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モダンアンチがモダンを使った感想
※具体的に使ってみた様子は前回書いてます
前回から対戦を重ねて、モダンシステムをある程度味わった。
自分はクラシックを丸一年(ルーキーからマスターまで)経験しているので、どこのランク帯の気持ちも大体分かる。最底辺からのスタートだったからだ。
その上で「モダンってどうなのか?」の感想を書いていく。
・普通に面白い
練習もせずに上位30%であるプラチナ帯に勝てた。勝てるということは格ゲーの経験の中で上位の悦びだろう。これをすぐ味わえるという点では優れていると感じた。
自分の目線でいうと「エドというキャラクターを味見するのに適したシステム」だと思った。ある程度の技が簡単に出るので、適当に動かしながら「どれ使ったらいいのかな」と遊ぶことが出来た。そうやって立ち回りを探りつつ、ある程度ダメージが入ったらSAまで出るアシストコンボを出せば勝ちまでついてくる。普通は勝てない。
・味気なさを感じた
ただクラシックを経験した自分が感じたのは、(こんな簡単に技もコンボも出せてしまうんだな……)という味気なさだった。初心者がこれで遊んで面白いのは分かる。デビルメイクライくらいの感覚で対戦ゲームをやれるからハードルは下がっている。
しかし違和感があるのだ。
なんだろう、例えるのなら「小学生の子供が、兄の持つバイオハザードを初めてプレイさせてもらった。中身は何週もクリアしている兄のデータなので最初からショットガンやマグナムなどが用意されてる。小学生の弟はそれらをバンバン撃ってバイオハザードを攻略していく」
↑
みたいな感じと言うか。
バイオハザードシリーズとは、大抵ナイフとハンドガン所持をした状態でスタートし、序盤は少ない弾丸の管理をしながらゾンビを倒したり避けたりして進んでいくゲームである。
バイオの感覚は格ゲーにも似ていると思う。はじめはナイフやハンドガン(通常技やジャンプからのタゲコン等弱い攻撃)でちまちまやって「なるほどこういうゲームなのか」と学習する。考えなしに撃てばいいのではなく、状況によっては逃げなければならない。格ゲーもボタン連打だけでは勝てないのである。少ないリソースを使って何とかやりくりするゲームだ。
中盤~終盤は強い武器を拾って、ゾンビより強い敵を倒していく。この「強い武器を拾う」というのもバイオの面白さだ。ハンドガンしかなかった状態からショットガンが撃てるようになる楽しさがある。格ゲーでいうと「長めのコンボやSAを絡めた大ダメージコンボ」「シミーを覚えた」等だろう。これらを対戦で出せた時の感動は忘れられない。今でもスマホの中にリプレイが保存されているくらいである。
上記の体験は、「最初から全武器がそろってるバイオハザード」では味わえないオンリーワンの体験だ。
モダンはこの例えの「最初から全部あるバイオ」と似ていると思った。初めてプレイする人は楽しいのかもしれないが、ゼロから味わった自分からすると「彼らは・・がんばって対空昇龍が出せたり、SAを出せた(当てられた)嬉しさとかは分からないんだろうな」と思った。
モダンが初めて、と言う人は可哀相なのかもしれない。
あの初めて昇竜拳を当てた時(俺にとっては一年前)の、SAを絡めたコンボを幾多のミスと負けを乗り越えて初めて相手に叩き込んだ時の喜びを知らないのだ。
・ワンボタンとアシストコンボの弊害
想像以上に気持ちよさがない、と感じた。
ワンボタンやアシストコンボにより「当たり前に技が出る。ミスはない」という現実がここまで快楽を減退させるのか。
クラシックリュウを操作する俺
「パナして来やがったか!バカがよ~~~!!!!(レバーがちゃがちゃ音)ほら全ゲージ突っ込んでマナー最高のSA2締めリーサルじゃい(笑)(笑)(笑)(笑)」
モダンエドを操作する俺
「パナしですか……愚かな。はい大アシストコンボぽちぽちっ……と。……決 め る ぜェ!!!」
くらいの温度差がある(どっちも楽しそうではある)。理屈は分からんが、連打で出るアシストコンボと操作で出すコンボでは気持ちよさが全然違う。
逆にモダンプレーヤーが操作してSAまでのコンボを出した時はどれだけ気持ちいいんだろうか。めんどくせえなって思うのか?それとも同じように気持ちよくなれるのか?
対空昇龍(オート対空レベルではない)ひとつとっても
クラシックは「相手が飛ぶと読む>がちゃがちゃ昇竜拳の入力する>操作成功で技が出る>相手に当たる」=ぎもぢいい!!!!!
モダン「相手が飛ぶと読む>ワンボタン>相手に当たる」=まあモダンなんで・・
くらいの感覚の差があった。手間が無さ過ぎて有難みも喜びも減っているということ?
たぶん体験に関する法則として存在するんじゃないか?と思う。
手間がかかる=出来た時のよろこびが大きくなる、という法則で考えるとモダンから得られる快楽はクラシックより少ない、と思う。
まあ、相手に簡単に勝てた(面倒なコマンド入力せず勝った)という点で快楽を得られる人間はモダンでいいのだろう。
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・ミスは最高の調味料だった?
確実に技が出る、という事は「出せないというミス」がほぼ無くなるということである。
上に貼ってる「俺は戦うのが好きなんじゃねえんだ・・勝つのが好きなんだよォォ!」でお馴染みのフレイザードを検索していたら↓の画像も見つけた。初めて見たが、この感覚は真実だと感じた。
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クラシックの入力には博打感がある。
たとえプロであろうと、どんなに簡単なコンボや操作であろうとミスの可能性はゼロにならないのである。だからモダンと同じコンボや対空でもクラシックで成功させると気持ちいいのだ。
エアプほど「上級者はミスなんてしない」と言う。全然違う。人間である限り、しょうもないミスが出て負ける可能性は普通にある。
そしてそのミスこそが「格ゲーやめらんねえなあ」という快楽の源(博打性)なのではないか?と思う。
「リーサルだと確信して全Dゲージを注ぎ込みコンボ、最後のSA3入力だけ遅れてミス。最終的にすべてのゲージを失って絶望的なバーンアウト状態>死」
↑このミスを幾度となく経験するからこそ、「SAを絡めたコンボ」は当人にとって光り輝く記憶となる。
モダンの大アシストコンボにこの「クソみたいなミス」はない。だからこそ当てた時に大して気持ちよくないのである。
自分と真逆の「モダンプレーヤーがクラシックで操作してみた」みたいな記事が出ているが、そのなかに「コマンド失敗のリスクというストレスが試合中ついて回る」というクラシックへの評価があった。そこに気持ちいい、楽しいという記述は残念ながらない。
「特に初心者のうちは、コマンド失敗のリスクからくるストレスが大きく、クラシックユーザーはかなりしんどい思いをする。」
↑この評価である。
違う。違うねん。君らは「コマンド入力における博打性(非常に強い射幸性)」を体感することなく「出て当たり前」を最初に経験してしまったんだよ。だから「コマンドが失敗する=嫌なことだけ」だと思ってしまう。違うんだよ。
痛い目みるから(クラシックは)おもしれぇんだよ!!
・最初にモダンを使う事の代償
「モダンプレーヤーがクラシックを使ってみた」っていう記事を読んで確信した。彼らはワンボタンとアシストコンボで「簡単に対戦出来た」という小さな喜びを得ただろう(それはクラシックで一切コンボ出来なくても得られる体験なのだが)。
彼らは代償として、実践でのコマンド成功、対空昇龍の成功、少し難しめのコンボ成功……という脳に焼き付くような快楽の記憶を一生得る事がない。
「出るのが当然」という無駄に高い前提をモダンに植え付けられてしまったからである。
人間は上がった生活レベルを下げるのはとても難しい。余裕で対空昇龍が常識なんて上位数パーセントの思想である。クラシックでマスターまで行ったが、モダンレベルの対空精度など必要なかった。
インターネットのせいだろうか?イキった上級者のせい?
「対空やコンボが出せないと格ゲーは楽しめない」
そんな風潮を信じてモダンを使った彼らから、一生モノの思い出を奪ったのである。
・・・「でもモダンなかったらスト6やらなかった」という人には存在しえないルートなので、ジレンマと言われる話かもしれない。それはそう。
・久々でブランクがある、クラシックで全然できなかった思い出がある、という人には救済
久々に触ったけど腕が錆び付いてコンボが出来ない、クラシックに憧れがあったけど昇竜拳を当てるなんて出来なかった……自分がそういう立場であれば、モダンは救いとなっただろうなとは思う。上から目線で「クラシックでの思い出が作れなくなる」と思っていたが、それがはなから望めない人たちもいるのだ。
そういう人たちとは「モダンがあったから出会えた」のである。
この点は今ならすこし感謝できる。
・モダンの「あるべき姿」を想像する
それはそれとして、カプコンよ……ヒット確認コンボとワンボタンはマジでやってると思う。そもそもの話、中間層のゴールド帯を基準とした機能を付けるべきだったんじゃないか?
モダンに搭載された機能だけみると「高精度の対空」「一瞬で出せるSA」「絶対ミスらないコンボ」っていうのはマスタークラスのテクニックである。一番人が多いプラチナやゴールドに存在して良い機能ではないと思う。
「大勢の人が楽しめる」を目標としたシステムとするならば、一番人が多い上記のランク帯で「まあこれくらいは皆使えるよね。だから気にならないね」という程度の機能に抑えた方が良かったのではないか。
まさかストリートファイターをプレイする多数のクラシック使用者が「対空は余裕」「インパクトにSAを簡単に返せる」「コンボはミスしないのが当然」だと思っていたのか?カプコン。
そうじゃないから大勢が「そんな機能ズルくない?」とブチギレてたのである。
上位のマスターなら当然出来るテクニック、みたいなものを大量にいるプラチナ以下の人間にぶつけたらどういう気持ちになるのか?って話である。
ノーセンキューが常識的な反応である。
え?なんでゴールドやプラチナの僕が「マスタークラスのテクニック」を搭載したシステムと対戦しなくちゃならないんですか?上位帯では当然って言い人もいるけど、よく見てください。ここは上位帯ではないんですけど?と感じるのが真っ当な感性だ。
もし次があるのであれば、中間層の人が多いランク帯に受け入れられるシステムとすることを祈る。あるいはそういった調整を望む。
その逆が「中間層から嫌われまくる」という現状だからだ。