夫婦だって恋人
おじいちゃんとおばあちゃんの何気ない会話にて
仕事帰り、忘れものを取りに行ったついでに、おばあちゃんが夜ご飯をご馳走してくれた。
いつもは別のカレーなんやけどねと言いながら、中辛のバーモンドカレーをついでくれた。
デザートも用意してくれてて、前の日に僕の母親とおじいちゃんと3人で買いに行った梨を出してくれた。
60年主婦をやってきた右手は、喋りながらでもすいすいと皮を剥いた。
「あら、切れずにできたわい」と言って、一本に続いている梨の皮を見ながら、真昼の波の立った海のように皺をきらきらと光らせていた。
それを聞いたおじいちゃんは、「そりゃお母さん、いいお嫁に行けらい(行けるね)」と、テレビを見ながら言った。
「またお父さんとついなん(同じようなの)やったらどうしよか」と言うおばあちゃんの横顔は、すこし伏し目がちで少女のようなあどけなさが残っていた。
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