代表という特別な場所
今回は、僕が参加している日本代表の活動について書いていく。
日本代表は特別な場所だし、大切な環境なのは言うまでもない。ただ、1年の8割から9割は所属クラブで厳しいレギュラー争いに身を置きながら、自分の成長について意識している。普段から代表について考えているわけではない。
僕がよくやるのは、代表戦は向かう飛行機のなかで意識を切り替える作業だ。
例えば、日本への移動は12時間前後のフライトになる。その時間の長さをマイナスにとらえる人もいるかもしれないけど、僕にとってはポジティブな時間だったりもする。飛行機のなかではスマホの電波もつながらないから、何かに気を取られることない。じっくり考えるのに最適な環境だからだ。
今回はドイツの隣国オランダで試合が行なわれるので、移動距離も時間も短い。10月3日のハノーファーでの試合の翌日、自宅でゆっくり過ごしながら代表での活動について僕は考えていた。
1ゴール、1アシストを記録できた3日の試合では左サイドのMFでの出場だったけど、最近はトップ下でプレーすることが多い。だから、代表でサイドのポジションを任されたときのことをイメージして、クラブにいるときとは異なる味方へのサポートの角度や視野などについてイメージしていった。
2015年にコンスタントに代表に選ばれるようになって以降、11ヶ月も代表の活動から離れたのはもちろん、初めてのことだ。
最後の代表戦となった昨年の11月、現在のハノーファーで指揮を執るコチャック監督が就任した。だから、代表戦が終わってドイツに戻ってすぐに、監督室に呼ばれて話をしたこともよく覚えている。
コチャック監督が来てからの僕は、それ以前よりも、ゴールに直接絡む回数が一気に増えた。フィジカル的にも、戦術的にも、良い状態にある。この11ヶ月で学んだことを、代表チームでどれくらい活かせるのか楽しみだ。
ただ、もう1つ、僕が代表に参加するときに楽しみにしていることがある。
それが、限られた時間で得られる刺激だ。
代表はクラブでの日常を有意義にしてくれる、2つの刺激をくれる場所なのだ。
1つ目の刺激が、向上心だ。
代表は本当に向上心の強い選手たちが集まっている。特に最近は若い選手も増えて、その傾向が強まっているかもしれない。
チームメイトのことをリスペクトしているし、試合が始まればお互いに助け合うのは当然だ。ただ、それ以外の部分ではかなり激しい争いがある。
代表に参加して感じるのは、「負けず嫌いの選手の集まりだな」ということ。
今回の合宿で、29歳の僕はMFの選手のなかで最年長になった。
だから、バランスを見たり、一歩引いたところから全体を見た方がいいのではないかという意見もあるかもしれない。
もちろん、ピッチを離れれば、若い選手の相談に乗ったり、代表に慣れていない選手をサポートする必要もあるとは思う。
ただ、ピッチの上で、丸くなるつもりはない。
この1年間で磨きをかけてきたのは、アタッカーとして点を取ることや、アシストを増やすことだ。
僕はまだまだ「アタッカー」として日本代表に貢献していきたい。
およそ1年近く代表戦が行なわれなかったから、代表での序列のようなものは取り払われたと思う。横一線のフラットな状態でのレギュラー争いになるはず。だから、楽しだ。
もう1つの刺激が、広い視野を与えてくれるということ。
このnoteの読者のみなさんならわかるように、僕は目の前の練習や試合で常に全力を尽くしている。普段は、ハノーファーというチームが勝つために、自分が成長するために、何をすべきかについて考えている。
ただ、それだけだと、視野が狭くなりがちだ。
たしかに、チームを2部から1部に上げるためにはどうしたらいいかとか、週末に対戦するチームの弱点を見ることを考えたりもするのは大切なことだ。
ただ、もっと広い視野で状況を見渡すと、2部のチームで得点やアシストをしているだけで満足してはダメだという事実に気がつく。例えば、代表チームに行けば、リバプールに所属する(南野)拓実がいる。彼が普段から争っているのは、60億とか80億円の移籍金が支払われるような選手だ。
そこでしっかりと練習していれば、僕がハノーファーで普通に練習している以上のものが得られるのは、事実だと思う。
あるいは、他の国やリーグの話。
CLに出てる選手もいる、今まで自分が経験してない話を聞くと、ハノーファーやブンデスリーガに集中していたものから視野が一気に広がることに気づく。
だから、「いつまでも2部でやっていたら成長の速度も遅くなってしまうぞ」と自分に言い聞かせられる。そして、「何としてでもチームを1部にあげて、もっと厳しい環境に身を置かないといけない」とこれまで以上のモチベーションやプレッシャーを自分に与えられるのだ。
ドイツに移籍する来る前の1~2年は、「早くヨーロッパのクラブに移籍しないといけない」と焦っていた。
でも、年齢を重ね、経験を積んだから、そのように焦って自分のペースを崩すことはない。
淡々と自分の現状をみすえて、将来の成長のために必要な努力や環境について、今は考えられている。
思い出すのは、今から4年前のこと。
2016年、W杯のアジア最終予選で4戦連続ゴールを決めて、僕は代表で先発の一員に入れるようになった。
でも、2015年に僕が代表戦でスタメンにコンスタントに名を連ねていることを予想していた人はほとんどいなかったと思う。
若くて才能のある選手が多い現在の状況での僕に対する世間の評価は、ひょっとしたら当時と少し似ているのかもしれない。
でも、僕は落ち着くつもりはない。代表チームのために働くこと前提に、代表の中心選手としての立場をつかみにいくつもりだ。
今回の合宿をチームとしても、個人としても良いものにして、良いリスタートにするつもりだ。