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三月の道路工事の話

二月三月は道路工事が多いなぁと思った事ありませんか。
年度末で忙しいのに、なんで道路工事なんてやってるんだよ!プンプン
なんて話をよく聞きます。
んで、
年度末だから予算を使い切らないといけないんだろ?公務員は馬鹿だなーという話も聞きます。
公務員が馬鹿なのは激しく同意ですが、年度内に予算を使い切らないといけないって所は間違ってます。道路工事は二月三月に集中してしまうのは仕組み上しょうがない話なので、ちょっと解説していきます。

行政の税金執行は、議会の予算議決で承認されます。道路工事をやるのか、箱モノを建設するのか、福祉にどれくらいお金を使うのか、議会の議決を経なければいけません。
議会は年に4回、三月、六月、九月、十二月に開催されます。次年度の予算について審議をするのは三月議会です。地方でも国会でもそうですし、アメリカなんかでも同じです。
みなさんテレビニュースなどで、アメリカの議会で予算が通らなくて、四月から博物館が閉館しちゃうとか何とか、そういうの聞いたことありますか?
三月議会の予算議決は、それくらい重い仕事なんです。それが議決されないと、税金の使い道を市民が決めるという大義名分が成り立ちません。

さて、四月からの税金の使い道を三月に決めている、というところまでお話しました。勘の良い方はピンときているかもしれませんが、議決されないと執行できないんですね。つまり、道路工事にいくらお金が使えるのか決まるのが三月なんです。三月って言っても三月一日ではなくて議決日です。まぁ・・・だいたい三月中旬から下旬でしょうかね。そこから次年度の準備を始めるわけです。
ん?事前に準備をしておく?そうですね。それができたらかなり効率はいいんですが、議会の議決を待たずに「議決される前提で」執行の準備をしてしまうと、議会無視・行政の越権行為なんてことになります。市民の意向を無視しているということですね。絶対に許されません。なので、ちょっとした書類の作成くらいなら可能ですが、道路工事の業者さんに競争入札の指名通知なんて送れないわけです。議会の議決がなければ道路工事の仕事は始まることが許されないのです。

そんなわけで、道路工事の仕事は四月に始まります。道路工事の業者にどんぶり勘定で丸投げ・・・というのは昭和の話で、今は大変めんどくさいそうです。道路工事の費用の設計は、国土交通省から内訳が細かく指定されています。〇〇〇ガードレールを作るならいくら、▽▽▽重機を使用するならいくら、全部決められています。地域の方たちと相談してどんな道路をつくるのか決めたら、その道路を作るのに何が必要でいくらかかるのか、計算しなければいけません。

一見すると道路なんてみんな同じに見えますが、小さな町の生活道路と4車線もある国道では全く構造が異なります。2t車がやっと入れるような町の小道などは、既存の土道路の上にアスファルトを4cmほど載せただけの簡素なものです。大型国道は、1mくらい掘って地盤作りから始めます。粒度の異なる砕石をいくつか使い分けて、場合によってはコンクリートを基礎に使用することもあるでしょう。そこからアスファルトも2層に分けて10cm敷設します。大型国道は、日々の酷使に耐えられるように複雑で重厚な構成を必要とします。

小さな町を大型国道が貫いている、なんてことはよくありますが、小さな町が上記のような「高価な道路」を維持補修できるわけがありません。予算的にも、技術的にも不可能です。なので、大型国道は国が予算を持っています。県道は県が、市町村道は市町村が維持補修を行います。
あっちは県道だからうちの町では直せません。というのは良く聞く「縦割り行政の弊害」ですが、小さな町に大規模高規格道路の維持補修をしろとおっしゃりたいんでしょうかね。小さな町の住民は、そのお金を議決しますかね?縦割り行政ってそんなに悪ですかね。

さて、話を戻して三月の工事の話。
四月から準備を始めるわけで、説明会、設計、指名、入札、契約と様々な利害関係者と綿密な打ち合わせが必要になっていきます。役場の職員が勝手に道路を掘っているわけではありませんからね。水道管の老朽化、下水道管の新規敷設、今だったらゲリラ豪雨対策の水路改修なんかも盛んに行われています。色々な人の、色々な思惑や助言や知恵やお金の節約や、様々な事を一つの工事に詰め込まなければなりません。そして、予算の執行には期限があります。年度をまたいではいけないんですね。(年度またぎの予算執行も可能なように法改正されましたが、超絶限定的です)
例えば四月に初めて、梅雨時期はせっせと設計に勤しんで、入札で業者が決まるのが夏。具体的な形になるのが秋冬。工事は春。業者に契約金を五月までに支払わなければならないので、二月~三月に急いで工事をして、完了検査を経て、晴れて契約金支払いです。

年度内に予算を使い切らないといけないから三月に工事が多い。という噂は全くの嘘です。単年度会計という議会民主主義のシステム上、工事が冬~春に集中するのは必然です。これは、単年度会計を止めるまでずっと続きます。税金が単年度会計なので、絶対に無理ですけどね。5年先まで税金前払いしてよって言われたら切れますよね(笑)
と言うわけで、いつも通勤に使っている道路が二月三月に工事するんだよなぁ・・・不便なんだよな・・・とお嘆きのそこの貴方。とりあえず役場に電話して、来年から時期をずらせませんか?と相談してみてください。出来ることと言ったらその程度です。諦めて、遅刻しないように早めに家を出ましょう。

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