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団塊ジイさん五拾三次旅日記 第6話。
口絵写真。
蒲原宿から吉原宿(富士市)に向かうくだり坂から
急流、富士川に架かる富士川橋を望む。
江戸時代、富士川の渡しの舟賃は
ひとり六文だったそうだ。
あの山々の向こうにお江戸が待っている。
(富士市岩渕にて 10月22日10時47分)
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第6話は、
丸子宿〜沼津宿間、3泊4日。
丸子宿から府中宿(静岡市)に
向かう道中からスタート。
少しずつ富士山が近づいてくる。
いつどこで、どんな富士を拝めるか、
楽しみな道中となる。
易きに流れおったな、と言わば言え。
今回の旅から、宿泊方法を改めた。
いままでは、その日に着いた町で
宿を探す。宿を取る。
名づけて言えば「飛び石式」。
それを改めて
これからは「ベースキャンプ式」で行くことにした。
宿泊先を一か所に定めて、そこから毎日歩く。
歩きおわったらベースキャンプへ、電車やバスで戻る。
重い荷物を背負わずにすむし、その日その日の宿探しで
苦労することもない。
我ながら、もっと早く気づくべきだった。
でも、もう一人のぼくがささやく。
「そんなズルして、
それで五拾三次歩いたことにするんか。
江戸時代にそんな旅の仕方があるか」。
言いたければ言え。
反省すれば後悔せず、だ。
というわけで、
この第6話(丸子宿から沼津宿まで)と
次の第7話(沼津宿から箱根宿まで)は
あわせて5泊6日の連続した行程で、
その旅程の真ん中あたりにあたるJR沼津駅近のホテルを
ベースキャンプにした。
毎朝、沼津駅から東海道線で当日の出発地点まで出向き、
当日歩き終われば、沼津に戻った。
時間と交通費はかかるが、いやあ、足取りが軽うなったわ。
これはやめられん。
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ここ静岡市は、亡きさくらももこさんの出身地
(JR静岡駅にて 10月20日9時31分)
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(静岡市七間町にて 10月20日11時4分)
「酒は飲んでも、呑まれたらあかん」。
それが、死んだ加納(岐阜市)のばあちゃんの口癖だった。
大酒飲みが、昼間っから酒屋に
腰を据えてかっくらっている、と思ったら
店のアイドル「ジミー君」なんだそうです。
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(静岡市横田町の静浜屋酒店前にて 10月20日11時59分)
書を捨てよ、町へ出よう。
と、寺山修司は言った。
下の写真、達磨大師の左下の書「心下無法」。
「しんげむほう」と読むらしい。
「心外無法 満目青山(まんもくせいざん)」
と続く教えの意味するところは、
心のほかに法はない。
目の前に鮮やかな山が見えるのは
あなたのこころが澄み渡っているからです。
なんだと。
やっぱり、スマホばっかいじってないで、
青山(せいざん)を抜け、街道を歩くことやね。
と反省。
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ご同輩、ガンバレ。
下の写真の、手前の貼り紙。
高齢になった自分の今とこれからを見つめ
どう対処するか、書かれている。
ここ鷺坂食品店のご主人も、大手スーパーに
負けないで頑張ってきたんだろうな。
ぼくもがんばるよ。
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「フルネームで生きる。」
というコピーが昔あった。(違うか?)
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この看板、カワイイ。
富士に桜、じゃなかった。
小川梅吉さんだから、梅だ。梅のロゴマーク。
「俺は職人だ」っていう魂の声が伝わってくるよ。
いい仕事しておられる(た?)んでしょうね、梅吉さん。
いまどき、個人で鋸を造ってやっていけるのか。
それにしても、
フルネームで名乗るブランドってかっこいい。
もしぼくがもう少し若かったら、立ち上げる会社の名を
「田中真事企画室」とでもするかな。
熊を殺すなんて、かわいそう。
とは言うけれど、
この看板を見たときは、正直ちょっと恐かったです。
スマホのラジオをガンガン鳴らそう。
そう思いましたが、峠に向かう山道は楽天の電波が入らず、
不安を抱えつつ一歩一歩、峠道を登ったのでした。
ここ薩埵(さった)峠を抜けると由比宿です。
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ナイアガラの滝よりコーフン!
熊におびえながら登っていくと、、、
オー!マイゴッド!
突如目の前にこんな景色が現れました。
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(静岡市興津東町の薩埵峠にて 10月21日12時46分)
はしたなくも、わたくしめ
74才にして、ココロ揺さぶられました。
薩埵(さった)峠、ぜひ登るべき!!
でも、江戸から京へ向かう道だと、
ふり返りふり返りしないと拝めない。
江戸に向かうからこそ味わえる一瞬なのです。
いい情報なので繰り返します。
薩捶峠は、興津宿から由比宿に向かって
つまり、江戸に向かって登りましょう。
上の写真の撮影者(わたくしめ)に、
「山と海のある景観グランプリ」を贈ります。
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こう見えて、昔は現役バリバリだったんだよ。
みかん山のモノレール。
さびついて、
朽ち果てて。
薩埵峠を由比宿へ下る道々、
かつての強者どもが放置されていた。
ぼくの明日だな。
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(静岡市由比今宿にて 10月21日14時1分)
いつか訪ねてみたい店を、心にしまう。
それも、旅の楽しみのひとつですね。
由比宿は「桜えび日本一のまち」で売り出し中。
駿河湾から富士を望む磯料理の「くらさわや」。
いつか訪れて、旬の桜えびを堪能したい。
「美味しんぼ」でも紹介された店だとか。
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桜えび漁に使われていたホンモノだそうだ
(静岡市蒲原のJR新蒲原駅前にて 10月21日16時5分)
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長倉製作所か。伝わるなあ
(JR沼津駅構内にて 10月21日16時42分)
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富士川を渡っていたら
雲に覆われていた富士山がひょいと姿を現した
(富士市岩渕の富士川橋の上から 10月22日10時55分)
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(富士市今井にて 10月22日14時52分)
「PERFECT DAYS」。いい映画だったなあ。
あの映画を観て以来、我が家のトイレ掃除にも
力が入るようになった。
下の写真。
「東司」と書いて「とうす」。
禅寺のお便所のことだそうです。
厠神には、シモの病を治す力があるとか。
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誰に聴かせているんだろう
(沼津市松長の路上にて 10月23日10時15分)
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堂々と発信できる人は素直に偉いと思う
(沼津市大諏訪の某薬局前にて 10月23日10時41分)
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名づけて「下水富士」
(沼津市幸町にて 10月23日11時22分)
以上、第6話は、丸子宿〜沼津宿間、3泊4日。
「マンホール富士」も含め、富士山を堪能できた旅でした。
(延べ15泊31日)
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第7話は、2025年2月8日土曜日公開予定です。
以下、11話まで各話一週間ごとに公開します。