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「現状維持」は、実は「選択」である。戦略的現状維持のススメ

「現状維持」という言葉は、「何も選択をしない」という意味で捉えられていることが多いのではないかと思う。例えば、現在所属している会社に対して多少不満を持っていても、転職という選択をせずに「現状維持する」、というような言い方をする。まるで、現状維持することは選択をしていないことで、現状を変えることこそが選択をしていることのようだ。

タイトルに書いた通り、現状維持も選択である。本当は現状維持しなくても良いはずなのに、「あえて」現状維持を選択しているからだ。たしかに、何もしなければ現状が維持されるという面はあり、それを「選択していない」と表現したくなるのだが、人生は本来的に数多くのオプションを備えており、そのオプションは自由に選び取れるはずである。現状も含めて、自分の前にオプションがいくつも並んでいて、その中で現状を毎度選択している。現状維持するときにはこの感覚を持っておくことが肝要だ

私はこの「現状も含めてオプションと考えたうえで、それでもなお現状維持を選択する」ことを「戦略的現状維持」と呼んでいる。戦略的という言葉に深い意味はない。「あえて」現状を選んでいるということをそれっぽく表現しているだけなのだが、一言で表現できると覚えておきやすいのでそう呼んでいる。

この「戦略的現状維持」だが、頭では理解しても実践できるようになるまではそれなりに訓練が必要だ。現状の生活には慣性が働きやすく、放っておくとダラダラと現状の延長線上で過ごすことになりやすい。例えば次のように、いくつか工夫を施す必要がある。

  1. 定期的に(数か月に1回くらいの頻度で)人生のオプションを並べて、現状と他のオプションを比較検討する

  2. 戦略的現状維持を選択する場合、現状維持がベストと考えられる時間軸を具体的に想定する(2年間は現状維持がベスト、2年後には見直す必要がある等)

  3. どのパラメータが変動したら現状維持がベストではなくなるのかを具体的に想定する(仕事であれば、ポジションアップの機会が頻繁に訪れる状況が続くなら現状維持が望ましいが、そうではなくなったら他のオプションを検討すべき等)

  4. 小さな「現状離脱」を実践し、大きな「現状離脱」に備える(起業したければ副業から始める、転職したければ社内のジョブ変更から始める等)

  5. 現状離脱した後、そのオプションがベストではなくなる時間軸やパラメータを予め想定しておく(上記②③を先に想定しておく)

要するに、現状維持を含めた数あるオプションをフラットに見るための仕組みやルールを自分の中に決めておくことが重要である。自動運転モードで人生が流れていくようになってしまうと、現状維持という選択が人生の選択肢の中でどういう位置づけにあるのかがわからなくなっていく。現状を相対化し、常に「あえて選び取っている」感覚を持ち続けるための仕組みを取り入れることは、大きな選択を迫られるいざという時に効果を発揮する。

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