カッコつけたいのは誰だ!!~『ピークアウト』第6話感想~
俺は泣いた
最後に泣いた日を、貴方は覚えているだろうか?
俺が泣いたのは最近、このポストを見た時だった。
儲からなくとも『ピークアウト』に本腰を入れたい。
ウヒョ助先生のその心意気に打たれ、俺は泣いた。
……厳密にいうと涙は流さなかったが、胸に何か熱いものが流れるのを感じた。つまり、心で泣いたということだ。
今、一人の漢(おとこ)が己の人生を削って、損得抜きで己が世に届けるべきものを描いているのだ。これで沖田シルクさんの胸がたゆんと揺れる度、札束の塊がウヒョ助先生の仕事場の窓を突き破って放り込まれるぐらいにならなければ嘘である。
伝えなければならない。世に、この漫画の魅力を。
物事を成すのに、遅いということはないのだから……。
──玄尋、『ピークアウト』の感想をしたためるべく筆を取る。
実に「近代麻雀」2023年11月号発売から、2週間ほど後のことであった。
つーわけで
色々厄介事が立て込んでて更新が遅くなりましたが、第6話の感想をやっていきたいと思います。
※本編↓
※前回の感想はコチラ↓
前回の『ピークアウト』は…
霧子さんは月、メルコは太陽、俺は終了
麻雀プロとしてのマナーを身につけるため、団体の道場で働き始めたユキト。「倒牌は絶対に両手を添えて」という作法を馬鹿にしていたが、先輩の霧子から「かっこつけて努力をサボっているだけ」と辛辣な指摘を受ける。
そしてMピーク選考大会予選、最終戦。因縁の金時と再び同卓したユキトは、オリればトップのオーラスで果敢に仕掛け、両手を添えて裸単騎を和了する。自分なりの”かっこいい麻雀”を見出したユキトは見事大トップで最終戦を終え、ギリギリ予選を通過するのであった──。
オマエがモンキー
「俺 先輩だぞ! 口の利き方知らねえのか!!」
「北海道の山猿があ!!」
「北海道に猿なんていねえよバーカ!」
「生きて冬越せねえだろ! ちっと想像しろエテ公!!」
予選通過の打ち上げでも険悪なムードMAXのユキトと金時。せっかく祝いの場を設けてくれた瓜子さんを無視して終始バチバチである。どうでもいいけど瓜子さんの隣行かないなら俺に座らせろ モデルからいうとおサルであるべき金時さんが、ユキトを山猿よばわりしてるのがちょっと面白いポイント。というかそうか、北海道に猿はいないんだな……想像すりゃ確かにそうだな……。
とにかく反りが合わない2人。ついには殴り合いまでおっぱじめてしまい、お互いの顔を腫らす始末。
来週の準決勝はカメラが入った放送対局だというのに……。
恐るべし! 裏セレブ様
準決勝当日。口元のアザを隠すため、マスクをして対局開始を待つユキトに声をかける美女が一人。
「あらなんでマスクで顔隠してるの?」
「もったいないじゃない せっかくの放送対局に」
彼女の名は裏瀬レム。
予選7位、ユキトの1つ上の順位で通過していた選手である。
……ちなみに毎回女性キャラクターが登場するたびに瀕死の重傷を負っている俺だが、今回は前もって裏セレブ様登場の予兆を察知していたため無事致命傷ですんだ。
自前のファンデーションで初対面のユキトのアザを隠してくれるレム様。やさしい。すき……。 というかこの主人公、前回は瓜子さんにネクタイ直してもらってたかと思えば今回は美女にいきなりメイクしてもらうとか急にハーレムを行き始めてはいないか。そしてあまりにもGOODシチュエーションに無自覚すぎやせんか。
……まぁ、今回に限っては、この後のことで頭がいっぱいだったのかもしれないが。
MONKY DO
レムのメイクでアザを隠し、準決勝1回戦目の卓につくユキト。
……が、これは初めて臨む放送対局。カメラの向こうには大勢の視聴者が、そして解説席ではあの高原星二が一部始終を見守っている。
無意識にかかるプレッシャー。それは手の震えとなってユキトに襲い掛かる。努めて平静を保とうとするユキトだが、第1打の東を親にポンされ、続く第2打にうっかり切ったドラの北も北家がポン……と、どうにも噛み合わない。
ダブ東とドラポンに挟まれる形でありながらも、首尾よく先にテンパイを入れたのはユキト。しかし先制リーチは打たずテンパイだけ取ってダマ、さらには次順の危険牌ツモでオリに回ってしまう。
(カメラの前で放銃したくねえべさ!)
どうしてもカメラ越しに見られていることが気になるユキト。結局ろくにアガることもできないまま、ラス目でオーラスの親番を迎えることになってしまう。
この局でもレムから先制リーチを受け、ドラ2のイーシャンテンから一旦現物で迂回と弱気な選択。「押せやァーッ!!」と解説席で元気に突っ込む高原と紋吉の声も、悲しいかなユキトには届かない。
しかし次順でテンパイ逃しの形にはなったものの、さらに次のツモで3-6-9萬の三面張でテンパイしたユキト。これなら勝負になると俄然ヤル気になってリーチをかけるが……。
「大丈夫かなあいつ」
「え?」
「フリテンに気づいてるのかな」
ユキトの河には第1打に9萬。プロなら当然気付いてしかるべきフリテンだが、高原の目はうわついたユキトの心を見透かしていた。
(みんな俺を見ろ!!)
「ロオオオ
「ロン」
「3900」
手詰まった下家から放たれたのはユキトの現物・9萬。
あわやチョンボというところだったが、レムの頭ハネで終了となった。
(嘘だろ頭ハネかよ! ツイてねえな)
倒されたレムの手を見て憤慨するユキト。
しかし、そもそも親リーチを受けた第1打になぜ9萬が切られたのか? 正気を取り戻して振り返り、そして気付く。自身がカメラの前で一体なにをしでかしてしまったのかを……。
……耳まで真っ赤になったその顔は、皮肉にもまるでサルのようだった。
この顔面を見よ
「空気」
「ビビリ小僧」
「フリテン知らない素人」
「1人だけ顔面1300」
2回戦開始前の休憩時間。
視聴者からはユキトに厳しいコメントが寄せられていた。いや最後の奴はほっといてやれよ!!
「俺もうダメだ…」
「このまま2回戦どんなツラで出ていけばいいんだ…」
顔面の打点はさておき放送対局で恥ずかしい麻雀を打ってしまった事実に変わりはない。『麒麟児』シリーズの鈴司がこの場にいたら「どこで、誰に見られているかで打牌を変えちゃいけない……!」とでも言ってくれそうなものだが、ここはユキト独りしかいない男子トイレ。もはや独力で立ち直るのは無理なのか……。
しかし、ユキトは思い出した。鏡に映った自分の背後に立つ、制服姿の少女。どんな時だって、常に彼を見続けている存在のことを。
「んだよ…とうとう幻覚まで見えて来たぜ」
「だめだべリス子 ここ男子便所だぞ……」
……そう、ユキトが”かっこいい麻雀”を見せたいのはカメラの前の視聴者たちじゃない。自分のことを信じて、そのまま死んでしまった「ファン第1号」、リス子にカッコつけるため、ユキトはスターを目指すのだ!!
そして準決勝2回戦……。
そこには、顔面の打点が倍満にまで跳ね上がった漢がいた。
メイクとともに、人目を気にする上っ面の自分も洗い落としたユキト。前試合での失点を取り戻すべく、2回戦では果敢に攻め、そしてアガる!!
そして親番の大チャンス、ユキトの手は索子の清一色に。
「4索切れば1-2-5-8索待ち 7索切れば1-2-5索待ち」
「1索で2-4待ち 2索で3索待ち 3索で1-4索待ち」
「他の牌切ったらノーテンね」
……えーとごめん、なんて???
トッププロ・高原星二ならスラスラでてくるメンチンの何切る問題だが、時間をかけすぎるとプロとして恥、視聴者を気にして慌ててミスっても恥……というダブルバインド。
だが、ユキトは手牌を2つに分け、待ちになる部分をわかりやすくすることでこの問題をクリア。この挙動からメンチンは他家にバレバレだということで即座にリーチ……そして一発ツモ!
「えっと リーチ一発ツモ…メンチンドラ1・2・3・4…」
「13翻!! 数え役満!!」
まさかの役満和了!! ……と思いきや、ルールに数え役満は無いので3倍満止まり!!読みながら俺も気づいてなかったけどMリーグにも数え役満ねーもんな、そうだよな
しかしこのムーブが解説陣にも大ウケ。おそらくカメラの前の視聴者の中にも、これでユキトのファンになった人たちが少なからずいたことだろう。
かくしてMピーク選考大会決勝に駒を進め、ユキトはさらに一歩スターへと近づいたのであった。
ところで。
A卓からユキトの他に誰が決勝に進んだのかわからないんですけど、僕はレム様が良いです!! お願い……。