない人はいないと思いますが、今回、越智先生も登壇頂いたことは非常に意義があることだと考えています。
日本国内の暗号資産口座数が1000万口座を超え、また、アメリカ・ロンドン・香港などで現物ビットコインETF/イーサリアムETFが承認されてきた中で、暗号資産の社会的役割は確実に変化をしています。
そのような中で、「金融としての暗号資産」について、これまでとは一線を画する考えを行っていく必要が出てきます。
「Web3としての暗号資産」そして「金融としての暗号資産」この観点から現状の課題認識そしてこれからの取組みについて、ざっくばらんな見解を語って頂きました。
特に、2017年~2018年にかけてはビットコイン取引量の50%が日本円で行われるなど日本は文字通り、暗号資産の中心的存在でした。それが、現在では暗号資産取引量の1~3%程度しか日本では取引がされていません。300兆円規模の市場において、わずか1%の3兆円しか日本の交換業者に預託がされていない事実があります。
もちろん3兆円という市場規模も大きいのですが、本来のポテンシャルはもっと大きいです。この事実を認識し、海外に流出してしまった資産をどのように日本に回帰させていくのか、これは産業復興という観点からも重要なテーマになります。
この課題を解決していくために重要なテーマは3つであり、①個人の所得税を含めた税制改正、②レバレッジ倍率の引き上げ、③暗号資産ETFの承認を実現していくことで、大きく市場環境は改善します。
ただし、仮にこの3つが正しいことだとしても、ただこれを主張するだけでは政策は変わりません。私も長年、暗号資産をはじめとして多種多様な産業において事業開発をしてきた身として、ルールメイキングの複雑さは肌身で感じています。
自らの主張が実現しない場合、そこには必ず要因があります。「相手が理解してくれない」とその要因を他責にしていても、事態は改善されません。それはただ、国会の周りを街宣して非難しているのと変わらない行動です。
暗号資産市場に対して慎重派・懐疑的な人が未だ一定以上いることは事実であり、それはセキュリティ対策やマネーローンダリング対策そして詐欺や犯罪の一部に暗号資産が一部使われているという事実があり、これを業界としても受け入れる必要があります。その上で、市場規模が今の10倍~100倍になったとしても、こうしたリスクが発生することをコントロールできるかどうかを真剣に考えていく必要があります。
そして、その説明責任を適切に果たしていくことが、先に掲げた重要テーマを実現していくことに繋がっていきます。
また、大事なことは「暗号資産業界のためにルールを変える」のではなく、「日本社会そして日本経済(または世界経済)のために暗号資産業界が貢献していくためにルールを変える」という認識に立つことです。
手前味噌ではありますが、私自身、議員の先生方と話をする際には「陳情や相談は絶対にしない」ということを自己ルールで決めています。あくまでも私の役割は市場の現状や課題を適切に共有することであり、また、その課題を解決するための仮説を提示することに限定しています。
大事なことは、共に課題認識を持ち、その解決に向けて官民連携して動くことです。これまで暗号資産業界に限らず、いくつかの業界でルールチェンジを実現してきましたが、この姿勢は変えたことがなく、それはこれからも同様です。
登壇前の舞台裏での写真ですが、課題認識と解決すべき方向性は見えています。後は、どのようにこれを実現していくかです。この点をこれからも議論を深めていき、日本社会と日本経済をより豊かにしていくためにWeb3の中核的存在に日本市場を再び回帰させていきます。
また、今回のWebX2024でSBIグループ代表の北尾さんに登壇頂いたことも、多くの方から評価を頂きました。
北尾さんからはSBIグループの成長軌跡とWeb3に対する期待を余すところなく語って頂きました。
SBIグループ創業から25年が経ちましたが、間違いなく日本企業で飛躍的成長を実現させた企業の1つです。顧客基盤は5000万件を超え、証券・銀行・ベンチャーキャピタル・アセットマネジメントそしてWeb3業界において複合的な事業を成功させています。
Web3領域においても、暗号資産交換業、NFTプラットフォーム、マーケットメイク、セキュリティトークン、国際送金、ステーブルコイン、メタバースまでほぼ全ての領域をカバーしています。
今回、北尾さんに登壇頂いた目的はいくつかありますが、特に大きな点として2つの発表を頂きました。
1つがOASYSとの戦略的事業提携です。OASYSは日本発のブロックチェーンゲームのプラットフォームであり、これからWeb3領域においてはゲーム領域においてマスアダプションが一気に進む可能性があります。
特に日本のIPは価値が高く評価されており、このIPを適切に流通させるブロックチェーンプラットフォームとしてOASYSの果たす社会的役割は大きなものがあると考えています。
SBIグループとしてWeb3のマスアダプションを実現させるためにOASYSをサポートすることとし、この提携を発表しました。
多くの方がこの提携を歓迎して頂きましたが、私としてもOASYSが価格だけでなくその本質的価値を高め、特に日本の知財が適切にWeb3ゲームとして社会実装されることに価値があると考えているため、この実現をサポートしていきます。
もう1つが来年のWebX2025をSBIグループが全面的にサポートすると共に、WebX OsakaをSBIグループとWebXがタッグを組んで開催することを北尾さんに発表頂きました。
WebX2025は来年も東京で開催される予定です。東京開催の前に、万博開催地である大阪でWebX Osakaを共同開催し、国内外のWeb3キーマンを大阪に集結させます。
国際金融都市としての大阪の魅力をより世界に対して発信すると共に、多くの人に万博を体験してもらい、最先端のテクノロジーに触れてもらうことを実現していきます。
WebXは1つのイベントですが、これをただのイベントと評価するのはあまりに勿体ないことです。継続的に開催されるWebXを活用し、この1年間で何を実現し、どのように社会を変えていくのかを再認識する場にしていくことが重要です。
今、暗号資産業界に求められていることは『暗号資産の再定義』です。業界関係者自身がこれまでの常識に囚われるのではなく、適切に変化に対応していくことが必要です。
Web3というトレンドを創出してきた事業者自身が適切に変化に対応し、新たな市場を創っていけるかどうかが、日本そして世界のWeb3市場を100倍以上の規模に成長させていくことに繋がりますし、その結果として社会と経済をより豊かにしていくことに繋がります。
WebX2025で広がる景色がどのようなものになるのか、明日からの我々の思考と行動に委ねられています。
2024年8月29日 小田玄紀