オッドアイの犬
うちの犬の場合は保護犬扱いにはなっているが、どちらかといえば譲渡犬と呼んだ方がいいのかもしれない。
飼っていたペットが亡くなり1年くらい経過したころだった。
父が足を悪くして名医だと呼ばれる人に手術をしてもらった。その名医からはリハビリとして常に運動しなさいと言われていたらしい。
だから1日1回は散歩に行っていた。
でも、何度か行くにつれて、
「一人で散歩するのはつまらないから一緒に散歩できる犬が欲しい」
と言い出したのだ。
それでまた犬を飼うことになったのである。
父がネットで犬の里親募集を探すようになった。
そこで1件、目に留まった犬がいた。
白いオッドアイの3歳のMIX犬だった。
やり取りしていたのは父親だったので、あまり詳しい事はよく分からないがどうもその飼い主は色々あって家庭環境の事情でこれ以上飼うのが困難になってしまったらしい。
そして車で行って直接取りに行けるとのことで、日程を決めてその飼い主の元へ行くことになった。
…帰りに犬の面倒を見てほしいと、私も同伴で行くことに。
そして長い道のりを走り、その犬に会ってみると…
自慢のオッドアイなのに目は涙焼けで台無しに。
爪が伸び切っていて肉球に刺さりそうだった。
そして結構痩せてガリガリであばら骨が浮き出ていた。
どうやら避妊手術していなくて血がたらたら流れていた。
妙な臭いがした。
あまりいい環境ではないのだなというのは犬を見て察することができた。
その飼い主さんからエサなどを貰って、犬は車に乗せられた。
そりゃ犬にとってはいきなり全然知らない人の車につれていかれたから、何が起きているのかよくわからなくて、落ち着かず、ちょろちょろして不安になっていた。
それで私は目がかゆくなって、腫れてアレルギーになった。
抜け毛がすごくて車の中は一気に毛だらけになった。
家に帰ったらあまりにも臭いが酷いのでまず風呂に入れてあげた。
…そしたらもっと臭いが酷くなった。
風呂に入れたのに一体どうなってんだってくらいで。
この異臭がなくなるのにはしばらく時間がかかった。
次は爪を切ってあげた。ほとんどの動物は爪を切るのを嫌がるのでやっぱり嫌がったが、それでも切らないと怪我をしてしまうからやらなければならなかった。
どうやら男の人が苦手らしい。女性にはすぐなつくけど、父に慣れるのに1週間くらいはかかった。
体重を量ってみたけど7キロしかなかった。成犬にしてはあまりにも痩せすぎていた。
いきなり知らない人に知らないところに連れていかれて、飼い主も変わって名前も新しくなった。
戸惑っているのか、ここまで犬は一度も全く吠えなかった。
吠えるようになったのは数日後だった。
茶の間に回っている電気のファンが怖いと逃げ出した。
花火も雷も毎回怖がっていた。
男の人だけなつかないので、もしかして前の家で男の人に虐待を受けたのではないか?という疑惑が浮上した。本当の事は分からないけど。
毛並みが白いからなのか、やっぱり何かと神経質になりやすく、なんでも怖がっていた。
散歩をするときも、途中で行きたくないと座ったりするようになるし、人混みも怖がってダメだし、他の犬とはケンカはしないけど交流は嫌がり自分より小さい小型犬でさえ怖がっていた。
子供も基本的に苦手だった。予想外な動きをするし、興味本位で近づかれたら逃げてしまう。
ただ、子供からは「青い目が怖い」「狼だ!」と逆に怖がられることもあった。
しかし大人にはその見た目は結構好評だった。
白い毛で高貴に見えるのか「綺麗な犬だね」「凛々しいね」とよく褒められていた。
中にはその犬触ってみたいと見初められたりもした。(拒否られてしまうが)
個人的にはそれが自慢だった。
特に私にはお尻をよく向けていた。毎回それをよくやるのでこれはどういうことなのかと調べてみたら信頼しているという意味だった。
過ごしているうちに、体臭や涙焼けはだんだん薄れていき、体重も来た時よりは倍に増えていた。
それでも相変わらず抜け毛の量がすごいので、衣服や食べ物に毛がついてしまう事も多々あった。
出品物にも影響が出てしまうので食べ物は扱わないようにしているし、犬を飼っていると書き込むことは必須になっていた。
ちゃんと話せば理解してくれる人はいた。
この犬を引き取って思ったのは、時間もお金も精神も余裕がないのに安易な気持ちで犬を飼わないでって思った。
やっぱり飼っていい人、ダメな人っている。
環境次第で人も動物も見た目も性格も大きく変化してしまう。
環境選びはどれだけ大事なのかというのがよく分かった。
ペットを飼いたいと思うなら、飼い主が必ず余裕がある状態で飼った方がいいですね。