経営に活かしたい先人の知恵…その8
◆失敗から学べる人と企業が成長する◆
中国古典・『漢書』に、「前車の覆るのは、後車の戒めとなる(前人の失敗をみて、後人は戒めとすべき)と言われております。始皇帝の秦は極めて速やかに亡びてしまいましたが、いかにして亡びたかの轍の跡は見ることができます。しかるに、その轍の跡を避けないならば、後からゆく車もすぐに覆ることでしょう。国家の存亡、治乱の鍵は実にここにあるのです」(賈誼)とある。
この教えは、失敗から学ぶことの大切さを説いている。事業家で成功を手にできた人も、多くに共通するのは、失敗から学んでいるということだ。
IBMの二代目経営者、トーマス・J・ワトソンは、「成功を手にするためには、失敗を2倍に増やすこと。失敗は成功の敵と思われているが、それはまったく違う。失敗して落胆するか、あるいはそこから学ぶかだ。前進してできるだけ多く間違いをするのがいい」と言っている。日本でも優良な経営者は、失敗を糧にして成功を手にしている事例がよく見られる。
本田宗一郎は、「成功というのは、99%の失敗を土台にしている」と口にしていたし、日本マクドナルドの創業者藤田田は、筆者のこれまで失敗されたことはなかったのですか、との問いに、「思いが及ばなくてうまくいかなかったことはある。世間ではそれを失敗というのだろうが、私は違う。次に思いを及ばせてチャレンジするだけのこと。世間で言うところの失敗は、私にとっては成功への第一ステップにすぎない」と答えている。
最近の経営者で、失敗を活かすことに長けているのは、ユニクロ創業者の柳井正だ。柳井の著書「一勝九敗」に次のような記述がある。
「経営は試行錯誤の連続で、失敗談は限りなくある。10回新しいことを始めれば9回は失敗する。しかし、その9回の失敗が1回の大きな成功をもたらしてくれる」
柳井は、1997年に新業態として始めた『スポクロ』『ファミクロ』を両店合わせて35店舗まで展開したが、1年以内に撤退している。また、食品事業での失敗も経験している。今のユニクロは、海外での売上、利益が国内を越えているが、初期の頃の海外出店にはことごとく失敗している。しかし、そうした失敗体験がなければ、今日のユニクロはなかったとするのが、柳井の考えだ。
失敗から学んで成功するのはスポーツ選手も変わらない。
サッカーのデビット・ベッカムは、「私のフリーキックというと、みんなゴールが決まったところばかりイメージするようです。でも私の頭には、数えきれないほどの失敗したシュートが浮かびます」と振り返り、バスケットのマイケル・ジョーダンは、「私は、9000本以上シュートを外し、ほぼ300試合で負けた。ウイニングショットを任されて外したことは26回ある」と、ナイキのCMで話している。
では、失敗を成功の糧にするためには、どのような取り組みが必要なのか。
本田宗一郎は、「失敗した後、反省はしないといけないが、なぜ失敗したかを、科学的に分析し、また挑戦すればいい。次も失敗するかもしれないが、また分析して、再度挑戦しろ、挑戦⇒失敗⇒反省(分析)⇒挑戦⇒失敗⇒反省(分析)…の繰り返しが、画期的なものを生み出す」と言っている。