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公認会計士になると不幸になる人

1.はじめに

三大国家資格と言われる公認会計士試験。

あなたはどういうイメージをお持ちだろうか。


難関資格であるが故に、合格すれば「高収入」、「地位・名誉」、「安定」が約束されるかのように信じている人も未だに多く、受験要件もないことから、そういう一般的なイメージに釣られてなんとなく目指し始めてしまう人が少なくない

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これについては、確かに「収入」の面では新卒でも年収400万円〜500万円くらいだし、高年次のシニアスタッフなら1000万円前後稼げて、マネジャー以降は1000万円を超えるので、そこそこ稼げる職業ではある。

「地位」という面では、一応「先生」と呼ばれるような仕事だし、「安定」という面では「公認会計士資格」があることで有利に動くことができる面もある。


ただ、現実としてはその「収入」の3割〜4割が残業代や賞与だったりするし、「先生」だなんて本当に思っている経理担当者なんていまずいないし、「公認会計士資格」が有効なフィールドも限定的だ。

つまり、一般的なイメージと近い部分はあれど、必ずしもそのイメージ通りではないのだ。


だとしても、全ての会社で「会計」が不要になることはないし、会社のビジネスの全体を検討するんだから、公認会計士の資格があればいろんな方向で活躍できるだろうし、一旦公認会計士になっておくことで将来の可能性が広がるだろ!というような意見もある。

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これについては、広がる道もあれば、狭まる道もあるということが結論だ。


公認会計士の道を選んだということは、他の道を選ばなかったということだ。

もし、そもそも他の道を考えているのなら、公認会計士を経由することでその分「遅れる」ことになることを理解すべきである。

当然難関資格を取ったからオールマイティに仕事ができるようになるわけではなく、公認会計士は「会計・監査の専門家」であって、その道に詳しくなればその道が拓けるのは確かだ

一方で、他の分野に関しては監査の一環として検討することはあれど、監査をする中で経営戦略がわかるようになるわけでもないし、ITや財務がわかるようになるわけではない。

そして、何故かこの当然の理屈が理解できない人が少なくない。

公認会計士になったことで得られるのは、あくまでも公認会計士としてのキャリアでしかないのだ。


このように、イメージと現実は色々な点で異なるので、なんとなく受験しようと思っている人は受験するかどうかを決める前に、一旦立ち止まってほしい


公認会計士を目指すかどうかを決める前に気をつけて欲しいポイントは、

・公認会計士になって得るものの対価として当然失うものがあり、それは決して軽いものではないこと

・公認会計士になっても決して安泰ではないし、合格後こそ物凄く大変なので、しっかり考えた上で受験勉強に臨むべきということ

ということである。


そして、それを加味した上でも「公認会計士を目指すべきなのかどうか」という問いに対する判断軸として筆者が考える「最も大切なこと」について論じたい。


2.公認会計士試験とは

(1)公認会計士ってなにをする人なの?

公認会計士とは何をする人なのか。

公認会計士法には「公認会計士の使命」として、以下のように規定されている。

公認会計士は、監査及び会計の専門家として、独立した立場において、財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを使命とする(公認会計士法 第1条)

これを解釈すると、

公認会計士という「専門家」が、会社が会計基準等に基づいて作成した「財務書類(決算書)」に対して、「監査」と呼ばれるチェック作業を通じてそれが正しいかどうかを判断し、世間に対して「正しいかどうかの報告」をすれば、世に出ている財務書類が全体的に信頼できるものになっているよね。

そうしたら企業の株を買ったり、企業に金を貸したりする人が、投資するかどうか判断する時の材料として財務書類を信頼して利用できるから、投資が促進されて経済も発展するよね。

公認会計士はそれに貢献することが使命だよ。

ということだ。

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端的に言えば、公認会計士というのは「会計・監査の専門能力を駆使し、会社が作成した財務書類のチェックをして、正しいかどうかを判断して報告する人」ということである。


(2)公認会計士試験ってどんな感じ?

公認会計士試験の受験者の大部分はいわゆる早慶やマーチの学生・卒業生で、慶應大学出身者の合格者数がトップという状況がずっと続いている。

これだけ聞くと、「頭良くないと受からないんだろうな」というイメージを持つかもしれない。

難関試験と言われてはいるものの、高校生合格者が出ていることからもわかるように、社会人経験がないと受からないとか高偏差値大学を卒業していないと受からないとかそういう類のものではなく、「ちゃんとやれば誰でも合格できる」試験である。

一般的な受験生は勉強に専念できる環境を作って、1日8時間から10時間前後の勉強をしている。

また、資格情報サイトや資格予備校の見解等によると、一般的に合格までに3,000時間から5,000時間前後の勉強時間を要すると言われており、筆者の感覚からしても実際それくらいは勉強する必要があると感じた。実際3,000時間で合格出来る人はかなり稀だろう。

また、不合格となってしまえば、そこからまた1年間勉強漬けなので、毎年プラス3,000時間くらいのペースで勉強時間が増えていくことになる。

そのため、合格までに8,000時間とかそれ以上とか、莫大な時間がかかっている人もいるし、それだけかけたうえで合格せずに撤退している人も沢山いる。


なお、講座の中には「1年コース」なんてものもあるので、ちょっと勉強に自信がある人なんかは1年程度の期間での合格を想定している人もいるかもしれない。

これについては予備校のパンフレットを見ればわかると思うが、合格するだけでパンフレットに写真が乗り、「現役一発合格」と「一発合格」はその旨が注記される。

つまり、2年一発でも注記されるレベルなのに、1年で合格しようというのは、受験者の中で相対的にどれくらいのレベル感かということは容易に想像できるはずだ。

そこは自分の能力水準と照らして検討してほしい。


とは言え、しっかり集中して必要時間分勉強すれば合格できるので、ちゃんと勉強する覚悟さえあれば、合格できるかどうかについてはそこまで気にする必要はない

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(3)受験者・合格者が錯覚にとらわれやすい

めでたく公認会計士試験に合格すると、就職して働き始めるまでの猶予の時間は「特権階級」に所属しているかのような気持ちで過ごすことができる

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最近はそうでもなくなってきたが、公認会計士不足に喘ぐ監査法人から熱烈な採用オファーが来るので、なんだかエリートになったような気分になれる。人材獲得競争の一環として、各法人でしばしば合格者のための無料の飲み会が開催されて、リクルーターの可愛い先輩やイケメンの先輩と喋ったり、ヨコの繋がりを作ったりしながら遊べる。

また、学生合格や短期一発合格をすれば受験仲間内では一時的に優越感に浸れるので、後輩に上からアドバイスをすることもできる。

更に、非常勤の学生として監査法人では時給の高いバイトができるので、学生にしては金銭的にも充実した日々を送れる。

このように、数千時間も勉強した特典?として一時的に「俺スゲー状態」を満喫することができるのだ。

だが、そんな状態も残念ながら入社までである。

入社すれば他の従業員もみな会計士だし、試験がどうこうという低い次元を圧倒的に超えて頭の良い人に出会うので、「何歳で合格しました」とか「何年で合格しました」とかなんて、むしろそんな価値観を持っていることが恥ずかしくてとてもそんな話を切り出す気にもなれなくなる。

本質的には、公認会計士試験に合格するということは、単に監査法人のゼロ次面接に受かったくらいの意味しかないのだ。



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3.公認会計士になる対価として失うものとは?

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