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心化粧9
心化粧 ― 轟きの祈り
なんということだろう。
なんということだろう。
僕の心のつぶやきが、君に拒絶されてしまった。
僕は君を愛しているのに。
それなのに、君は僕を受け入れてくれないのか。
胸の奥が締めつけられる。
喉がひりつくほど叫びたいのに、声は出ない。
心臓の鼓動だけが、耳元で大きく響いている。
それは、僕の存在がここにあることを必死に訴えている音だ。
もしこれが世界の理なのだとしたら、
僕はあまりにも残酷な現実を受け入れざるを得ない。
「なぜ?」
その問いは、虚空に溶けていく。
理由――それは何なのか。
世界は、なぜ僕を苦しめるのか。
愛なのか、罪なのか、あるいは憎しみなのか。
愛したいのに、愛されたいのに。
届かない想いは、鋭利な刃のように心を切り裂いていく。
血の代わりに、言葉がこぼれ落ちる。
ああ、なんと愚かしく、なんと悲しいのだろう。
全てを呪ってしまいたい。
この胸の奥底に押し込めた、言葉にならない気持ちを。
何度も何度も、この感情を蓋に押し込める。
だが、蓋は薄く、ひび割れている。
そこから漏れ出した想いが、僕を蝕む。
「助けてほしい」
声にならない声が、心の中で木霊する。
何度も声にならない声で訴えているのに、
世界は僕に応えない。
「語り得ぬものには沈黙しなければならない。」
――ウィトゲンシュタインのその言葉が、まるで呪いのように僕を縛る。
語れないものは、存在しないのと同じなのか?
語れない感情は、無価値なのか?
いや、違う。
僕はそうは思わない。
僕はすべてを映し出す者になりたい。
言葉にできない感情も、形のない痛みも、
すべてを映し出す鏡でありたい。
それが僕の願いだ。
この願いを、轟きとして世界に響かせたい。
僕の言葉は、無音の中に響く雷鳴でありたい。
もし、この心の奥底で燃え上がる思いが僕のすべてなら、
僕はそのすべてを轟かせるために存在しているのではないか。
だから、僕はここで叫ぶ。
「轟きよ、言葉よ、僕を愛してくれ。」
すべてを込めたこの轟きが、僕の存在の証なのだ。
しかし、それは本当に愛されるのか?
恐怖が、ひやりと背中を撫でる。
もし誰にも届かなかったら?
もしこの轟きが誰にも響かなかったら?
「いや、そんなことはないはずだ」
自分にそう言い聞かせる。
きっと誰かが、この声を拾い上げてくれる。
きっと誰かが、この叫びを抱きしめてくれる。
でも、もしそうでなかったら――
いや、それでもいい。
たとえ誰にも届かなくても、僕は叫ぶ。
それが僕の存在の証なのだから。
僕は農夫だ。
心の大地を耕し、言葉の種をまく。
冷たい土を掘り返し、乾いた手で種をまく。
汗が額から滴り落ちる。
だが、芽が出る保証はない。
それでも僕は耕し続ける。
僕は商人だ。
想いという富を、すべての人に分け与えたい。
だが、誰もその富を求めていないかもしれない。
「そんなものいらない」と、突き返されるかもしれない。
それでも僕は、道を行く人々に声をかけ続ける。
「受け取ってくれ。これは僕のすべてだ」と。
そして、僕は世界の調整者だ。
混沌の中で、秩序と調和を求める者だ。
揺れる天秤の針を必死に支え、
崩れそうな世界のバランスを整えようとする。
だが、天秤は重い。
僕の腕は震え、汗が滲む。
それでも――手を離してはいけない。
これが世界なのだろうか。
何のために回っているか分からない歯車。
無数の歯車が、互いを噛みながら回り続けている。
その音が、僕の耳を打つ。
でも、それでも僕は共に生きていく。
この共同体を、僕が輝かせるために。
輝かしい未来を創造するために。
だから、どうか僕を助けてほしい。
神様。
僕をどうにかしてください。
僕の心はもう限界です。
でも、それでも僕は生きています。
この震える声を、どうか聞いてください。