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「問題解決」考②
前回は、「問題とは、あるべき姿と現状のギャップである」という定義からスタートして、あるべき姿と現状を明確に把握することの重要性を書きました。
それでは、あるべき姿と現状が明確になり、そのギャップである問題が見えてきたら、すぐに解決策を考えていけばよいのかというと、それだと上手くいかないことが多いというのが私の経験則です。ここで見えている「問題」はまだ表層的なものに留まっているからです。表層的な問題をを直接解決しにいっても、結局すぐに問題が再浮上してきてしまいます。故に、表層的な問題から深層へと潜っていき、「真の問題」「根本問題」と言えるようなものを掴んでいくことが重要です。
その「真の問題」を炙り出していくアプローチは、大別して2つあると考えています。帰納法的アプローチと、深掘型アプローチです。
「真の問題」を炙り出す方法その①:帰納法的アプローチ
帰納法とは、「個別的・特殊的な事例から一般的・普遍的な規則・法則を見出そうとする論理的推論法」を指します。簡単に言えば、いろんな事例を出して、そこに共通するものを整理していくということです。
問題の特定に照らして考えると、あるべき姿と現状のギャップとして出てきた「表層的な問題群」をズラリと一覧化し、そこに共通する要素を取り出していくことになります。表層的な問題が沢山挙げられていて、範囲も広く、一見すると上手く整理がつかない時に有効なアプローチです。
「真の問題」を炙り出す方法その②:深堀型アプローチ
表層的な問題を挙げていくと、明らかに偏った領域に問題が集中しているときもあります。そういった際に有効なのが深堀型アプローチです。
具体的には、表層的な問題として挙げられた事例について、事細かく深掘りしていくことになります。なぜこれが問題だと考えるのか。他の領域ではなくこの領域の方が問題だと考えるポイントは何か。より具体的にいうと、どういったシーンで問題が浮上するのか。一言一句を取り上げ、その問題が挙げられた理由や背景、具体例等をどんどん抽出していくのです。
このような深掘りをしていくと、「問題」として挙げられていたものは実は「現象」であり、その裏にはその現象を引き起こした「真因」があるということがわかってきます。これを特定していくのが深堀型アプローチです。
既に触れたように、どちらのアプローチが優れているということはなく、問題の性質や状況に応じて使い分けが必要です。多かれ少なかれ、どちらのアプローチも採用しながら問題を特定していくことも多いと思います。
どちらのアプローチをとるにせよ、重要なのは「表層」と「深層」、「現象」と「真因」を分けることです。多くの人が思いつく「問題」とは、海に浮かぶ氷山のようなものであり、見えている部分がその氷山を作り上げているわけではなく、目に見えない海の下にある氷塊(真因)が突起を押し上げて、氷山(現象)を作り上げているのです。表層や現象に飛びついて問題解決をしようとすると、ほぼ間違いなく失敗に終わるというのが、私の過去の苦い経験から言えることです。
問題解決における最重要ポイントがどこかと問われれば、私は「真の問題」を探求するこのプロセスだと答えます。「表層」と「深層」、「現象」と「真因」を分けるということは、言葉でいうと非常に簡単なのですが、実践するのは非常に難しい。問題解決に慣れていない時には、表層から深掘りをしていたと思っていたら別の表層に移っていただけ、ということもよく起こります。
これをうまくやる万能ツールはないのですが、私が経験的に獲得してきた「等身大のコツ」を、次の記事で説明してみたいと思います。
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