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変化の先にあるもの

 小田玄紀です

 2024年は『選挙の年』と言われていました。そして、まさに『選挙の年』を象徴するように日本・アメリカ・ヨーロッパ各国にて政治の世界に大きな変化が起きました。

 今回の選挙の結果を前向きに捉える人もいればそうでない人もいます。ただ、この結果とその結果がもたらす変化の影響に適切に対応していくことが何よりも大切なことです。

 一つ、多くの人がポジティブに認識するべきことは今回の変化は目に見える形で訪れたということです。多くの変化は気付かない内に起きていることが多く、そのため変化に対応する必要性を身体レベルで意識するに至らない場合が多くありますが、今回は変化が明らかなため、その変化に気付くことが出来ました。社会も変わる中、自らがどう変わるかが求められています。

 日本の政治も衆議院で自公が過半数割れという結果になりました。ただ、今回の過半数割れは2009年の政権交代とは異なる状態ではないかと考えています。

 社会が多様化し、政治家に求められる対応領域も広がってきました。今の世の中はどこか満点主義になっていて、一つのミスや欠点が強く非難されがちですが、これだけ社会課題が増えてくる中で全てに対して合格点以上の対応をしていくことは困難です。

 それは政治家も政党も同じです。今回の選挙で国民民主党の躍進は日本社会にとって大きな意味があったのではないかと思います。それは近年に例を見ないほど、対立型ではなく解決型の選挙姿勢を貫いたためです。

 国民民主党は外交や防衛は自民党に委ねるべきだと明確なスタンスを表明しています(これもあり、野党政権になることのリスクを表明しています)。これまでの日本の政策が高齢者に偏重していて、若者や現役世代の勤労意欲が削がれてしまい、これが結果的に日本社会が無気力になり将来的に日本財政を支える基盤が脆弱になってしまうからこそ、『現役世代の手取りを増やす』ことを掲げている訳であり、この考え自体は今の日本には求められていることの一つだと思います。

 財政・外交・防衛といった一定の連続性や国際社会との協調が求められることについては大同が求められますが、個別の政策については、それぞれの政党が強みを活かしあって限られた予算の中で費用対効果がより高い政策を実現していく政治・社会がむしろ健全かもしれません。

 それぞれの政治家、それぞれの政党が自らの強みとする領域を政策として明確にし、その実現是非を問うことはまさに民主主義の原理なので、今回の選挙を踏まえて政策ベースの討論がされることを期待します。

 なお、今回の選挙結果は明らかに目に見える変化でしたが、目に見えないでいつの間にか徐々に変化していることもあります。

 その中の一つが電気代です。

 これは5年ほど前に作った資料ですが、今から20年前の2004年は電気料金が平均18円/kWhでした。ここでいう電気料金は『基本料金+従量料金』の合計であり、要するに電気料金合計を使用量で割った単価です。

 それが今では家庭用電気は32円/kWhとさらに8円高くなっています(資料では6円とありますが誤植です)。

 そして、ここにさらに再エネ賦課金が3.46円/kWhと加わってくるのでさらに10%程電気代は上がります。

 そして、さらに、これは多くの人が知らないことなのですが、ここに燃料調整費が加わります。この燃料調整費がいくらかというと、、、

 電力会社によって異なりますが6-9円/kWhです。電気料金の20-30%をさらに上昇させる要因になっています。

 今の平均点な家庭の電気料金は『基本料金+従量料金+再エネ賦課金+燃料調整費』を合算した電気料金合計を電気使用量で割ると平均40円/kWhを超えると思います。

 燃料調整費は原油・LNG・石炭の市場価格を元に計算され、各電力会社の調達割合などに基づき価格が決まります。

 以前のように地域電力会社が小売独占しており、総括原価方式が認められていた時代にはこの方式で良かったと思いますが、今は電源も多様化し、また、電力会社の取引形態も多様化しています。しかし、従来の燃料調整費制度が残っており、これが電気料金に大きく影響を与えてしまっています。

 私が2015年に小売電力事業を始めた際に、当社は手探りで進めていましたが、2016年頃にこの課題に気付き、日本の新電力で初めて『独自燃料調整費』というものを導入しました。

 これは新電力の電源調達はJPEXのような電力卸市場が中心であり、この市場価格に連動させて原価の実態に合わせたものになります。

 今では多くの新電力がこの方式を採用していますが、当時はこんなことあり得ないと強い反発を受けました。しかし、電気事業法を確認し、また、元々の燃料調整費の制度趣旨を確認したところ、むしろ実態に合わせて変更することが顧客目線でも事業者目線でも合理性があり、適切に顧客告知をするなどプロセスを踏んだ上で導入を決断しました。

 結果的に旧地域電力に比べて相応に安い電気料金( 時期にもよりますが15-20%以上安い時もありました)を提供することができるようになりましたし、事業としても収益が安定しました。

 この燃料調整費制度の見直しは大手電力会社にとってもプラスになる可能性があります。電力会社の収益は燃料調整費制度によっても大きく左右されます。たとえば利益が出ている時に、市場価格が上がった場合は電力会社としては値上げの意図がなくても電気料金が上がってしまいます。そして、事情を正しく理解しないマスコミ報道では『電力会社が利益が出ているのに電気料金を値上げ!』と報道されてしまうのです。

 再エネ賦課金の廃止を主張する政党はいますが、燃料調整費制度の見直しを掲げる政党はまだいません。これは電気についての正しい知識がまだ事業実態ベースで認識されていないためです。

 再エネ賦課金の場合は既にFITを根拠として再エネ投資をした投資家や事業者がおり、そうした人達の財産権侵害に繋がるために税金での負担か消費者負担かの違いになるだけであり、支出の削減には繋がりません。

 燃料調整費や容量市場拠出金(こちらは今回は触れませんが年間2兆円ほどの大きな負担が発生します)など改善できる余地はまだあります。

 なんといっても日本はエネルギー赤字であり、今は毎年25-35兆円のエネルギー赤字となっています。安定電源の開発を含めて電源多様化をすることが日本経済・財政にも大きな意味をもたらします。

 先日、サウジアラビアを訪問しました。サウジアラビアは世界最大級の産油国です。石油という意味でのエネルギーもありましたが、それ以上に国家としてのエネルギーがありました。それは政府が掲げるビジョンであり、また、そのビジョンを官民連携して実現させようとするエネルギーです。

 しかし、改めて海外から日本を見ると日本の価値そして可能性に気付かされます。

 観光資源の多さ、教育水準、多様な公共交通網、医療体制、表現の自由、食文化の充実、金融資産など日本がまだまだ誇れるものはあります。

 個人金融資産も日本は2199兆円の資産があります。アメリカは1京3000兆円程の金融資産と圧倒的ですが、それでも世界2位の個人金融資産です。これも大きな価値です。このうちの半分程が預貯金であり適切に運用されていませんが、仮に個人金融資産が適切に運用されて年間4-5%の運用益が出ると80-100兆円になります。

 『預金から投資へ』というスローガンが言われてきましたが、このスローガンが発せられても投資は増えませんでした。むしろ『個人金融資産を3000兆円へ』などのポジティブなスローガンに変えて、この実現のために金融商品の多様化や投資家保護制度の拡充などをするべきです。

 なお、個人金融資産にはReitなどは含まれれますが、不動産現物は含まれません。日本には個人所有不動産で2800兆円程の資産があります。このうち270兆円程が投資対象不動産とされています。現在は45兆円程が金融不動産となっています。

 投資適格不動産に限定しても130兆円、収益不動産全体だと230兆円が個人金融資産として加わる可能性があり、3000兆円の実現は比較的短期に可能です。

 また、日本ではライドシェアがこれから本格的に導入される機運も出てきましたが、もう一足飛びに無人運転に進めた方が人口問題を考えても良いのではないでしょうか。

 サンフランシスコでは2年ほど前から試験的に走行していた無人自動車が今ではライドシェアの10%近くになっているようです。

 ライドシェア慎重派の主張は適切に教育・管理されたドライバーでないと犯罪が起こるリスクが主にあげられています。むしろ、これからは知らない人に運転させるリスクの方が言われる時代になるかもしれません。

 選挙のネット投票もこれから本格的に導入を検討されるとますます社会は変わる可能性があります。上場企業の株主総会もネット投票がメインになりつつあります。

 これは自民党も若手議員が中心に模索をしてきましたが、党内の慎重派の意見があり実現が出来ず、仕方なく今は海外在住邦人に限定して進めることが検討されていますが、投票率をあげてより広く国民から民意を問うために積極的な議論をするべきです。

 今年実施された立憲民主党の代表選ではネット投票が認められていました。そのため、この点については立憲民主党も賛成する可能性が高いです(反対すると自らの代表選を否定することになります)。若者を含めて投票率かあがるので他の政党も賛成に回るのではないでしょうか。

 つらつらと脈略のないことも書きましたが、明らかな変化が生じた今だからこそ、変化に向き合い、その変化の先に新しい日本を見据えて動いていくべきだと思います。

 サウジアラビアがサウジ・ビジョン2030を掲げたように、ジャパン・ビジョン2030を打ち出し、その実現のために各政党がそれぞれの得意分野で政策を掲げ、また、官民連携で取り組んでいくことが出来れば、日本はより良い社会になるはずです。

 2024年11月9日 小田玄紀

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