見出し画像

ウォーバーグ・ピンカスから学ぶ不確実性を抱える世界の生き抜き方

先日紹介した「ランチェスター戦略」に、「ウォーバーグ・ピンカスの投資9原則」というものが記載されていた。ウォーバーグ・ピンカスはニューヨークに本社を置くPEファンドであり、1966年からPEファンドの世界で生き抜いてきている名ファームである。

「ランチェスター戦略」に記載されていたウォーバーグ・ピンカスの投資9原則は、次の通りだ。

  1. 徹底的な調査

  2. 人物を重視

  3. 大きな資金的余裕の付与

  4. 経営権確保

  5. 企業連携の支援

  6. 役員に就任

  7. 果敢な見切り

  8. 投資先の分散

  9. 教訓の蓄積

個々の原則はどれも含蓄あるのだが、9つの原則を通底する考え方は、「自分たちでコントロールできる要素は徹底的にコントロールし、時流や属人性に左右されるような要素はリスクを受け入れ、(ベストエフォートの上で)基準を下回ったら潔く撤退する」というものだ。

例えば1つ目の「徹底的な調査」については、コンサルティングファームと連携しDDを行い、200-300件に1件しか投資しないという。お金と時間を使えば、調査を通じて大きなリスクは把握・回避することが可能であり、こういった「凡ミス」で足元を掬われないようにしている。「自分たちでコントロールできる要素は徹底的にコントロール」する要素の一つである。

一方で「時流や属人性に左右されるような要素はリスクを受け入れ、(ベストエフォートの上で)基準を下回ったら潔く撤退する」という要素は、2つ目の「人物を重視」と7つ目の「果敢な見切り」に色濃く反映されている。

同社の投資判断では、経営者が優秀でも、コンプライアンス意識が低かったりしたら受け入れないという。これだけ聞くとリスクコントロールの徹底の話に聞こえるが、逆に言えば結局は事業の良し悪しは経営者の実力に大きく左右されるという「属人性のリスク」を取っているということでもある。

見切りについても、撤退と判断したら取得した株式をタダ同然で投資先に渡し、早々に手を引くとのことだ。これはほぼ全損するということを意味するので、ファンドとしては非常に手痛い。それでも、自分たちでコントロール可能な要素をコントロールし切った上で、それでも事業が伸びなかったら、それは取ったリスクがリターンとして返ってこなかったと受け入れる。プロでも投資と事業に100%成功することはあり得ないので、失敗から得た学びを9つ目の「教訓の蓄積」という原則に沿って蓄積し、社全体として「リスクの取り方」をより高度にしていく。これによりトータルで勝つ、という考え方だ。

複雑性と不確実性を抱えるビジネス領域で生き抜く上で普遍的な要素が詰まっている原則である。

いいなと思ったら応援しよう!