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「問題解決」考①
社会人になってから10年以上、コンサルティングファームや事業会社において様々な種類の問題解決について考え、実践してきました。その中で色々と気づきや学びを得てきて、最近ようやく自分なりの型のようなものが見えてきたので、複数回に分けてそれをシェアしたいと思います。
問題とは何か
そもそも、問題解決というときの「問題」とはなんでしょうか。これ自体が深遠な問いなのですが、セオリーとしてよく言われるのは「問題とは、あるべき姿と現状のギャップである」ということです。
ここで重要なのは、「今見えている欠点や不足が全て問題というわけではない」という点です。どんな人も、どんな組織も、どんな環境も、必ず欠点や不足があります。完璧な人も、組織も、環境も存在せず、ある面から見れば素晴らしくても、別の面から見れば大したことがないものです。「欠点がある」「不足がある」ことは当たり前であり、そのことを認識しても問題の把握にはなりません。
故に、「何に照して欠点や不足があるのか」という視点が必要です。だからこそ、「あるべき姿」を見据えて、それと現実を対照させ、そのギャップとして出てくる欠点や不足を「問題」として捉える。このステップが必要となります。
あるべき姿の具体化の必要性
あるべき姿と現状のギャップが問題である、という定義を一旦受け入れるとしましょう。そうすると次に重要となるのは、「あるべき姿」の解像度です。あるべき姿がぼんやりしていると、現状と比較してギャップを明確化することが難しくなるからです。
例えば個人のキャリアにおいても、「10年後にはもっと仕事ができるプロになりたいな」と漠然とイメージしているだけだと、現状とのギャップが把握できないと思います。「10年後には、金融の〇〇領域において自分の名前で仕事をとり、10名のチームを率いて食わせることができるプロフェッショナルになる」くらいの具体性があれば、必要な経験やスキルを分解して現状とのギャップを把握し、そのギャップを埋めるための方策を具体的に検討することができます。
「問題解決がうまくいかない」という話があり、その内容をよく聞いてみると、そもそもあるべき姿が明確になっておらず、何が問題なのかが特定できていないということが想像以上に多い、というのが私のこれまでの経験から言えることです。
現状把握の大切さ
あるべき姿が不明確であることよりはケースとしては少ないですが、現状把握が不十分である、というケースも存在します。
ただし、「現状把握が不十分」という時、単に情報が不足しているというわけではないのです。情報はある程度出揃っているのですが、その情報をバイアスなく観察し、現状を「真っ直ぐ」把握することができていないということが多い。
その環境にどっぷりと浸かっている人たちからすると、その現状というのが当たり前すぎて、客観的に現状を眺めることが難しくなります。むしろ、あまりその環境を知らない人、つまり外部者や素人が真っ新な目で観察すると現状を正しく考察することができることがよくあります。
このように、一言で「問題」といっても、まずそれを掴むところから色々な落とし穴があります。大事なのは、「問題」を捉える構造を理解しておき、正しく問題が見えてこない時にはその構造に従って1つ1つ点検していくことです。
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