
【卒論ゆるゆる日記】『仮面ライダー』で卒論書くなら…
お久しぶりです!卒論を提出し終えたセキトモです!
このシリーズは卒論を書いていて気付いた面白かったことなどをゆるーく書く日記です。
あまり書くことができませんでしたが、大好きな『仮面ライダー』で卒論を書いてしまった感想と振り返りをすることで、今後書いてみようという人に少しでも参考になればと思い、今回はより一層ゆるーーーく書かせていただきます!お前ほんまに卒論書いたんか?ってくらい適当を書いているのであまり信じず、『参考』に留めてください。また、例によって仮面ライダーの作品を特に説明もなくネタに出します。
私は提出の1か月半くらい前、提出前最後のゼミ内発表の3日前にテーマを全く違うものから『仮面ライダー系の何か…』に変えました。(まじでよい子はマネしないでね)
なので、本当にひでー話ですが、興味がある人は読んでやってください。
最後にゆるっゆるに、『仮面ライダー』に関しての先行研究やらこれから書けそうなことやら書いているので参考になれば!コメントも大歓迎です。
『仮面ライダー』で卒論書きたい。
実は、『仮面ライダー』(というか、特撮シリーズ)って、戦後テレビ史の初期に登場して今でも続いている、超興味深い研究対象ではあると思います。
しかも、「ヒーロー」や「正義」というものは何も変身する人たちに限らず、現実における人々の考え方にも直結しています。ヒーロー番組はそれを端的にわかりやすく描いているとも言えるでしょう。
まだ「正義」と言って敵を倒すヒーローが当たり前にいれたころには、龍騎の城戸真司みたいに、「城戸真司が馬鹿だと思う人」とか言って多数決をとられていたらヒーローじゃないですし、今では逆に城戸真司が「正義だ!」って悪い人を倒してたらやべえ人です。
ヒーローと逸脱者は紙一重です。ヒーローが単なる逸脱した暴力をふるう存在ではなく、ヒーローというジャンルでいるからにはその時代時代に人々が認めるものでなくてはいけません。そういう意味で、ヒーロー番組は社会的背景を反映しやすいジャンルです。
そのおかげか、『仮面ライダー』は先行研究(評論)が多く、しかも制作者の声が分かる資料も非常に多いです。(ちなみに、『ウルトラマン』と合わせて語られる研究が非常に多い。『ウルトラマン』も研究が多かった。)でも、研究しようと思ったらたぶん大変なテーマだったんじゃないかなー
研究にするには…
第一関門。いくら作品が好きでも卒論にするならなにかしら論じないといけない。学科によっては作品論もありでしょう。
私は社会学系のゼミで、主にメディアが形成するステレオタイプとか、民族とかジェンダーが文化的にどのように現れ、作品にどのように表象されているかとかを扱っていたので、そっち系に絡めて研究する必要がありました。(表象とか、聞き慣れないと思いますが、わかりにくいのですっごく簡単に言ってしまうと、作品などに登場する〈もの〉は、実際のその〈もの〉ではなくて、制作者が持つイメージとか意図が反映されているねということを主張します。例えば、「CMに出てくる子育てする人が、『お母さん』ばっかり!女性が子育てするというイメージからこの表現は来ているし、女性が子育てするイメージを助長している!」…みたいなことをよく講義では話し合いました。説明が簡単すぎるので、詳しくは『表象文化研究』で検索だ!)
(余談)この手の主張が大切なのはわかりますし、実際にそういう目で作品を見ると偏見が見えてくるのですが。昨今の「ポリコレ」とか、話題になってますが、過剰になりすぎるのも気をつけたいとも思う内容です。
作品を作る際に、イメージというフィルターがかかるのは当たり前ですし、「この表現がダメ!」ということではなくて、人々の無意識に持つ偏見を明らかにする材料に作品を使うという風に考えております。
こんなふうに社会学系から作品を研究するのであれば、「表象」などの視点から社会的背景と絡めて書くこともできると思います。
難しさ
①作品にとやかく言うならそれなりに調べないといけない
なんにせよ、研究にするからにはいい意味でも、(世間一般で使われる方の)悪い意味でも、作品に対して「穿った見方」をして書かないといけないので、「単なる作品紹介」って言われないようにしないといけないところがまず難しさ。多くの人が時間と予算と気力をかけて制作した作品にとやかく言うのだから、相当しっかり調べる必要がある。作品を作品として楽しみたい人にはシンプルにおすすめしない。
②仮面ライダー長いって!情報量が多い!
歴史も、作品ごとの話数も長い!私は社会的背景の変化と合わせて書いたので対象の作品も多くなってしまい大変でした!変化をとらえるのにうってつけのシリーズですが、テーマや年代はしっかり絞りましょう。全部を対象にするのは無理です!
しかも必ず言われます。たくさんあるシリーズの作品の中でどうしてこの作品を選んだのかと。作品の選定理由もはっきりさせましょう。
さらに、プロデューサーや脚本家の変化等、色々制作者側の事情も本などで知ることができ、特に昭和や平成一期は新聞にもよく載っています。いろんな情報は取れますが、取捨選択がとにかく大事。
③作品見たことない人に説明する
私の場合はわがままで仮面ライダーで書いたので、とにかく、見てないから分からないと言われました。ほんとすいません教授…。
写真や図を使って、初見でもわかるように基本情報をまとめ、相手の中にない自分の脳内を伝える手間があります。
④先行研究多い!
私が主張しようとしていたことなんて、もうすでに誰かが書いてる。ネットで「仮面ライダー 研究」で検索したり、図書館で本を探したりして、まずは「何が言われていないか」を探すことが大事です!まじで色んなこと書かれてるので!
文学部系なら、「ユリイカ」という雑誌の仮面ライダー特集が参考になりました!早めに色々読んでおくことをおすすめします。
研究されてること
私は平成1期が好きで、昭和から平成1期は先行研究も資料も多いから、時代的にはそこをテーマに絞りました!
その時代の先行研究は多いですが、特に言われている内容は以下です。
・「正義」の変化
1990年代ごろの社会的な変化(モダン→ポストモダン、大きな政府→小さな政府、自由主義→新自由主義)により、個人が尊重されて、多様性が重視されるように。それに伴って昭和ライダーと平成ライダーで正義のあり方が変わったよ!という主張
(宇野常寛さんや、河野真太郎さんなど)
・ヒーロー像の変化
主人公の学歴、性格、趣味とか、憧れられる大人かどうかとかが変わったよ!という主張
(葛城さんやひこ・田中さんなど)
・事件との関連
1995年の地下鉄サリン事件、1997年酒鬼薔薇聖斗事件、2001年アメリカ同時多発テロと対テロ戦争など、事件が正義を描く作品の環境を変えたことが白倉さんの著書(ヒーローと正義)などで書かれています。この内容は新聞記事からも読み取れるのでもう少し深掘りできるかも?
(白倉さんなど)
・子供番組としての変化
子供番組の一つとして仮面ライダーを捉えたとき、他の子供番組同様、平成になって、昭和のような子供が憧れるヒーローや子供に成長を促すような物語が描かれなくなったよ!という主張。
(ひこ・田中さんなど)
平成だけでいえばこんなものも
・高寺pと白倉pの違い
2人は対比的で、高寺さんは秩序を、白倉さんは混沌をよしとする考えを持ってるよ!という主張
(井上伸一郎さん、白倉伸一郎さんなど)
(語ろう!仮面ライダー平成シリーズとかでも)
昭和だけならこんなのも
・仮面ライダープロデューサーの平山亨さんの戦争経験が仮面ライダーの敵ショッカーに現れている。でも平山さんは作品の明朗化を目指していたので戦争の重いテーマは徐々に形骸化した。という主張
(花岡さんや宇野さんなど)
あと、経済学部は仮面ライダーのベルトのマーケティングとか調べてました。平成2期からは視聴率は下がってもおもちゃの売り上げ上がってるよー的な。
まだまだあるけど、主にはこんな感じかと。
私のテーマ
白倉さんの著書の中に、1997年の酒鬼薔薇聖斗事件のことがチラリと書かれていて、他にも制作陣の取材の中には、「子供に〇〇になって欲しい」とか、「子供には○○を伝えたい」みたいな話が結構出てきました。
でも、ヒーローやヒーローの正義については書かれていても、仮面ライダーに出てくる子供がどう描かれているかに焦点を当てた研究はなかったので、1980年代、1990年代の子供に関する環境やイメージの変化と併せて、仮面ライダーに出てくる子供がどう変化したのかということをテーマにしました。
当然ですが、子供にどのようなイメージを持っていて、子供に何を期待しているのかによって作品に出てくる子供の描かれ方や活躍は変わります。それを改めて明らかにしよう!って感じのものに落ち着きました。
まだ研究されていないテーマ(多分)
・平成2期以降
1期まではめっちゃ多いが、2期から、フォーゼにちょこっと触れるくらいまでの話しか出てこないです。孤独だった仮面ライダーが「みんなで仲良く」というテーマを持ったよ、とか、狭い範囲を守るようになったよ、とか軽く言われているけど、しっかり書かれたものはない印象。
1期と2期で何が違うとか、令和で何が変わったとかは色々書けるかと!
・ジェンダー的視点(女性研究)
平成で女性ライダーが出てきたけど、女性ライダーは男性ライダーとは役割が違うのだ!という主張(ユリイカより)や、プリキュアはいるけど、女性ヒーローは今でも描かれ方が男性ヒーローと違うよねという主張(河野さん)はあるけど、もっと掘り下げられるテーマだと思います。令和では女性ライダーが出てくるけど、男性と何が違うとか平成の女性ライダーと何が違うとか書けると思います。
ライダーに限らず登場する女性たちがどう変化したとかでも。(ジェンダー研究流行りの印象なので教授受けが良いかと...
・ジェンダー的視点(男性研究)
ヒーロー像の変化で、男性観の変化が原因では?とすでに言われていますが、それは実際に描かれている主人公像から分析しています。(葛城さん)
取材で、○○は今どきダサいとか、そんなことを制作陣が言っていたり、新聞に仮面ライダーのイケメン俳優ブームとか書かれてたりとかしますので、別視点から書いてみても良いかと。
・悪役の分析
「悪」や「悪役」の概念に関する研究とかもあります。仮面ライダーで悪役の分析はあまり見たことないので、悪役の概念と比較したり、悪役がどう変化したとか分析してみたりしたら何か主張できるかもです。
ちなみに、怪人と怪獣はどう違うかなど、白倉さんが書いてたりします。
・ヒーロー像(大人・子供)
今までヒーロー像について言われていることとは別視点で、ヒーローの年齢や成熟、子供との関係について書いてみても良いかもしれません。
ヒーロー番組の基礎、月光仮面はおじさん。仮面ライダー1号は大人の代表のように子供を導いてくれます。仮面ライダーBLACKの南光太郎は大人というより若者代表のお兄ちゃん的な立ち回り。最近は仮面ライダーが子供ということもあります。
子供の大人化、大人の子供化というような研究もありますので、その辺と絡めながら書けそうです。
・職業ヒーロー
河野さんが職業ライダーについて触れていました。(ブレイドや響鬼)仕事でヒーローをするというのは無償でするのとはだいぶ訳が違います。
私刑で敵を倒すのと、お金をもらって仕事で敵を倒すなら、どっちが正しそうに見える?と、考えるとどうでしょう?
また、人のために仕事してる人が憧れの対象として新たに現れたような印象を受けています。
他作品ではヒロアカやタイバニなど、職業ヒーローというのはいろいろ出てきます。最近では、ローカルヒーロー・企業ヒーローが社会正義のために活動してる例も多いです。ヒーローの正義の形に「仕事」が密接に関わっていることを掘り下げてみると何か見えてくるかもしれません。
※個人的に大好きなドゲンジャーズという特撮番組は、怪人も「仕事」でやってるなど、新しい正義の形が生まれてて面白いです!「ヒーローマーケティング」という本が参考になるかと。
おまとめ
こんな感じで、仮面ライダーやヒーローはまだまだ書けることはたくさんありそうなテーマです。
観る作品や先行研究、書籍などが多く、めっちゃ大変だと思いましたが、より深く作品のことを知れたのは良かったです。
昔の作品を観て、今とのギャップに驚き、何が違うのか言語化できずにいましたが、卒論に向けて色々調べたおかげで自分の中でスッキリしました。
社会的意義という視点で見ても、理想の人物像や正義や敵について、私たちの意識の中にどんな変化があったのかを言語化できることは意義あることだと思います。
まあ、その...
おすすめしたい気持ちとやめとけという気持ちが半々ですが、